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第1話 呪われた公爵令嬢が届けられない言葉

「セヴ様からの贈り物なんて嬉しくありません! セヴ様なんて大っ嫌いですっ」


 思いもよらない言葉を口にしたシャルロットは菫色の目を大きくして唖然とする。和やかだった誕生日会の空気が一変し、静寂が支配した。


――――セヴ様、素敵な髪留めをありがとうございますっ。一生大切にします。セヴ様、大好きです!


 そう言いたかっただけなのに、シャルロットが口にしたのは酷い拒絶の言葉だった。


 シャルロットが自身に呪いがかけられていることを自覚したのは、5歳の誕生日。公爵令嬢である彼女の誕生日は公爵家の屋敷で盛大に行われ、小さい子供向けの舞踏会が開催されていた。

 艶やかで真っ直ぐな銀髪をハーフアップにしたシャルロットは、花をモチーフにした髪飾りを使ってまるで花の妖精のような仕上がりだった。 

 周りから褒められてご機嫌だった彼女だが、家令が告げた名前を聞いてさらにご機嫌になる。

 その名前はセヴリード・バンドーナ。バンドーナ国の第一王子でシャルロットの幼馴染。そして彼女にとって誰よりも大切なお友達。

 現れた王子様はグレーのモーニングコートをまとっていた。キラキラと輝くほど艶のある金髪と、真っ直ぐでいて好奇心を感じさせる新緑の瞳が服装によく似合っていた。絵本に出てくる王子様みたいだった。


「シャル、お誕生日おめでとう。いつもシャルは可愛いけど、今日のシャルはとびきり可愛いね。似合ってる」


 王子様に褒められたシャルロットは嬉しくて、少し恥ずかしくって。でも、お洒落して良かったと思った。

 今日は色々な人から可愛いと言われたのに、何故だか、もっと彼の可愛いという声が聞きたくなってしまう。


 そんな自分にシャルロットが驚いていると、彼は綺麗にラッピングされた箱を差し出した。驚いたままプレゼントを受け取って、包装を解いていくとベルベットの箱が現れる。わくわくしながら金具を外すと、そこには大粒のアメジストが嵌め込まれた銀の髪留めが鎮座していた。


「シャルに似合うと思って髪飾りを用意したんだ。よかったら使ってね」


 少しだけ頬を染めながら言う彼に、シャルロットも思わず頬を染める。いつの間にか鼓動が早くなっていて、相手がさっきより輝いて見えた。もっと見ていたいのに、なんだか恥ずかしくなって視線を外してしまって……。


 こんなドキドキする気持ちに、なんとなく思い当たる節があった。乳母のリーナから聞いた人を好きになった時の話と似ていたのだ。


――――きっと、たぶん、私はこの王子様が好きなんだろう。


 そのことに気づけたシャルロットは、なんだか誇らしくなった。5歳の自分は大人になったのだと思った。

 嬉しさのあまり、シャルロットは目の前の大好きな人に感謝とその想いを伝えたくなった。そして――――。


 出た言葉は酷いものだった。


 その後、何度言おうとしても真逆のことしか言えない口に混乱したシャルロットは泣きじゃくり、事態を重く見た両親により会は終了。王子様は困惑したままプレゼントを置いて帰っていってしまった。


 自室に戻ったシャルロットは涙を流しながら、両親からの質問に答えていく。そして原因が判明した。

 シャルロットは魔女に呪われていたのだ。初恋の人に気持ちを告げることができない呪いを、彼女はかけられていたのだ。

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