表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Flagrant 高校生特殊部隊が異世界転生  作者: 十牟 七龍紙
Pandora Tomorrow
327/366

【7】雄蕊

 周りが優秀なお陰で大分助けられている。

 全てが順調とはいかないが、それでも全体の60%が既に行動を終えていた。これは当初の予想よりも1.3倍速い。


「人を働かせることにかけてお前にかなう奴はいないな」


 呆れたように溜息を吐きながら雪原の上に続く人間の列を眺める。

 何を言うでもなく、ただ黙って進み続ける、お俺たちの家に向けて。長く長く連なる足跡を重ねて。


「教えてやろうか? 人を動かす方法を」

「どうせ口八丁だろ。 根も葉もない話をでっち上げて人を担ぎ上げるのだけは得意でさ」

「失礼な言い分だな」


 こいつは軍事に関しては全くの無才だが、人を操る事に関してはこの野郎以上の人材はいないように思える。

 今朝がたまだ戦闘の後遺症残る部隊はかなり疲弊して見えた。しかしこれ以上ここに駐屯するのは危うい以上

 移動しなければならない、これは絶対だ、次に攻撃を受ければ壊滅するのがわかりきっている。


 体力の消耗しきった部隊を長距離歩かせるというのがどれだけ難しいか

 今更言うでもないが、ブリザードに直撃でもすれば間違いなく全滅だ。

 天気も読まなけりゃならないとなると行軍はかなり慎重に行わなければならないし、慎重って言うのは遅いってことだ。

 体力の消耗を考えれば歩き続かせなきゃならないのに……と悩んでいたところでこいつが出てきた。


"さぁ諸君! 帰ろう! 我らの街に。 我々は英雄として凱旋するのだ、数多の敵を打ち破りこの地に平和をもたらした、我らは剣の使徒だ!!"


 それを聞いた途端現金なもんで、全員さっきまで死にそうなツラしてたのがどこへいったんだか、いきなりはりきってこのありさまだ。

 こういう鞭の使い方だけは本当に頭が下がるよ、実際それで助けられたわけだしな……嫌味の一つも言えない。


「これが王の仕事である。 お前が人を殺すように私は人を使う、生業というものだ」

「俺とお前のを一緒にするなよ」


 とにかく俺たちは窮地を脱して敵の第一陣を追い返すことに成功した、といっても俺は最後のよくわからん、また不思議な動く骸骨を追い払っただけだが。

 状況がよくわからないまま戦うのも困るから、ここで一度退いて戦局を整理したいのもある。


「それにしても」

「なんだ」


 馬が使えないお陰で、俺のATVの後部座席に腰掛けている王様。

 彼の減らない口に付き合うのも慣れたものだが、かの人の考えはどうにもわからない。

 概ねの指針では概ねの一致を見せるものの、私的な会話と感情は全くそりが合わず、人をからかう事を仕事のこいつの考えが分かった事があっただろうか。


「よく間に合ったな」

「急いできてやったんだ、感謝しろよ」

「あぁ」


 だからこんなことを言われても

 どうも素直にそんなことを言う野郎が腹の内で何を企んでいるのか、わかったもんじゃないと疑う。


 人間は悲しいな。


「感謝する」

「そいつはお前のとこの言葉で"お人よしの間抜け"とか"クズ"って意味じゃないよな?」

「酷い奴だな、せっかく珍しく素直に感謝してやってるというのに」

「自分で珍しくって認めるくらい珍しいんだから自覚しろ」


 正直今更こいつに頭を下げられても何の感慨もない。

 もはや俺もこいつも今更引けないところまで来ている、こんなつまらないところで死んでもらっちゃ困るんだ。

 しっかり俺の為にも国を安定させて、老後に安心な将来設計をしてもらわなきゃならない。


「で、どれくらいやられたんだ?」

「さぁな。 半数は失ったか。 しかし士気は向上した、これで死者の分を相殺」

「どれだけ杜撰な計算だそいつは」

「計算ではない」


 あぁ?

 どういう意味だ。


「そうでなくては困る。 そうでなければ、我々の敗北は決した。 この兵力ではもはや持たん」

「……」


 まぁ、な。

 

 奴らを弾けたとはいえ、それは最初の攻撃だ。

 もし次の攻撃があるとするなら、この砦の殆どを失った状態でまともにリレーアが戦場になる。

 防壁の機能しない山肌からの徒歩での攻撃。人命何て何とも思っちゃいない強行軍。


「次は死に物狂いで来るぞ」

「だが心配はない」

「お前の楽観は何時になったら治るんだ?」



 この状況で心配ないなら人生の殆どは心配ない、人生常に幸せの絶頂だな。



「我らには守護天使様の加護があるからな」

「……お前の人生は羨ましいよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ