暑い…
思わず、逃げるように帰ってしまったけど、、……うん、別にいいや。
正直もう会わないだろうし、そんなことでいちいち気を病んでいたら大変だ。
あー、というか、さっきも思ったけど、、
やっぱ、今日、あぢぃ。
ガンガンにクーラーをきかした部屋で、アイスを食いながら、ひたすらゴロゴロしたい。
「ぅぅう…」
思わずそんな呻き声を出してしまった時、
バンッ
急に後ろから衝撃がきた。
「よっ!」
「うわっ」
こんな事を急にしてくる人は、
「…っていきなり叩くなよ真優ねぇ」
小泉 真優美この人くらいだろう。
「あはは、帰ってたら、目の前に慎がいるんだから、声かけるに決まってるじゃん」
ちなみに慎というのは俺の名前だ。
「一般の人の声をかけるっていうのは、言葉の通り声を相手にかける事で間違っても真優ねぇみたいにいきなり叩かないから」
「まぁまぁ、気にしない。気にしない。男の子がそんな小さい事を気にしてたらモテないよ」
「ていうか、目の前にあったからって、子供じゃないんだから」
そう、真優ねぇは高2 俺よりも一つ年上だ。
「その子供の私よりも子供の慎は何かな?赤ちゃん?バブーバブー ママ〜ミルクほちぃよ。って」
そういってアハハハと楽しそうに笑う真優ねぇ
「そういうところが子供っぽいって言ってるんだよ」
「フムフム、そっかぁ、オネーサンちょっとショックだな〜。まさか、慎君がもう“大人”になってたなんて」
そう言いながら、真優ねぇは俺の下の部分を見る。
「いやいや、なんでそうなんだよ!てか、違うから。まだ、違うから」
そう言った俺に対して、少し芝居掛かったように真優ねぇは言う。
「まだ、若かりし頃は誰しもがそう思う。だが、20代後半になると、『あれ?なんかおかしくね』と思い、いつの日か気づくのです」
真優ねぇはスッと息を吸い目を細め、言った。
「『……もう、30代か』」
無駄に過去を懐かしむような感じで話すところが余計にムカつく。
「やめろ!結構リアルに話すな!」
いや、俺は大丈夫だよな。うん、大丈夫。
「慎君が、そんな人にならないようオネーサンが一肌脱いであげようか?文字通り脱いであげようか?ン?」
笑いながら、そう言う真優ねぇに対し、、……ん?なんだよ。童貞だよ、童貞!なんか、悪いか!……、、そんな真優ねぇに対し俺はいい返そうと、
「あれ〜?慎君、お顔真っ赤だよ。大丈夫?どうしたの?」
ヤベ、つい想像しちまった。
落ち着け、俺。どうせ、いつもの冗談だ。からかわれてるに決まってる。
そう自分に言い聞かせても、所詮童貞。
「まさか、オネーサンとしてるとこ想像しちゃった?」
すぐに思考を切り替えられない。絶対、あり得ないのにもしかしたらとか思ってしまう。
「アハハハハ、そんな慎君に残念なお知らせです。もう、家に着いちゃったから、オネーサンとの楽しいお喋りはここまでです」
「えっ?」
本当だ、いつのまにかもう真優ねぇの家の前じゃないか。
と、そう思いながら立ち止まっていると、
「あれ、そんなに残念だった?」
真優ねぇがそんな事を言ってくる。
「なっ、そんな訳ねーだろっ」
思わず、否定するが、
「あっ、もしかして家に入れてもらえるって期待しちゃってた?」
なんてことを言ってくる。
「いや、全く」
そんな俺の言葉なんて聞かずに真優ねぇは続ける。
「でも、ごめんね〜 今日は親が家にいるから」
「いや、だから、期待してないって。そんなことより、暑いから俺もう帰るわ」
そう言いながら、自分の家に向かって歩く。
……ていうか、親がいなかったら家に入れんのかよ。
「じゃーね〜、オネーサン、楽しかったよ〜」
相変わらず悩みなんて無さそうな声でそう言ってきた真優ねぇに対し、俺は後ろをむかずに手をヒラヒラと振っといた。
ーー!ーー!ーー!ーー!ーー!ーー
いやぁ、いつも通り真優ねぇのペースだったなぁ。
それにしても、、
「なんで、今日こんなに暑いんだよ」
本日何度目かとも知らないその思考を相変わらずしながら歩くこと数分。
ようやく我が家が見えてきた。
お、おぉ、やっとだ。やっと、この暑さから解放される!
そう思い、ドアの前に急ぐ。
そんな期待に満ち溢れた様子の慎君に悲劇が訪れた。
しまった、鍵がない、、
………………ぇ、ちょっと待って、
鍵はたしか、、……親父に貸したままだ。ぁんのクソ親父が!
待て、慎!悲観的になるのはまだ早い。落ち着いて状況を把握するんだ。
家に車は、、ない。つまり、現在母親は出かけている。
えっと、今日は確か7時に母親が帰ってくるんだよな。
今の時間は、ーーーチラッと腕時計を確認するーーー無情にもそこには2と3の間に短い針の姿が確認できた。
クソッ!母親はもうあてにならねぇ。あのクソ親父は母親よりも帰ってくるのが遅いから論外だし、、
慎!考えるんだ!まだ、まだ何か方法がある筈だ!
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………うん、ないな」
スゥゥゥゥと大きく息を吸い、フゥゥゥゥと大きく息を吐く。深呼吸。
そう、こんな時は落ち着こう。さっき自分で落ち着くんだとか言ってたわりに全く落ち着けてなかったしな。
ただでさえ暑いのに自分で余計暑くなってどうする。
………よし、落ち着いた。それじゃあ慎、そもそも自分の目的はなんだ?
この暑さをどうにかすることだな。
家に入れるなら、クーラーを効かせることができる。
そのクーラーは家にだけしかないのか?
いや、そんなことはない。今のご時世どこの建物にも付いている筈だ。
よし、とりあえず家に入ることは諦めよう。とにかく涼しくなればいいんだから、、
〜♪♪〜〜♪、ドアが開く時にコンビニ特有の音を響かせ、夏の暑さに悶える慎を出迎えた。
ぁぁ、涼しい。
思わず、そんな心の声が口からポロっと出てしまいそうなくらい、今の慎にとってそこは居心地の良い場所だった。
そんなわけでコンビニに来た。
何故、コンビニか?理由は2つある。
1つは単純に家から近いからだ。5、10分くらいで着く。
もう1つは、このコンビニでは立ち読みができる!これで思う存分時間潰しが、、ん?
あれ?ちょっと待って。え、今ってもうだいたい3時。で、母親が家に帰ってくるのが7時。
「………」
嘘ぉ、4時間もここで時間潰すって事?
いやいや無理無理、どーしよー、、、
……………………………………あ、この本、新刊出てるな。よし、とりあえずこの本を読み終わってから考えよう。
ーー!ーーー!ーーー!ーーー!ーー




