【18】暗殺
太陽が姿を隠してからしばらく、既に世界はどっぷりと暗さにまみれて満点の星が俺たちの上で光っている。
ここが敵陣のすぐ横で、岩の影に隠れて焚火を囲んでいるんじゃなきゃロマンチックな光景なんだがな。
「それは多分」
俺の手前に座っていたコニューが顔を上げ、目元にかかっていた影が払われる。
「魔女の力の一つだよ、霞掛の術」
こと魔女、魔術に関しては俺も、俺以外の部隊もほとんどが全くの無知と言っていい。
「便利なものなんだな魔女ってのは……で、どういうのなんだそれは?」
「う~ん……説明が難しいなぁ……僕だってこれを全部わかってるわけじゃないし」
「とにかくわかるだけでいい、俺達には情報が必要だ」
今頼れるのはこうして彼女だけというわけだから……正直言って出発前に言った言葉は撤回せねばなるまいな。
「……聖戦士様が見たのは鏡の中の魔女の姿……でも魔女自体はそこにいる、魔女の周りに存在する壁が彼女の虚像をそこに見せている」
「さっぱりわからんな」
どうやらコニューが説明下手というわけでもない、単純に事象が複雑すぎることなのだろう。
「う~ん……」
「どうやって殺すかは? 本には無かったのか?」
コニューは静かに首を振ると手に持っていた水をすする。
「千人の兵が魔女に射かけたけど、魔女は傷一つなくその中を進み」
「全滅したか」
こくん、と静かにうなずくとコニューの首は力なく垂れさがった。自分の知識がまるで役に立たないことに消沈しているのだろうか。
彼女が自分を奮い立たせている自信の元だ、それが通用しないとなれば落ち込みもするだろう、俺だってマグナム弾をはじかれて落ち込みそうだ。
「つまり……少なくとも遠くからどうにかしようとしてもまったくの無駄な努力というわけだな」
せっかく運んできたこの馬鹿でかいライフルも無用の長物か……、悲しくなるな。
「どうするですボス、偵察だけならもう終わったんでしょう?」
「まぁな」
敵陣容の査察、魔女の姿の確認……そしてその魔女がどういう状態であるか。
だから正直このまま戻ってもいい、戻っても十分な成果はある。
「……」
「行くんですか、ボス」
だが……あれを放置していくわけにはいかない。
「コニュー、力を使うと魔女は大きく消耗すると言ったな?」
「うん、契約法か、抽出法によって変わるけど、基本的には凄い疲れる」
「だったら善は急げだな」
飯、軽い睡眠、作戦の練り直し……そして装備の変更、一通り行いたいことを終わらせておいてあるから、俺は今すぐにも動けるようになっている。
「行くの?」
「あぁ、あれを放置しておくわけにはいかない。 そうだろ?」
「うん……でも、どうするの?」
「決まってる」
ヘルメットにマウントされた暗視装置が起動することを確認し、俺はグローブをはめなおす。
「遠くがダメなら近づくだけだ」
二万の相手に潜入し要人の暗殺を行う。
これを成功させられたなら俺は一生自慢話に困らないな




