【1】春眠
まぁ結果良ければすべてよしだろう。
状況は一旦解決されて、先ほどまで忙しく走り回っていた俺も一旦腰を落ち着けている。
さっきまで罵声と共に飛ばしていた指示も今は鳴りを潜めて、沈黙と共に俺の世界は閉じていく……
有体に言って
(……眠い)
確かに眠気に対して訓練は行われている、特殊訓練ではなく通常のトレーニングの範疇でも行うものだから
当然更に高度なトレーニングを積んだ俺は相当な眠気をコントロールできるから、今起きて居られている。
けど俺だって人間だ、限界がある。
ここ一週間殆ど眠らず、寝ても環境はほとんど最悪、そんな状況でここまで突っ走ってきた。
この世界にはまだGoogleMapなんてものがないせいでオートクルーズを全てAI任せにするわけにはいかず
だから完全に眠るわけにはいかず、またバッテリーの問題もあるからATVの上で最も効率的に充電できる方法が考えながら
この遥か北方まで戻ってきたというわけ。
その途中でタンガと合流して今回のプランを立て敵指揮所の襲撃とチームの救出を同時に行った。
タンガからもらった眠気覚ましのハーブのお陰で今までは戦えてたが、今は、きつい。
正直言うならさすがに相当堪えた、戦闘中は疲れを感じないものだが、いざ終わってみると無理してきた反動が一気に襲ってくる。
気を抜けば一発で眠り落ちそうな意識をなんとか堪えながら、呼吸を整えて早鐘を打つ心臓を落ち着けるべく精神を極めて平静に保った。
「ボス!」
「……スッティか」
喋るのすらしんどいが答えないわけにはいかない、頭の後ろを小突きながら、目は開かず顎も上げず、"聞こえている"とジェスチャーを示した。
「大体終わったぜ、周囲に影はいない」
「そうか」
そういって目頭を押さえながら天を向く。
体に感じる倦怠感を金に変えられるなら恐らく車が買えるくらいには体が重い。
とにかく状況は最悪を脱したらしい。俺の状態は最悪だが。
「……ちょ、ちょっ! ボス!?」
「……すまん」
立ち眩みで足元がふらつき、スッティを杖代わりにする羽目になった。
すかさず俺を抱え込むようにしてスッティが横に立ってくれたおかげでまともに歩けはする。
「なんだ、どっかやられたのか!?」
「そうだな、ちょっと頭の方をな」
「マジかよ!」
脳みその殆どが死んでる感じというのは実に奇妙なもので、一種の多幸感のようなものが溢れてくるのだ。
恐らくドラッグに溺れて死ぬときはこんな感じだろう、最高の死に方だな。
そんなことを想っている間に俺の体はずりずり引きずられてこの辺りの中央へ。
……スッティの奴には医療の基礎を教えてなかったか……怪我人がいたら動かすなというのに。
まぁ今回はいいだろう、スッティの奴が馬鹿なお陰で出助かったしな。
中央に立った俺に向かってチームの連中が集まってきて、それぞれぼろぼろの顔なんかを上げていた。
彼らの顔がまぶしくて見れない……決して後ろに朝日が昇っているからという理由ではない、決して。
「みんな」
労わなければ。彼らを。
今回最も疲弊したのは彼らだ、だからこそ俺が彼らを……
「よく」
労わっ………
「……ボス?」
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「ぼ……ボス?」
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……。




