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Flagrant 高校生特殊部隊が異世界転生  作者: 十牟 七龍紙
Executive Orders
263/366

【28】瞋恚

 ……っ。


 痛みに対して意識を失わせないという訓練は積んである、しかもトラウマパッドとプレートの二段重ねの上からの打撃だった

 条件としては殆ど最高の状況というべきものだったろう。


(さすがに)


 とんでもない馬鹿力だな野郎は。これだけの防御を貫通してなお二十秒は息が出来なかった。

 もし直撃していれば間違いなく肋骨は折れ肺が破裂、背骨にも損傷が出ていたに違いないと確信できるほどの威力。


(さすがに、そうだよな)


 "あれ"を食らって生きてるんだ、むしろその幸運に感謝しなくちゃならないくらいだ。

 

 まさかあんなものがこの世界にあるなんてな。ところどころ俺の知らない形になっちゃいるが、間違いないあいつは俺の知ってるものだ。


「パワードスーツ」


 パワーアシストシステムは既に普及しきっている、俺が使っている外骨格だってそういうもんだ。

 だがあれは違う、あれは根本的なパワーユニットを組み込み兵士を兵士以上の存在とするためのシステム。


「フランスで開発されて、サウジに引き渡される途中イラン国境内に墜落した航空機の積み荷が確かそんな名前だったな」


 そう、俺はこいつを知ってる。

 最新装備のそいつが失われて当時は騒ぎになったもんだ。


 そいつに付けられた名前も覚えてて、俺はようやくその二つを結びつけることができた。


「カリオテ!」


 そうか、こいつはそういうことか。


 今までずっと黒い霧に包まれていたせいでその姿が見えなかった。

 だがそいつは今や晴れて、白く雪原の上に新しい黒を映している。


 硬質で、ジェットメタル隠微な輝き、カーボンで編みこまれた防刃防弾の繊維。

 全身の筋肉を補強して装甲化されたシルエットはまさに地上に降りた天使だ。俺たちのガーディアンエンジェル、最強の戦士の鎧。


「貴様が何を言っているかは知らない」

「そうか、お前はそいつが何かかも知らずに使ってるってわけか」


 なるほど、こんなもの着込まれたら今までのわけのわからん硬さも道理だ。

 RPG28の直撃を耐えられたのはさすがに行きすぎな性能だが、こいつはおそらくあの黒い霧も多少の防護能力があったと考えるしかない。


 どのみち、今俺の手持ちにある最大火力、ライフル弾がこいつに通らないのは確かだ。


「俺もお前が誰だか知らないが、俺はお前が着てるもんを知ってる」

「だからどうした」


 "IS"カリオテ、裏切者なんていう名前の付けられたこいつがどういうプロジェクトだったか、俺は良く知ってる。


 いうなれば、俺たちは兄弟だからな。


(なるほど、道理で体格が小さいわけだ)


 パワードスーツは常に開発されてきた。兵士の生存率を上げるために必用とされるであろう次世代の戦闘服、その研究はどうしてもとある場所で行き詰ってしまう。


 大きさだ。

 全ての兵器とは成人男性の体躯を参考にし規格が作られている。


 それゆえに、成人男性がパワードスーツを着込んだ場合、それら車両、武器……トイレにだって行けやしない。

 だからといってパワードスーツ用に作れば今度はデカすぎる、常に着込んでバッテリーを消費しろ、なんてのは馬鹿げた話だ。


 じゃあどうしろっていうんだ? 軍は考え、考え、考えて……一部の研究者がたどり着いた。


"成人用で設計するから悪いんだ。 そもそもの体格が小さくなればいい"



 この思想はこういう結論に達する


 “人間と一緒にデザインされたスーツの開発”

 

 designed humans. パワードスーツを運用する為だけに開発された人間。


 薬物、精神調整、骨格矯正手術、ストレストレーニング、ユニットデザイン。

 最高の兵士を作り上げるためにプロジェクトは目的達成のために必要な事を行い、蓄積されたデータは次の世代に生かされる。

 こうした研究の成果によって生まれた少年達を、軍は秘密裏に訓練し、その運用試験を行う。


 マズルフラッシュを見て避けられるようになるまでに、ほとんどの子供たちが死んで

 焼き切れた神経が、歪に曲げられた四肢と植え付けらたアダプターは、もはや日常生活に戻れず

 ただ彼らは“fault”と呼ばれた。


 未だ世間には表ざたになっていないが、俺は知っている。

 俺はあれを見たことがあるから。


 俺の記憶の中にあるスーツが、今俺の前に立っている。


「今度こそ、止めを刺させてもらう」



 俺に向かって歩くその姿を、知っているから。


 

「そういうわけにはいかないんだよ」



 最後の手段


 アーマーに括り付けられた一本のフレアを炊く。



 この光は遥か遠くの向こう、400m先からでも十分に見える光量を発揮する。





 例えばそいつは、スコープごしだと、よく見えるもんさ。








 目の前の影が吹き飛んでから、一際大きな音がした。 

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