【41】死顔
爆発音にも似た炸裂音が鳴る。
放射線を描いて飛んできた巨大な槍が、外壁に当たってそれを砕いたんだ。
さっきから何度もなってるこの音が止むことはない。
「補強しろ、急げ! 奴らが入ってくるぞ!」
俺たちは必死にそれを抑えて、死にかけながら死に物狂いに生き延びていた。
もうどれくらい経っただろうか、それもわからない。
ただわかることは、もうずいぶんと死体が増えたということだ。
「西地区は?」
「もうだめだ、封鎖するしかない。 C4を貸せ」
「了解」
この中央区画ももう半分が陥落した、よく持った方だと思う。
戦える連中を引き入れて、残った最中郭と前部出外郭の防衛に徹していた。
既にここに入った人員の半数が失われただろう。残った俺達だってもうボロボロだ。
「落とせーっ!!」
「武器は!? 何もないのか!?」
既にもう戦う力も失われて、それでもよく食らいついた、踏ん張ったよ、俺たちは。
完全に包囲されて逃げ道もなければ希望もない、あるのは絶望だけ。
誰も口にはしないが、この努力が全く何の意味のない事なんて、今ここにいる誰もが理解していた。
「いってぇ!」
「我慢しろ、兵士であろう」
血の溢れる太ももが刺激されて酷く痛む。
さっきの戦いで奴らの剣に突き刺されて、貫通しちまった。
「そういう王様は僧侶の真似事じゃないか」
「…こいつ、無礼になってきたな」
「そりゃあ」
ちょっとしまったと思ったが、まぁどうせこんな状況だ、最後くらい自分らしくありたい。
「でも、こんなところであんたが死んじまっていいのかよ」
「よくはないな。 困ったことに、非常にまずいことになる」
「ですよね」
馬鹿な質問だったなと思いつつ、あぁ、自分も死ぬって言うのに何他人の心配してるんだ俺は。
死んだら王も俺たちも変わらない肉の塊……そうならないためになんとかしたいけど、くそ、痛いな。
「無理して立つな、足が動かなくなるぞ」
「このままじゃ足だけじゃなく全身動かなくなるでしょっ…!」
「確かにそうだ」
なんとか千切れるくらい痛い足を引きずりながら、近くにあったハンドアックスを握りしめる。
短い刃先に握りこぶしくらいしかないリーチがなんとも頼りない。
足を痛めてる状態でこんなものがどれほど役に立つのかわからないけど、今俺の身を守るのはたったこれだけの武器しかない。
死ぬのはわかってる。
でも、それでも戦わなきゃならない。
戦わず無抵抗に死ぬなんてまっぴらごめんだ。
心の底から湧いてくるこいつは闘志なのかなんなのかわからない。だけど殺されるなら抵抗しろと誰かが言っている。
だから
「っ……!」
その巨大な影が壁を貫いて出てきた時、強くそれを握りこんだ。
例えここで死ぬんだとしても、アイツを殺してやる。
そんなことを、思っていた。
でも無理だ。
デカすぎる。
あいつは恐らく最初に槍を投げてきた奴で、あの時よりさらに大きく見える。
多分、そこらへんの家より遥かに大きい。
そんな奴、どうやって殺せばいいんだ。
そんなスケルトン、どうやって
そしてその空虚な瞳が俺を見た。
そこには目も何もない、ただの落ちくぼんだ闇があって
どうやっても、俺は
「まったく」




