主人公のチートが明らかに。
「いってぇ、マジ痛ぇ」
本気でやばいときって気が遠くなるのな。
案の定エリンのこと追ってきた軍服たちを転移チートの火炎でなぎ払ってオレツエーしたんだけど、よく考えたら飛行船あるってことは相手も銃くらい持ってるよな。逃げてる最中に腹に一撃貰ってもう死にそう。ヒロインちゃんに肩貸してもらってなんとかスラムのあばら家まで辿り着いたけど、ゴメン、俺は主人公ではなかったみたいだ。
「エイト!! 死なないで!!!!」
なんて大きな瞳に涙ためながら言われたらちょっと嬉しいよね。でも無理。気が遠くなってきた。最後に見るのが美少女エルフの泣き顔って人生…悪くないよね…
「どいてろ!」
あれ? ヒロインちゃんが横にずれて代わりに豚鼻のオッサンがログインしてきた。口の中に布切れを押し込まれる「染みるぞ!!!!!」え?、ちょ、まーー
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!?」
酒を、口に含んで、プーって吹いて、果たして意味があるんだろうか、雑菌とか、あと傷口にピンセットねじり込んで動かすのやめて!
自分の意思とは関係なく手足が跳ねる! 回復魔法とかないの!? まじ現実はクソゲーだぜ!!!
◆◆◆
「もう大丈夫だ!」
オークのおっさん医者ではなかった。キツめに巻かれた包帯のおかげか出血は止まった。オークのおっさんはオークの王国から出稼ぎに来た炭鉱夫だそうだ。お礼を言うとちょっと照れていた。ありがとう。でもこれからどうしよう。
「ちょっといい?」
これからのことを考えて途方に暮れていた俺にエリンが真面目な顔をして話しかけてきた。
「エイトって何なの?」「何なのって?」「手から炎出てた」「えっと…魔法?」「何で自分のことなのに疑問形?」「魔法はこの世界にあるんでしょ?」「え? あるけど…詠唱してなかったよね」「なんか唱えないといけないもんなの?」「普通は…それか特別な魔道具を使うとか」「そうか、一応チートなのか。安心した」
完全に銃の下位互換ですよ。偉そうにしてごめんなさい。俺は規格外の魔力を持った天才魔術師じゃなくて、弾切れしない自走式の火炎放射器だったみたいだ。
エリンの話によると、魔術師というのは『窓』を開いた? 人のことで『窓』の外の『超越者たち《アップロード》』から力を借りて超常現象を起こす人らしい。
だから奇跡を起こす前に彼らの言語で会話する必要があるそうで。魔道具というのは超越種がこの世界にいたときに残していった道具なんだとか。よくわかりません。俺は集中すると手から光が出るんです。それをモノに当てるとよく燃えるんです。それだけ。
「??」
「??」
エリンと2人で首をかしげる。まあ、いいや。それはそれとして、これからどうしよう。家には危なくて帰れないし。まずはそもそも
「エリンは何で帝国から逃げ出したの?」
なんかありきたりな奴でも実際書くのって難しいね。