【21】反撃
中東で活動するためにつけていたせいで、すっかり愛用していたストール、いわゆるアフガンストールというやつ。
強襲の時にも当然のように身に着けていたからこちらの世界にも持ち込めてしまったわけなのだが、これがまた随分と役に立ってくれる。
口元まですっぽり隠してしまえば、こうしてスポーツグラス、帽子と合わせて顔を一時的に完全に隠すことができるのだ。
「お前の読み通りだったぞ」
街道の一角、旅人のために開かれた郊外に開かれたここの酒場はいろいろな人間が立ち寄り、様々な情報が集まってくる。
「やはりか……」
「あぁ、シャインガルは完全封鎖、人っこ一人入れてくれないらしい。 お前のとこの衛兵が愚痴ってたよ」
部屋を一つ借りてその中にアーニアルを隠し、服、靴、身なりを整えさせてやるための時間を作った。
あのみすぼらしい身なりで精悍なアーニアルの顔はいかにも不釣り合いで目立ってしまう。
おかげでジストから分けてもらった金はすっかりなくなってしまったが。
「大方俺を殺した後ドーゲル候を糾弾し、彼がやったこととし責任を押し付けて処罰でもするつもりだったのだろうさ」
「お前の母親とやらは相当性根が腐ってるな」
さすがに少々失言だったか。
「お前もそう思うか?」
「あぁ」
とも思ったがアーニアルは毛ほども気にしていないようで、あっけらかんとそう返す。
ただ“性格の悪さがお前にそっくりだ、さすが親子だな”と言葉にするのだけは留まった。
「で、どうする? 城下には入れそうにないが、開けてくれるのでも待つか? それとも忍び込むか?」
「……どちらも非現実的だろうな、あの女は慎重さだけが取り柄のような奴だ」
「お前が出て行ったら国民は歓迎してくれないのか? 嫌われてるなら無理だろうが」
アーニアルは溜息をつくと組んだ足の左右を入れ替える。
ローブにサンダル、長い髪を後ろでまとめた姿は王というより修道僧であるが、この尊大な態度はまさしく王族のものだろう。
「あの女が素直に私をアーニアルだと認めると思うか? 似た人間を連れてきたとか、いくらでも言いようはある」
「中にお友達は?」
「いたところで女王殺しをやろうという気概のある奴がいるかな」
中々状況は面倒なようだ。
「お前だったらどうだ? やってくれるか?」
「そうだなお前はいいやつだから、誕生日にでもくれてやるよ」
「ふん」
まぁ仕方がないさ、あの国に戻る必要もない。こうなればアーニアルを連れて違う街へ向かうしかないだろう。
どれだけかかるかはわからないが、整備され街道があるならばこれを道なりにいけばたどり着くはず。
王が死んだと判断できなければパラダをどうこうする事も出来ないだろう。
「よし」
そうこう考えているとアーニアルは何かを決心したようで、立ち上がって手に持っていた本を閉じる。
「戻るぞ」
「どこへ?」
「決まっているだろ、私の国だ。 私は国王だぞ」
?
疑問が表情に出たのだろう
「安心しろ」
アーニアルは不遜に笑うと目を細めて唇をきつく結んだ。
「私は王だぞ、誰よりもあの国のことを知っている」




