邪龍と魔術師
レオとユーシェは黙々と森を進んでいる。互いに黙ったままなのは各々がそれぞれ抱いている感情に由来するものが大きい。
ユーシェは緊張から口数が少なくなり、レオは考え事をしているため口数が少なくなっているのだ。
「ねぇ、なんで龍穴に古龍がいると?」
少しでも緊張を紛らわせるように、ユーシェはレオに問いかける。
「あぁ知性を持つ古龍が人ましてや、人間以外の種族に寛容な獣人を襲うわけがないんだ。で、龍の位階昇華っていうのを師匠から聞いたことがあってな」
魔術師は杖をくるりと回すと、空間に絵を表示する。それは邪神亡き後、この世界の管理神としてこの世界を管理する幼い龍の神の絵だった。
「以前行われたのは150年前、白き古龍の子が管理神亡き世界を維持するために神へと昇華した時だったはずだ」
「ちょっと待って、白き龍神が元はただの龍!!」
あれ知らなかったのかと、レオは小さく笑う。
「俺らでも一定条件を満たせば、神へと昇華できるぞ。魔術師だと、魔力が濃い場所でその魔力を体の中に圧縮収納すれば神へと昇華できる」
まぁできても危険があるからやらないけどねと彼は苦々しく笑う。
「危険?」
「あぁ堕ちるんだよ。力は破壊衝動を生みその衝動は穢れとなる。堕ちちまったら最後、穢れにより邪神と化す。邪神の眷属である邪人ではなく文字通りの邪神とね」
そこに理性などなく、ただ破壊するだけの神となってしまうと付け加える。
「だから白き龍神は稀有な存在だしな。それを知っているはずの古龍なら絶対にやらないと思っていたんだが……」
案外勇者のない世界は限界なのかもしれないねと、レオは小さくため息をつく。
「レオ、本当にただの魔術師?」
咆哮が聞こえ、木々が揺れる。それに会話は遮られ彼らは身構えた。
「察知されたか、感知されたか……あぁ確かに穢れがたまっているようだ」
メキメキという音と共に気がなぎ倒され巨大な龍の首が天に向かって掲げられる。
「あれが……」
『邪神殺す。殺す』
頭の中に無差別に響く声に顔をしかめると、レオは瞳を隠匿していた魔道具を外してユーシェに投げる。
「すまない、本気を出すとそれ壊れるから持っておいてくれ」
そういうとレオは気を駆けあがり、天高く舞い踊る。
「来たれ、天の鉄持ちて我、怨敵を縛る力を得ん。天鎖緊縛」
盗賊たちを縛った鎖と同様の鎖を大きくしたものが龍にまとわりつき自由を奪う。
『ヒト?いや邪神!!殺す』
その言葉と共に、龍は自身の羽を大きく広げようとする。しかし鎖がその龍の行動を防ぐ。しかし、それは長くは続かなかった。
龍の咆哮が天高く轟き、龍を縛る天の鎖にひびが入る。
「おいおいおい、神をも縛る絶対拘束魔術だぞこれは!!たく、なまじ神への形質変化が中途半端なせいで神を超える化け物じみた力をだせてんのか!!」
クレーターを作りながら鎖がはじけ、黄金と漆黒の性質を併せ持つ龍は翼を広げ飛び上がる。陽の存在である黄金と陰の力である漆黒それらは通常打ち消しあうが、波長を合わせてやればほぼ無限のエネルギーと化す。それが鎖を解き放ち飛び立つ、その衝撃だけで人は軽く死ねるのだ。
そんなエネルギーのなか、空中にいたレオは衝撃をもろに喰らい吹き飛ばされる。
四肢がもげていないのはさすがというべきだろう。
「レオ、今のは!!」
飛ばされたレオのもとにユーシェが慌てて駆け寄る。魔法薬を使うためなのだが、その手の動きをレオは止める。
「大丈夫だ。まったく、理性が完全に飛んでいるか……話が分かるようだったら、ここから引き離すだけでいいのにねぇ」
ユーシェはレオに対して恐怖を覚える。気配が彼女の目の前にいる古龍と同じなのである。
『殺す殺すころす!!』
翼から炎が立ち込め、彼を焼き尽くさんとはなたれる。その熱波は直接攻撃されていないユーシェにも達するほどだった。
「ぐっつ、レオ」
炎が地を焼き尽くし、陽炎と爆炎と煙で視界がクリアにならない。
「こんなもんか?トカゲ」
炎が立ち消え、ガラス状になった土を踏みしめるレオの姿を見て、ユーシェは目を丸くする。人間という自分と同じカテゴリの脆弱な生き物が、あれを喰らって無事ということを彼女の脳は拒絶し始める。
そんな彼女をしり目に、魔術師レオは小さく息を吸い込むとその場から消えたのだ。その後、古龍の体がぶれ、地面にたたきつけられ、森をなぎ倒す衝撃波を発生させる。
「グルルア」
指向性の持つ咆哮がとどろき、森の一部が大地ごと消滅する。その直撃をレオは喰らってしまい爆ぜるような衝撃の中を吹き飛ばされていく。
彼女は腕や足があらぬ方向へと曲がっているレオに慌てて駆け寄ると、レオは目を細めあーとつぶやいた
「わりぃ目算を見誤った。君を連れてくるべきじゃなかったよ」
ボロボロの体で上体を起こすと、レオはゲートと短く詠唱する。人一人が通れるようなゲートが発現し、その先には獣人の城が見えた。
「獣人国の王都にあけてある。国王にはすぐ戻ると伝えておいてくれ」
流石のユーシェもレオがこのケガだと死んでしまうと思ったのか、拒否をする。そんな拒否したユーシェを魔力のみで押し込めると、レオは立ち上がりにやりと笑う。
「我、その力をもって目の前の力をねじ伏せん。混沌の覇者」
場の空気が黒に染まっていく、邪神に落ちかけている古龍よりも黒く染まったそれは、龍穴の力を彼が使えるエネルギーへと転換しはじめる。
「我は我が体についた傷をすべて拒絶する」
彼の体のダメージがなくなり、軽く首の骨をゴリゴリ鳴らす。治癒魔法は個人の治癒力を活性化することで、けがを治す魔法である。治癒力の活性化でできるのはせいぜいかすり傷を治すといったことぐらいだ。折れた骨の修復にはさすがに時間がかかる。ゆえに一瞬で治すことは不可能なのだが、現に彼の体は無傷の状態を保っている。
「この眼を使うのは久しぶりだね」
『邪神!!』
レオは魔力を纏うとにやりと笑う。落ちかけたドラゴンより黒い魔力光を放ちながら、地面を蹴り飛ばしドラゴンまで飛んでいく。
「邪神にくしで堕ちてんじゃねぇぞくそトカゲ!!」
空を自由にかけ、元来範囲攻撃であるブレスを魔力に対して指向性を持たせることでいなし、ドラゴンに肉薄する。そして、舞い踊るように、彼は回し蹴りをドラゴンに喰らわせた。
その蹴りは、ドラゴンから見たら豆粒が体を蹴飛ばしたようなものだが、実際は違った。ドラゴンの体は吹き飛び地面に激突大地を揺らす。
『邪神!!』
破壊の力がこもったブレスがドラゴンから放たれるも、彼はそれを殴りつけることでたたき割る。いなすいなさないではなくぶっ壊すというあまりの脳僅さに、一瞬だけドラゴンが正気に戻ったのかとまる。
「たく殺気から邪神連呼やめてくれませんかねぇ。それは精神という混沌から生まれし悪意、堕ちしものに救済の楔を」
レオはその目から漏れ出す穢れを操りそれを体全体にまとわせる。
『ぐっ……邪し……勇者?』
「ただの魔術師だ。混沌の楔」
楔を通じてドラゴンとレオの間にパスが生じる。そのパスを通してドラゴンから穢れが大量にレオに流れ込んでいく。
まるで力の大きいほうに穢れが流れるように……暴れていたドラゴンは次第に力を弱くして生き、最後にはうなだれるように倒れる。
『何をしている。人間それでは貴様が邪神に』
「邪神?いやただの魔術師だよ。ただでかくて悠久の時を生きるトカゲよ」
穢れが薄まったことで自我が正常に機能しているのだろうドラゴンが、レオに向けて言い放つも彼にとってはどこ吹く風のようだった。
「まったく邪神だったらどうだというのだよ。狂って暴れるわけでもあるまいし」
楔を打ち込まれドラゴンはもがくことしかできず。彼の体から破壊衝動の末生まれた穢れが完全に吸い出される。
「おとなしくしてろ、たく徐々に力をためるタイプの昇華で助かった。神になってたら俺でも戻せねぇよ。神の権能を身に宿すことになりかねんからな」
穢れがレオの瞳に戻り彼はゆっくりと溜息を吐く。悪意、敵意、憎悪、悪感情を煮詰めたようなものを吸い取ったため彼は心を落ち着けるためにそうしているのだ
『貴様、邪神の眷属か』
「邪人ならば新たな邪神は歓迎するべき存在だろうに。まったくこれだから老いたトカゲは頭が固い」
楔の魔法を解くと、彼は折れた大木を加工して椅子を作り出す。
『くっつははは、貴様はなぜ?』
「その、なぜに挑戦するのが俺のような神秘を研究する魔術師の領分なのだがね。まぁなんだ、俺は俺の研究の成果として位階を落とすことは無理だが上がりかけの状態から引きずりおろすことに成功したわけだ」
150年人間は邪神の脅威に堕落していたわけではないのだよと、レオは小さくつぶやく。
『勇者がいない世界で、邪神に滅ぼされるだけかと思っていたが……なるほどお主が希望か』
「ふっ、荷が重いよ。俺は正しくただの魔術師だよ。トカゲ、神への昇華はこれっきりにしてくれ?邪神になったら封じるのも一手間なんだ」
邪神を封じるのが一手間と言い放ち、古龍である自身をトカゲと他の古龍が聞けば怒り狂うワードを外さないこの魔術師に少々興味をそそられる。
『なぜ我をトカゲと?』
「知恵も知識もないのに実証例だけ見て、世界を破滅に向かわせるからだバカ者め!!あれは賢者がいて初めて成り立ったものだろうに」
彼はレオではなく、魔術師レオとしての本性をあらわにする。人に喧嘩を売るような性格をしているが、この叱咤を行う魔術師としての顔を隠すためだったりするのだ。
「今の主神は神としての権能を弱体化させることで本性を薄れさせた、それゆえに邪神とならず奴らのカウンターにもなりはしない」
『ゆえに我が邪神との対消滅を……』
「うつけが。対消滅なんぞ150年前の技術にこだわっておるからそのように無様をさらすのだ。この世界にかつての英雄は二人しか残っておらぬが……」
すっとレオは目を細めると、ドラゴンを見る。
「剣聖の遺志を受け継ぐ者もいる。私の知る限りな。賢者が生きている以上、あれが手を考えていないわけがあるまいて」
『若き定命のものよ。なぜ賢者が生きていると知る』
レオは右目を細めながら、邪人の一斉蜂起の日に私は青色の魔力で編まれた甲冑を纏った魔術師を見ていると告げた。
『成程、賢者か賢者の後継者が確実にいるというわけじゃな』
「そうだ。私でもあれを再現するには至らなかった。高度な術式を3つ以上同時励起とか人間のできる業ではない」
それを可能にしたのが、賢者と呼ばれる英雄の一人だったりするのだが。本当にあれは二インゲンなのかねぇと溜息をつく。
『それを目指した結果がその腕か。人間はどこまでも欲深い』
「はっ!!魔術師とは元来強欲なものだ。トカゲはしらなすぎる。人間の強欲さをそして……愚かしさをな」
真っ黒な瞳は虚空を射抜き、そこにいるはずのない存在を映し出していた。
「それにな、生に執着し生きたいと願うのは定命のものの定めだろうに……っち」
突然舌打ちをすると、レオは後ろを振り返る。まったくばれないとでも思っているのだろうかと、小さくつぶやきながら。
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「やぁ獣王、久しいね。最後にあったのは君の戴冠式以来かな?」
青いローブに身を包んだ魔術師は謁見の間で小さく笑う。その姿を見て獣王は、驚きと共に破顔した。
「これは賢者殿……珍しい小僧が出てきたと思ったら、貴方もこの国にお見えになられるとは」
「あぁ、あの子が邪神の気配を感じてね?まったく、弟が弟がとうるさかったからすっ飛んできたんだが、まったくあの子も心配性なんだからね」
賢者より先に、獣王に事の顛末を説明していたユーシェは獣王が賢者と呼んだ男に目を向け固まっている。
顔は見えず、賢者としての力を発揮はしてはいないが、どこかレオに似た雰囲気を持つ魔術師だったからだ。
「おや君は……なるほどね。アーセナルの子孫か……いい魂を持っている」
「……なぜわかったのです?」
まだ名前を名乗ってはいないのに、家のことまで言い当てられユーシェは困惑する。
「アーセナルはその精神に術式を刻んでね?精神は遺伝しないのだが、その特殊な術式は彼の子孫に遺伝しているんだよ」
デオルディア滅神流……ユーシェが納めている剣術はそう名付けられている。なぜかは知らないがデオルディ・アーセナルの子孫しか扱えない剣術として有名で、彼女は賢者の言葉でその理由を知ったのだった。
「それよりもレオを助けに行かないと」
ユーシェは驚きすぎて、一周廻って冷静になる。レオが邪神化しかかっている古龍と戦っているのだ。
「あぁあの子なら大丈夫だよ。あの子が来ているなら私が出てくる必要はなかったね。たかがトカゲごときあの子一人で十分だからね」
そのいいように、ユーシェはどこか既視感を覚える。賢者であれども、魔術師は彼らにとっての真実を放さずにはいられない存在なのだろうかとも思う。
「相手は古龍ですよ!!それに、彼の拘束魔術だって……」
その言葉に、賢者は盛大にため息をつく。ひどくつまらないといった雰囲気で彼はユーシェの方を向く。
「アーセナルなら剣一本で殺せる。私だったらそうだなたった一つの魔法で殺せる。殺すことで言ったら、そこの獣王の神獣化でもできるだろう」
「……お見事。流石は賢者見抜かれていたとは」
ユーシェは絶句する。彼を含め獣王までもがたばかっていたのだから。彼にしかできないとたばかり、体がボロボロになりながらも殿のために残り犠牲になった彼にとってその言葉は裏切りにも等しいのだと……
「騙していたの!!獣王」
「君は今だましていたと言ったね?我らはあのトカゲを殺すことは本望ではない、だから獣王は殺さずに何とかできる人物を探していただけなんだよ。それが一番の最善手だからね」
最善、ユーシェは二人の言う最善がわからなかった。それゆえに間違えるのだ。レオという存在がいかに非常識なのかを……
「ふむ、見るといい」
空間に投影されたのはケガ一つないレオの姿と、ソノレオに首を垂れる黄金の古龍の姿だった。
「……マルティ、穢れが落ちている。だと」
賢者はその通りとつぶやく。
「彼こそが今代の希望。勇者亡き世界で凡夫でありながら、世界にあらがい続ける者。それに君がその剣術を捨てない限り、彼の隣に並び立たなくてはいけない。かつての英雄の力を継ぐ者としてね」
ユーシェは目を見開く、彼女が分かれるとき確かに瀕死の状態だったはずなのだ。
「だれだ?俺を見ているのは」
底冷えしそうな黒い瞳が彼女たちを射抜き、投影された少年はまぁいいと溜息をつく。
「うっあぁぁぁ」
感じたことのない恐怖にユーシェは顔を青くし、過呼吸状態にまで陥る。
「あらま珍しい、穢れを喰らいそれすらも糧と変えたか勇者の力は教わっていないはずなんだけど」
ぼそりと賢者がつぶやくと、投影を解きゆっくりと歩き始める。
「獣王……あれから150年だ。150年も持ったといったほうがいいがね。あれの復活を止める術はなく自己を殺しても違えようとしたあいつにも非はない」
無力さを嘆くような声が響く。なんせ彼は賢者と呼ばれながらも、150年前も今も無力だったからだ。
「だけど希望はある。数年前の邪人の一斉蜂起その際に復活しかけた邪神を再び、殺した存在がいる。アキハバラはそれを探し、またそれに並び立つためのかつての英雄の力を継ぐものを探している」
「……あぁわかっているさ。人類が紡ぎだした希望のロスタイムだ俺もそれは理解している」
だからだよと賢者は紡ぐ。
「騙せ、狂わせ、張り巡らせ邪神の復活は阻止できないだが伸ばすことはできた。だったら奴を殺す方法を……一人も犠牲にせず邪神を殺すすべを見つけろ」
ユーシェは雷に打たれたような感覚に陥る。
「それが貴方の後悔か?勇者を犠牲にした賢者の」
「後悔?できるだけハッピーにを考えるのがヒトじゃないのかな」
違いないといった瞬間、賢者が掻き消えその場所にレオが立っていた。
「強制召喚術式か、別の魔術師がここにきてたみたいだなぁ獣王。お前のもくろみ通りあのトカゲは生かしておいたぞ」
その黒い瞳は怒りの色に染まっていた。ユーシェはそれを感じ取り一歩引く。
「悪いな人からだいぶずれたから俺の存在が怖いんだろう、あと一分もすれば落ち着くさ」
「それがお前の言う新しい厄ネタか。成程な、確かに普通の人に気づかれればそれは厄ネタになる」
ユーシェは彼を正しく理解できていないのだろう、目を白黒させながらレオと獣王を見る。
「大方、俺を巻き込んだ理由を話していないのか。生物としての龍種と違ってお前らが古龍と呼ぶトカゲは、実は生物ではない。マナの集合体……精霊といったほうが正しいかな」
生物の性質を持つマナそれが古龍の正体だったりする。だからこそこの世界の人間は、今の神である白竜の子が生まれた理由がわからないのだが。
「え?」
「精霊が死ぬとマナのバランスが崩れ、世界が不安定になる。火の精霊が死ぬと、火の要素が弱くなったりね。では生物の要素を持つ龍が死んだり変質すればどうなる?」
その答えを彼女は理解したのだろう、レオに青ざめた顔で視線を向けている。
「それも彼からかい?」
「ノーライフクイーンが母替わりだったからな、あれは生物から精霊に昇華したパターンだが」
自分の育ての母でさえも研究対象かと獣王は呆れた声を上げる。
「ということはレオは騙されたんじゃなく……」
「あれを引っ張り戻すために、俺に頼んだってわけだな。武器さえあればユーシェでも殺せるぞ。お前の気の量ならブレスの無効化ぐらいわけがない」
レオはゆっくりと苦笑いを浮かべる。彼は彼女の剣術を知っているがゆえにそれを信じて疑わない。
「では、貸し2だな。切り札まで切ったんだ。約束の日に返せよ」
レオはそういうと歩き始める。
「レオ。どこに?」
「今日の宿つうか、昔世話になった人だよ」
彼は小さく笑うのだった。ユーシェはその後ろ姿に、先ほど見た賢者の姿を重ねる。
「まさかね……」
いやな胸騒ぎを覚えながら、彼女はユーシェの後に続く。王座では獣王が苦い表情を浮かべレオたちを見送っているのだった。




