半月の扉
静かに息をするものたちと過ごす水無月
それは
あなたの言葉の裏側で羽を休めたときでした
あなたの言葉の裏側で絹の雨が降りました
あなたの言葉の裏側をなんとなく知っていたのに
ズルいわたしは
あなたの言葉の傘の下にずっといました
雷雨に打たれて育つ稲にはなれず
月も見えず、こころも晴れず
あなたの言葉の傘の下で
月をなんとなく探してホトトギスの声を
聞いて過ごしていました
ふと昨晩見上げた夕刻の空に白月をみつけました
久し振りに見つけた月でした
蒼白く暮れてゆく空に輝いてゆく光は
あなたが開けてくれた扉のようにみえました
夜空は半月を切り絵のように写し出して
わたしの言葉の片方の羽のようにもみえました
あの光る扉は真夜中過ぎには
西に流れて行き、目の前の中天には
月の欠片のように星達が煌めいていました