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Flagrant 高校生特殊部隊が異世界転生  作者: 十牟 七龍紙
Pandora Tomorrow
361/366

【41】生還

「………い」


 ……


 ………………


「…………こい」


 ……


 ……………………


 誰かが


「……ってこい!」



 誰かが呼んでいる気がする。



「戻ってこい!!」


 一体それが誰なのか、今の俺にはわからなかった。

 知っているはずなのに。俺はそれが誰なのかわかっているはずなのに、答えが見つからない。


「戻って来いよ!!!」


 俺を呼ぶ、泣きそうな誰かの、叫びが


 うるさいくらいに頭の中に響いて。


「……」

「…………ボス?」


 目を開いて最初に飛び込んできたのは、まるで水風船を破裂させたような顔面を下げている男。


 俺の事をまっすぐと見つめて、いろんな液をぼろぼろと垂らして……


「タッツ」

「ぼ、ボス!」


 思わず右腕でその顔面を押しのける。

 勘弁してくれ、目覚めに男の、それもこんな気色の悪い野郎の顔を見る趣味は無いぞ。


「ぼ、ボス! ひでぇ、ひでぇぞさすがに!」

「あんだよ、うるせぇな。 男の寝顔を覗くのが趣味か? 頼むからゲイだけはやめてくれよ」

「起きた途端この人ほんとひでぇなオイ!」


 起きた途端……そういや俺は、何をしていたんだか。頭がぼんやりとしてはっきりとした言葉が出てこない。


 ゆっくり、ゆっくりと一つずつ思い出して……あぁ、そういえば俺は


「あんたが……あんたが何時までも起きないから……俺は本当に死んだのかと……」

「……タッツ」

「あんだよ!」


 腕を見れば輸血用の管が通され、俺の体から急速に失われた血液がパッケージングされた輸血用セットから補填されていた。

 確かに俺はこれの使い方を教えたが、まさか使う相手が自分になるとはな。


「これで死んだらお前の枕元に立ってやるからな」

「……はぁ」

「なんだよ」


 タッツは呆れたように立ち上がり、近くにあった荷物の整理をし始める。

 俺はというと……動こうにも立ち上がるにはまだ血が足りないらしい。大樹を背に転げたまま、徐々に体力が戻るのを待つしかないらしい。

 ふと腿の方へと視線をやれば、本格的な処置が施され止血も完璧だ。これなら後遺症の心配も少ないだろう。


 こちらに背中を向けたままの彼の影を追って、息を吐いた。


(あいつは人一倍座学を頑張ってたからな)


 医療を全て網羅した、なんてことはないんだろうが、応急処置全般やキットの使い方は完全に把握したらしい。


 そのお陰で俺は今生きているらしい。




 なんだかそれがおかしくなってしまって、しばらく隠れて笑っていた。

 

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