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Flagrant 高校生特殊部隊が異世界転生  作者: 十牟 七龍紙
Under Fire
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【9】海男

「どうぞみなさん、よろしくお願いします」


 丁寧なあいさつ。ここが挨拶教室なら100点満点の札を上げてるところだ。

 俺もあれに習うべきなんだろうが、さすがにごめんだ、片手をあげて軽くその意を示すだけで満足してほしい。


「それでは第四十六回常任理事会を始めたいと思いますが、意義あるものはその意思を示してください」


 議長であるシーシェの声に彼らは沈黙で答える。そいつは異議なしの意思表示。

 議会をさっさと初めて本題に入りたい彼らの当然たる答え。


「それでは、書記、記録を開始してください」

「記録開始します」

「よろしい」


 中央に置かれた上座も下座もない円卓、そこから一つ離されて置かれた四角の個人卓の上でペンが走り始めた。

 ここからは全ての発言があの羊皮紙に記録されていく、この場はそういう場所。


「それでは僭越ながら、このシーシェ・コモリデールが此度もまたコモリデール家の代使として議長を務めさせていただきます。

 右よりハルフズク、マンモイネン、トリアストロビューロー、カリンジャクリム。左よりパーネンヘイム、ポーロー、バルシェントリツ

 それら会社の主要船長にお越しいただきました」

「パーリントンは?」

「ステマストン号が座礁したとかでそちらに手を取られているそうです」

「はっ、だからヒューリズマンの奴など信用するなと言ったんだ」


 ステマストン、ヒューリズマンを除いて、今並べられた単語は全て会社の名前だ。

 船団をそろえてそれぞれ私の商業に精を出す、海の商人たち。

 それぞれが会社の大株主となり、確固たる独立性を保っている流通の要たち。


「この秋には黒胡椒が120t、コーヒーが38t、ニクズクが22tこの街に入ってくる予定です。

 その他商業品目は各自確認していただくとして、早急に解決しなければいけない問題が一つ」

「来年の夏だな」

「その通り、このままいくと来年の夏胡椒の余剰入荷によって値崩れを起こす可能性が高い。

 そこでいくつかの船団はバルシュラートへ行き胡椒を一度降ろし、胡椒を銀貨に変えてほしいのです。

 これを金融しバスティアンの織物集団をバルシュラートからこの街に送り、ここでの貿易品を一つ増やしたい」

「ふむ、悪くない考えだが、その場合純損失はいくらだ?」

「概ね二千万リディール。 織物の生産が始まれば四度の貿易によって生産される計算です」

「よろしい。 その金融我がマンモイネンが引き受けよう」

「お願いいたします」


 これだ。

 やはり商人連中というのはどこにいっても変わらないようだな。


「ペイライズの炭鉱山は? ビュッテン、必ず開通させてみせると豪語してなかったか」

「これだから西側の人間は短気で困る。 もう少し待て、少し問題が起きた」

「やれやれ、次の会合の時にその言葉を聞かなければいいが」

「カトマンズの戦争はどうなってる、バーンリの奴が勝手に始めやがったあれだよ」

「あぁ安心しろ、あと二か月もあれば奴らの王は泣いて跪くだろうさ」


 ……当然ながら、俺には話が見えてこない。

 彼らが共有している情報が俺にはないのだから、正直言ってさっぱりだ。

 言葉端からいくつか推察できる事もあるとは言えど、それを理解したからといってなんだってんだ。


「……なぁ」

「なんでしょうか?」



 会話に参加していたシーシェが不思議そうにこちらへ向く。



「俺がいる必要あるのか、これは」


 さっきから疑問でしょうがない。

 一応呼ばれたからここにきてはみたものの、得られたのは疎外感と暇な時間だけ。

 これなら部屋に戻ってトレーニングでもしていたいのだが……


「当然、ありますよ。 少々お待ちください」


 そういうとシーシェは立ち上がり、好き勝手喋っている人々の前で大きく息を吸い込んでから

 すっと胸を張って口を開いた。


「皆さん! 少々お時間を! 私から紹介したい人がおります!」


 そういえば円卓を囲んでいた人々が、ずらりとこちらへ視線を向けて、シーシェの方へと向き直り


 それから数人、今初めて俺の事に気づいた、そんな様子を見せていた。

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