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Flagrant 高校生特殊部隊が異世界転生  作者: 十牟 七龍紙
Pandora Tomorrow
359/366

【39】逝去

 ……


 …………


 …………………………。


「よお」

「……あぁ?」


 どこだここは。辺り一面真っ白で……雪でもない、砂漠でもない。いうなら何もない、そんな世界が広がっていた。

 そんな場所で俺は今まで眠っていたらしく、その声がかかるまで意識を完全に失って、ここに横たわっていたらしい。


 霞む意識を振りほどくように頭を振ってから、その声のする方に意識を向けてみる。


「……」


 驚いた。


 いや本当に驚いたから、目をかっぴらいて馬鹿みたいにそこで動きを止めてしまった。

 どうやらここは正気の世界じゃないらしい。


「ネイサン」

「気が付いたか」


 俺を見下ろしていた顔は、最近はすっかり見れなくなってしまっていたその姿。

 自分の頭がおかしくなったかと思ったが、今更自分を疑うのはやめにしよう、ここはなんでもありの世界なんだ。

 素直にその目の前の現象を受け入れて、俺は素直にその再開を喜ぶことにした。


 あぁ、俺に向けられて差し出されたその手は俺の記憶の彼のそれ。

 俺はこれに掴まって何度も何度も立ち上がってきた。


 今回もまた、そうして。


「久しぶり」

「そうだな。 お前も元気そうじゃないか」

「大変だったさ、何もかも。 何もかもがこの世界じゃ初めてだった」


 目の前の事に食らいついて、これ以上ないほどに生を堪能した時間だった。

 あぁ確かにこれ以上ないほどに俺は生きていた。


「おれを迎えに来たのか?」


 そして、今その歩みは止まり、気が付けばこんな場所に。


 微かに思い出せそうな記憶の中にあったのは絶望的な状況の中、自分に向けられた銃口の落ちくぼんだ闇。

 推測何て言葉を使うまでもない、結果はこの通り。


「悪い。 結局こんな終わり方だ。 あんたにせっかく育ててもらったのにな」

「そうだな」


 もっと相応しい、世界の運命にかかわるような現場での死なら報われた……なんてことはいいやしないが、それにしたってしまらない末路だ。

 せめて戦いの中命を散らすかっこうくらいつけたかったと思うが、それを言ったところで命が戻るわけでもない。


「ネイサン、久しぶりにあんたとゆっくり話したいな。 色々あったんだ、本当に色々」

「あぁ、お前も随分成長したようだな」

「そうか? ありがとう」


 自分では余りそんな意識はないが、まぁあれだけの事をしてきたんだ、随分と変わったんだろう。

 それにネイサンと会うのは随分と久しぶりだ、当然印象がかなり違うのも当たり前か。


「……なぁ」

「なんだ」


 俺は出来る限りのことをした、出来うる限りのことをしてきて、走り続けた。


 けどそれがどんな結果につながったのか、それがどんな風に評価されるものなのか、考えたことも無くて

 今こうやって落ち着いてみて、ふとそんなことが気になってしまう。


 俺は、何かを出来たんだろうか。


「ネイサン、俺は……俺は」

「伊津」


 上手く出ない言葉の間に、先にネイサンが声を挟んで、俺はそちらに振り向き首を傾げた。


 いつの間にかネイサンは俺から遠くへ離れていて


 彼の足元には、大きな湖が広がっていたのだから。

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