【22】帰還
まったく、あの男は何をしているのだ。
「何か動きはありましたか」
「いえ、女王陛下。 未だ何も報告は入っておりません」
あんな子供一人始末するのに、一体どれだけの時間をかけているのか、不愉快だ。
「誰一人として外へ出さず、誰一人として入れず、良いですね?」
「はっ」
あの人が残してくれた兵たちは私によく尽くしてくれている、だがそれでも王の遺児を殺すとなれば誰もが及び腰になるだろう。
そこのところをいくとあの老人は功名心ばかりの男であるからああした汚いこともできる貴重な男だったというのに。
それに王族に刃を向けることをためらわない男など、いくら始末したところで痛くもない、これ以上に最適な人材があっただろうか。
ただ無能であること一点を除けば。
そんな憂鬱極まりない私の耳に、ドタドタと騒がしい音が響いてくる。
「何事か」
この男は私が顔を眉を顰めたことも気が付かないだろう。
この玉の座が座るこの間に騒々しく入ってくるなど、まるで無思慮な行為である。例えそれが火急のことであっても私に伝えにくるより先に言うべき相手がいることだろう。
私の前に跪いて頭を垂れているこの男は恐らく一介の兵士で、本来ならば私の視界にも入らないような人間。
(後でこの者とこの者を遣わした人間を処罰せねばな)
ここは王宮である。王家に使えるにふさわしい人間以外は必要はないのだ。
「ご申告!」
「何か」
私の代わりに、先ほど言葉を交わしていたウェズリー侯爵がその男の元へと寄り添う。
泥がつき汚れた姿の男は醜悪な汗のにおいを放ち、私の座る玉座の元までそれを漂わせる。
このような男はやはり殺してしまうのが一番だろう。
だが今は男が持ってきたその情報が気になる故に、黙ってその次の言葉を待った。
「お、王が」
王はもういない、そんなことは知っている。
だからその報告がいつ届くのかが問題なのだ。
「アーニアル二世が」
それは死人の名
「ご帰還されました!」
そのはずだった。
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「どうだ、奴ら慌てふためいているだろう」
「あぁ」
兵たちのどよめきがここまで聞こえる。私の到着が彼らの驚愕だ、まさか王が独力で脱出を成し遂げるなど夢にも思っていなかっただろう
事実は違えど彼らにとっては虚実が事実である。
「どうした、随分と不機嫌そうではないか」
「……」
私を助けてくれたのはこの、隣で不愉快そうに眼を細めている男。
「どうした、笑え、我々の帰還であるぞ」
「……」
先ほどから一言も喋らず、馬上で腕を組んだまま一向に動かない。
それでいて“不満である”という意識だけは一向に隠そうとしないイヅは、ようやく視線だけこちらに動かしてこちらをにらみつける。
「なぁ」
「なんだ」
言いたいことはわかっている。
「本当に」
彼の頭から生えた羽がふわりと揺れて、背中に羽織られた金と白で縫われたマントが大きく揺れた。
「こんなバカみたいな恰好する必要あるのか」
「お似合いだぞ」
「……女王に協力したくなってきた」




