【S1】win for wins
カードゲーム、それは道中誰かと暇をつぶすならもってこいの暇つぶしだ。
「レイズ」
俺は疑似チップとしてつかっている木片を中央に押し出すと、次のプレイヤーの宣言を待つ。
「えっ、えっ……どうしましょう、どうしたらいいのですか?」
「相手に聞くな、自分で考えろ」
パラダは一しきりきょろきょろと辺りを見回した後、結局フォールした。
まぁテキサスホールデムは急にやるには少々ルールの入り組みすぎてるきらいもあるから、そうなっても仕方あるまい。
「じゃあ俺とボスの一騎打ちですね」
「そういうことだスッティ。 タッツ、フロップを開けろ」
「あいあい」
だが早々に負けて一文無しになったジスト、消極的なパラダと違いディーラー役の男ともう一人の男はよく俺に食らいついてくる……まぁ当然だ、彼らと遊ぶのはこれでかれこれ十回以上は超えているのだ。
特にスッティは呑み込みが早い、俺との勝負でほぼ五分の勝率を誇っている。
中央で開けられた三枚のカードは……。
(クラブの8、ハートのジャック、ダイヤのジャック)
「レイズ」
「……」
俺は更に木片をタッツの方へ投げる。スッティはコールし俺に挑んで傷を広げるか、それともフォールして俺に安い勝利を与えるか、選択肢を迫られ一時逡巡した。
「コールだ!」
「威勢のいいことだな」
「へへ、ボスの懐むしらせてもらいますよ」
開かれた四枚目、ダイヤの8。
「レイズ」
「コール!」
五枚目、クイーンのスペードのエース。
「コール!!」
既に最後のチップを吐いたスッティ、これで勝負は単純になった。
俺が勝てば全てを奪い勝利、スッティが勝てば俺は全てを奪われ負ける、二つに一つだ。
リバーまで開かれた中央のカードはもうこれ以上開かれない。 “勝負”の時間だ。
ショーダウン
「フルハウス」
スッティが手札を置き、その満面の笑みで俺を迎える。
なるほど確かに随分と強い手だ、ターンも待たずに完成しているとはかなりの強運という他ない。
だがそれで勝負に勝てるかどうかは別だ。
「……」
俺はそっと右手に持っていたカードを台の上に置くと、ゆっくりとそれを裏返す。
「悪いな」
並んだカードは
「フォーカードだ」
8 8。
「ひでぇや! スリーカードであんなに突っ張ったのかよ!」
「ハハハ、危険を冒したものだけが勝利する(Who Dares Wins)だ」
ともかくこれで今回の勝負は文句なしの俺の一人勝ち、まさか大倉庫にこんなものが入っているとは、俺も思ってもみなかったがお陰で随分と暇をつぶせた。
未だ何で負けたかわかっていないような顔をしているジストや、困ったような表情を浮かべているパラダは楽しめていなかったようだが、部隊の男たちにはもうだいぶ浸透してきて、暇があれば俺に勝負を挑んでくるようになっている。
「ボス、来てください!」
「わかった」
カードを片付けてそそくさと馬車の奥から前へ向かう。悪路を渡ることもあり随分と揺れることもあったが、もうすっかりと慣れて壁に手を付けば楽々歩けるようになった。
「どうしたツァイク」
御者の男は、声を掛けられると手綱を捌いたまま、俺に向かって首だけを振り返らせる。
「ボス」
男の背中には、一つの大きな塔。
「見えてきましたよ」
稜線から徐々にその全景を表していく街の姿が、リレーアのものであることを、絵画を思い出しながら俺は理解した。




