地上
そこには悪魔がいた。
悪魔の話はよく耳にしているし、恐ろしさも知っていた。
だがそんな知りもしない人の陳腐な想像など、遥かに上回るほどの存在感だった。
声を発すれば部屋は揺れ、跪きたくなるような魔力を感じる。
そして見た目の禍々しさ。
これほど圧倒的なものは見たことがない。
これほどの存在なら世界で3本の指の方々にも匹敵するのでは?と思ってしまう。
私も悪魔を召喚すれば何か変わるのかな?
薄汚れた姿でそう思った。
「それで貴様の名は?」
返事がないなぁ。
召喚しといて挨拶もないのか?
少しばかりイラッときて睨むように先程の声のあたりを見る。
すると泡を吹いて倒れている男がいた。
あれーーー!?
倒れてるんだが???
もしやさっきの威圧で倒れたのか!?
久しぶりの人間がこんなに脆弱だとは思わなかった。
我ながらアホなことをしてしまった。
召喚者が倒れてる時ってどうすればいいんだ?
うーむ?
しばらく考え込んでいると
「あっ...あの」
か細い女の声が聞こえる。
今にも散ってしまいそうなそんな声だ。
その方向に目をやる。人が倒れていたところから声がしてるようだ。
「なんだ?」
もはや息があるのはこの1人だけだろう。
他はもう気絶してしまっている。
丁重に扱わなくては
そう思ったのも束の間自分の周りの魔力反応が消えかかっている。
(これはやばそうだぞ?)
また得られる情報が途切れてしまうのは嫌だ。
人の魂1個分と同じほどの魔力量が手にまとわりつく。
側から見れば少し過剰かもしれないが、気づきもしない。
「あっ.....」
口から声が漏れ出す。
悪魔の手には大きな魔力があった。
それは禍々しいものだったかもしれない。
だがこの女の子には神々しく見えていた。
「あっ....!!」
再び口から声が漏れ出す。
しかし先ほどまでとは違いその声には生気があった。
おっ成功したみたいだな?
先ほどまでとは違い生気の宿った姿の女の子がそこにはいた。
「それで話はなんだ?」
召喚主が目を覚ますまでは暇だし唯一の情報網との話は損にはならないだろう。
「私と契約してくれませんか?」
予想外の言葉だった。
だができるかどうかならできるのだろう。
契約書に名前が書いてあるわけでもないのだから。
悩むことなんてなかった。
それにせっかくの外にいる時間をこんなところで潰すのはもったいない。
「いいだろう。だが俺にできるのは契約上力を与えることだけだ。」
「はい。大丈夫です。」
「俺は上級魔族だ。代償は大丈夫だろうな?」
上級悪魔との契約代償は高い。
俺は大したものを望んでいないが、一応覚悟というものは大切だ。
「大丈夫です!」
一切の迷いもなかったように見えた。
「お前の名前は?」
「シルアです。」
名前を言うと契約書に書き込まれる。
これで完了のようだ。
そうとなると、どのように力を与えるかだ。
やはり魔力容量を広げるのが一番良いだろう。
長く地上に止まることができそうだし一時的な力よりも持続する力の方が欲しいに決まっている。
ともかくこんな陰湿な空間にいるのはしんどいな。
そろそろこんな暗いところから出たい。
そんな考えが届いたようだ。
「あの人が目覚める前に出ましょう。」
「うむ。」
召喚主とは大した仲ではないようだ。
まぁ。あのような場所で転がっていたのだ。
奴隷のような扱いだったのだろう。
こういうのは聞かないのが吉だ。
それに今は時間が惜しかった。少しでも情報が欲しい。
そう言った焦りがあった。
そのため長いであろう道中無言にしとくわけにはいかない。
「今は何年だ?」
「ソジヤ暦16年4月3日です。」
おっ....!!
俺が死んだのが3月20日だったからあまり変わらないな。
ここからは俺の質問が続いた。
そしめ森に入ってから30分ほどした頃だった。
「そろそろ着きます。」
眼前には小さい古屋があった。
お世辞にも綺麗とは言えなかった。
人が倒れているさっきの部屋よりはいいが。
「少し汚いですがどうぞ。」
そう言われ古屋の中に案内される。
外装とは違い中は意外と綺麗だった。
よく見ると埃が溜まっていることから家を出て少し経っていたのだろう。
「悪魔様こちらの部屋で休んでください。」
「ありがと」
随分と丁重に扱われているようだ。
ご飯まで用意されるとは...
先程外に出たのはご飯を取りに行っていたのだな。
ご飯か....。
悪魔なので食事は必要がないが、ご飯が食べられるのは嬉しい。
久しぶりの固形物だ!!
鶏肉と林檎即席の用意としては、素晴らしい食事だった。
読んでいただきありがとうございます。
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