【33】失踪
な
なんとか。
「……やったぜ」
なんとかここを守り切った、その安堵が思わず腰の力を抜かせる。
その場にへたり込んで、尻に石で作られた城壁の硬さを感じさせ、思わず手から握っていた槌が落ちた。
さっきまでこいつで砕いていた骨どもは今やどこにもその姿が見当たらない。
正確に言うなら、みんなバラバラに砕けて、城壁の下に積み上げられたゴミになっている。
「ボスがやったんだ!」
あぁその通りだ。
俺たちがここを守ってる間、ボスがこいつらを操っている誰かを始末する、そういう手はず。
だったらこれはボスがそれを成功させたっていうことだろ? それ以外、一体何があるっていうんだ!
「おい小僧!」
「小僧じゃ……あぁもう、なんだよ!」
近くにいたおっさんが一人俺の方へと来て、辺りをきょろきょろと見回しながら俺へと手を伸ばす。
あぁ、そうだな、まだ終わったわけじゃないんだから休むには早すぎる。
「これから俺たちはどうすんだ」
「あー……。 とりあえず周辺の警戒、何か問題がないか確かめてくれ」
「あいよ」
とにかく城壁から兵が引いたことを確認し、それから……森の中に入って連中が残ってないかを確認し……それから……
いや、考えなくたっていいさ。
「ボスが帰ってきたらすぐ知らせろよ!」
ボスがどれくらいで戻ってくるかはわからないけどそう遠い事じゃない事は確かだ。
俺はどうせそれまでこいつらに指示を与えればいいだけ、ボスが成功させたってことは、後は楽にしてればいいってことさ。
そう思いながら俺もまた周辺におかしなことがないか見ていると、何か一つ動く影を見つける。
「……タッツ?」
思わず城壁を飛び越えてそれに近づく。降り立ってから結構迂闊な行動だったかなって反省するが、もうやっちまったことはやっちまったことだ。
ともかくそいつに向けて俺は近づいていき、手を振って俺の存在を知らせる。
「タンガ、タンガ!」
奴は確かボスについていったはずで、それが何で……って
あいつが背中に背負ってるそれを見れば理由はわかった。
「そいつが敵の親玉か」
コクリと頷いたってことはそういうことなんだろう。こいつが俺たちにあのクソ骨をけしかけてたアマか。
ちょっとくらい殺してやりたい気持ちだって浮かんだけど、ボスから絶対手を出すなって言われてるから手は出さない。
……唾を吐きかけるのもダメだぞ、タッツ。
「……」
けど何かおかしかった。
何か足りないというか
「おい、タンガ」
いや何かじゃない。
決まってる、タンガは。一人だけで帰ってきた。
「ボスは?」
ここに戻ってくるのは、二人のはずなんだ。




