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時を越えて  作者: pj.masta
14/38

014

 黒鎧の男が剣を振るう。その動きは、まるで風のように素早かった。


「くそっ!」


 蓮が反射的に剣を抜き、迎え撃つ。しかし、一瞬の交差の後、蓮は大きく後退させられた。


「……ちっ、やっぱりこいつ、ただの武士じゃねぇ」


 肩で息をしながら、蓮は鋭い視線を男に向ける。


「記録を覗き見するとは……余計なことをしたな」


 黒鎧の男は低く呟く。彼の手に握られた刃には、微かに青白い光が宿っている。まるで、異質な力を宿しているかのように——。


「選ばれざる者……それってどういう意味なんだ!」


 和真が叫ぶ。


「俺たちは、ただこの時代に飛ばされただけなんだ! なのに、なぜお前は最初から俺たちを狙うんだよ!」


「……」


 男はしばらく沈黙した後、静かに答えた。


「お前たちは、本来ここに存在してはならない者だからだ」


「どういうこと……?」


 玲奈が息を呑む。


「神子は、一人しかいない。それが、この世界の摂理だ。だが、今ここには、お前たち三人がいる……その時点で、この世界の均衡は崩れ始めている」


「だからって、殺そうとするのかよ!」


 和真が拳を握りしめる。


「お前たちが消えれば、歴史の歪みは修正される」


 男は淡々と言い放った。


 その言葉に、和真の中に怒りが込み上げる。


「……ふざけるな!」


 思わず和真は前に踏み出した。しかし——


「っ……!」


 男の剣が閃く。和真は反射的に身を引いたが、それでも頬に一筋の切り傷を負った。


「動きが違いすぎる……!」


 蓮が呻く。彼も戦い慣れているはずだが、黒鎧の男の剣は、まるで彼らの一手先を読むかのように鋭かった。


「このままじゃ……!」


 玲奈が必死に何かを探すように視線を巡らせる。そのとき——


「……!」


 彼女の視線が、開かれた記録の一節に留まった。


《神子が真に選ばれし時、時の鍵は開かれる——》


(時の鍵……?)


 玲奈の脳裏に、ある考えが閃く。


「和真くん、あなたの懐中時計……!」


「えっ……?」


 和真は驚きながらも、ポケットに手を入れる。そして、そこには今も光を失った懐中時計があった。


 その瞬間——


「……!」


 懐中時計が、淡い光を放ち始める。


「……なるほど」


 黒鎧の男がわずかに目を細める。


「やはり、選ばれるべき者は……」


 男が剣を振り上げる。次の一撃が、和真たちを襲おうとした、その時——


 光が弾けた。


「なっ……!」


 和真の視界が一瞬、真っ白に染まる。


 そして——


 次の瞬間、彼らは記録庫ではなく、全く別の場所に立っていた。


「ここは……?」


 玲奈が呆然と呟く。


 見渡す限り、どこまでも続く白い空間。


「俺たち、どこに……?」


 和真が困惑する。


 ——その時、彼らの前に、ひとつの影が現れた。


 それは、黒鎧の男とは違う、まるで幻のような存在。


「あなたたちは……」


 玲奈が言葉を失う。


 影は、ゆっくりと口を開いた。


「……選ばれし者よ。時の狭間へようこそ」


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