学園長
保健室を出た俺は視界右上に映った地図を頼りに学園長室へ向かっていた。せっかく翔に地図が貰える場所を聞いたのだが、保健室を出た後に地図の事を思い出したのだ。
何はともあれ、学園長室についた俺は扉をノックした。
「どうぞ」
中から若い女性の声が聞こえ、俺は扉を開けた。
「失礼しまーす」
中に入ると、新人社員もかくやと着慣れないブラックスーツを着た人物、そして俺のこの世界での俺の姉、近藤 優姫が座っていた。
「やあ、君が異世界から来たという救世主だね?」
「ブフッ!?」
「!?」
本来、こういう感動の再会では俺は涙を流しながら姉に飛び込んで行くのが正解なのだろうが、着慣れない服を着て背筋を伸ばし、少しでも威厳を見せようと気張っている姿を見て、盛大に吹いてしまった。
「ど、どうしたの!?何か可笑しかったかな?」
姉は俺が笑ったのは自分が何か可笑しかったからと思っているようだ。まあ、可笑しいと言う点では的を得ているが。
「い、いや何でもない。気にするな」
「気にするなと言われても・・・」
「それより、女神からはどんな事を聞いたんだ?」
「え?」
「いや、さっき‘君が異世界から来たという救世主だね’って言ってただろ?」
「ああ、そうね。たしかに私は女神様からアナタのことを聞いたわ」
「で、なんて?」
俺は姉を催促した。
「ハロー♪女神さまだよー☆近々異世界からとある人が来るわ。彼がアナタたちが抱えている問題、解決してくれるかもよ?じゃっ、私も忙しいから!・・・と言って・・・そう言えばアナタ女の子じゃない!?」
「今更!?」
「あれ?もしかして人違いだった!?」
「いや、人違いじゃないぜ。姉貴」
さっきはちょっと言い出しにくい雰囲気だったが、ちょうどいいタイミングが出来たのでココで暴露することにした。そしてついでにスキルを切り元の姿、近藤 勇へと戻った。
「!!?」
姉は元に戻った俺をしばし見て、きゅうと言って気絶した。