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Flagrant 高校生特殊部隊が異世界転生  作者: 十牟 七龍紙
Executive Orders
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【39】道具

 不思議と恨みもない。元々は自分の失態だ、それをただ受けれいるだけ。

 閉められていた扉が力任せに破壊され、文字通り粉々になった扉の破片が地面に転げた。


「……」


 頭をかがめてから入った来たその巨体は、私よりも半頭身ほど高いだろうか。

 うすらぼんやりと白い靄が輪郭をぼやけさせ、空虚な顔は意志すら感じさせない。

 こうして対面に立ってみればそれがいかに不気味なものか理解できるというもの。

 こんなものが湯水のように湧いてくるのだから、どれだけ高い城壁を築いたとしても心の壁はいつか崩れる。


(まさか私がこいつらの標的になる時が来ようとはな)


 かつて私の手の回らぬ場所はこの無明らが動き、一夜にして城を廃墟とした。

 動くもの全てを殴り殺すまで止まらない。この命無きものらは全ての生命の敵と言ってもいい。


 そんなものが、今私を見下ろし、そのうつろ気な貌に陰気を陰らせている。


「ぐっ……!」


 下向きに弧を描いた拳がハンマーのように臓腑をえぐった。

 思わず息が止まり、腹の底から逆流する鮮烈さが喉を焼く。


(なんだ?)


 おかしい。こいつらにしては随分と優しい、というよりも、ありえない挙動である。

 私の知っている無明であるなら、その一撃は頭に振り下ろされるはずで、抵抗もしていない私相手に外すというのは考えにくい。

 こいつらに嬲り殺すなどという趣味の良さはない、生きるものすべての命を奪う、ただそれだけの存在だ。


 椅子の上から吹き飛んで壁にたたきつけられた体を引きずりあげて、奴らを見上げる。


 今度は頬に先ほどの拳がたたきつけられた。口の中に滲んだ血が溢れる。


 やはりこいつらは私を殺すつもりがないのか、本気であるならば私は今の一撃で死んでいるはずだ。無明の拳は岩を砕いて余りあるのだから。


(……そうか)


 私を回収するつもりか。

 出来る限り私を回収しそして帰還すること、大方そんなものがこいつらに与えられた命令なのであろう。

 私の髪を掴んで引きずり始めた無明たちは意志を感じさせないからくりのように、ただただその目的のために行動する。


 家の外に引きずり出され背中が道路で削られる、石畳は車輪と靴を載せるための場所で、何かを引きずろうとすればそのざらざらとした表面はたちまち凶器と化した。


 だがどうしても抵抗する気など置きはしない。私はどうせ道具だ、その道具が痛みで悲鳴をあげるものか。

 私はどうせ死んでいたのだ、あの男がそれを見つけ、気まぐれにかりそめの命を与えた。

 だから私に意志などはない。ただそう求められるならそうあるべきで、私たちのようなものに意見は必要ない。


 道具にあるのは意志ではなく、取っ手だけ。


 私は運ばれる。次の戦場へ、次の戦いへ。

 眠ることなく、休むことなく、機械はただ求められたように動き続ける。


 それが最高の兵士なのだ、戦士なのだ。


 ジャハブは、そう言って私を育てた。


 だから私にとってこれはなんともない。なんでもないことなのだ。

 これが私の存在している理由なのだから。

 

「あのなぁ」


 引きずられていた体が急に地面へ落ちて転がる。

 完全に力を抜いていたので対応もできず、思い切り端の雪塊に頭から突っ込み


「お前、もしかして頭おかしいのか?」



 頭上で鳴る聞きなれた破裂音に顔を起こして見上げてみれば、私をかばうように腰を下ろした男の影。



「俺は今から広場に戻って防衛指揮を執ろうと思って目いっぱい走ってたんだが、お前は何か? 引きずられる趣味でもあるのか?」

「ない」


 私の前の前に金属の筒が落ちては跳ねる。

 それに続いてマガジンと呼ばれるものが地面に落ちて、奴の戦いが再び開始されていた。


「だったらすぐ起きろ、早く! そこで寝られてても邪魔だ、さっさと二本の足で立て!」

「わかった」


 立ち上がり、頭についた雪を払い、痛んでいる体をなんとか両足をしっかりと地面につけた。

 そんな私を見るや否や、奴は近くにあった棒を私に握らせてくる。


「そいつで自分の身を守れ、得意の馬鹿力をお見舞いしてやれ」

「……女だぞ私は」

「へぇそうか知らなかった。 ならウーマンゴリラパワーをかましてやれ」

「殺すぞ」


 ……納得はいかない。


 こいつに命じられ私が何故あれこれしなければならないんだ。

 しかしジャハブに負けて忠誠を誓い、今再び負けたのならこいつは私に指示を出す権利があるのだろう。

 

 生き残れというなら生き残ってやる。

 私にそう望むならば私はそうするだけなのだ。


 それが、カリオテの設計で作られた、私という存在だから。

  

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