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時を越えて  作者: pj.masta
13/38

013

 宮廷の夜は、静寂に包まれていた。


 和真、玲奈、蓮の三人は、月明かりを頼りに宮廷の奥へと進んでいった。玲奈が手に入れた封書には、記録庫へと続く秘密の通路の位置が記されていた。


「本当にこんなところに抜け道が……?」


 和真が疑問を口にすると、玲奈は慎重に壁の一角を調べた。そして、隠された木戸を押し開く。


「ここよ」


 静かに扉を開けると、そこには狭い通路が伸びていた。土の匂いがかすかに漂い、壁には松明の跡が残っている。


「この通路、長いこと使われてないみたいだな」


 蓮が呟く。


「ええ。記録庫に直接つながるものの、現在は誰も使っていないはず……」


「誰にも見つからずに入れるなら、好都合だな」


 和真が頷き、三人は慎重に進んでいった。


---


 記録庫の扉の前にたどり着いた。


 玲奈が持ってきた鍵をそっと差し込み、ゆっくりと回す。錠前がかすかに軋む音を立て、扉が開いた。


「……ここが記録庫か」


 和真は目の前に広がる光景に息を呑んだ。


 広大な書架がいくつも並び、古びた巻物や書物がびっしりと収められている。かすかな蝋燭の光が揺らめき、静寂が支配する空間だった。


「急ぎましょう。時間は限られているわ」


 玲奈の言葉に、三人は手分けして異邦人に関する記録を探し始めた。


---


 しばらくして——


「……あった」


 玲奈が震える声で呟いた。


 彼女の手には、一冊の古びた書物が握られていた。その表紙には、見慣れぬ古い文字が刻まれている。


「異邦より来たる者たち……?」


 和真が声を上げる。


「やっぱり、過去にも私たちのような者がいたのね」


 玲奈は慎重にページをめくる。そこには、驚くべき記述があった。


《彼らは“神子”と呼ばれ、この地に導かれし者である。しかし、彼らがこの世界に留まるとき、歴史の均衡が揺らぎ、大いなる歪みが生じる》


「……歴史の歪み」


 蓮が呟く。


「黒鎧の男が言っていたことと同じだな」


「つまり、私たちがここにいることで、この時代に何か影響を与えている……?」


「だが、そもそもなんで俺たちはここに呼ばれたんだ?」


 和真が焦るように問いかける。


 玲奈はさらにページをめくった。そして、ある記述に目を留めた。


《“神子”は、本来一人しか存在しえない》


「……一人しか?」


 和真は眉をひそめた。


「つまり……?」


 玲奈の手がかすかに震えた。


「この世界に召喚される“神子”は、本来一人であるべきだった。でも……今ここには、私たち三人がいる」


「それが、歪みの原因……?」


「可能性は高いわ」


 玲奈は沈痛な表情を浮かべた。


「じゃあ、俺たちの中の誰かが、本来呼ばれるはずじゃなかったってことか……?」


 和真が呟いた瞬間——


 バンッ!


 記録庫の扉が激しく開かれた。


「……!」


 和真たちは反射的に身構える。


 そこに立っていたのは——黒鎧の男だった。


「やはり、ここに来たか」


 男は冷たい声で呟いた。


「やはり、お前たちは“選ばれざる者”だ」


 鋭い剣閃が、夜の静寂を切り裂いた——。


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