【19】午後
……。
………………。
…………………………………………。
夕日が綺麗だ。
地平線に沈もうとする太陽がその姿を地面に半分埋めて、世界を徐々に冷やしていく。
「……」
「……」
闇夜に沈み始めて黄昏の中で、俺たちは風に吹かれていた。
どこまでもどこまでも冷たいその風に。
「……」
「……」
「……」
いや、実際には三人並んで。
「なぁタッツ」
「なんだよスッティ」
俺とタッツの間には、妙な隙間。
別に男同士ぴったりくっつくつもりもないが、それにしても俺たちの間には妙な空間が出来上がって既に十五分。
いい加減現実と向き合う時が来たんだろう。
「これ何?」
「いや俺が聞きたいわ。 なんだこれ」
「んー?」
俺たち挟んでその隙間。大人一人は無理だが、かろうじて体の小さな子供なら入れるだけの空間。
そこに今一人がいるから、俺とスッティと、彼女で三人、何故か並んで草原に腰掛けていた。
「スッ……タツ」
「略すな!」
確かこれはあの時ボスがバイバレスからかっぱらってきた……そう、魔女じゃねぇか。
俺とタッツが二人して黄昏ていたところ、何故か急に俺たちの間に入ってきて、そのままこうしている。
「タッツ……お前知り合い?」
「んなわけないだろ、お前は?」
「心当たりがあるなら聞いとらんわ」
というわけで俺らは彼女と面識があるわけじゃない、というか恐らくこれと意思疎通ができるのはボスかパラダさんかコニューのお嬢さんだけだ。
「……」
魔女も特に何があるでもなく、俺らの間でずっと持ってきた本を読んでいる。
俺たちから何をするでもなく、彼女が何をするでもなく、そうして何もない時間がただただ過ぎていく。
なんだこの状況。
「スッツー」
「スッティなスッティ」
だが俺たちが彼女の話をしているのがわかったらしく、彼女が立ち上がり俺の前髪を引っ張った。
「遊んでもらうなら向こうのお兄さんにしてもらいなさいね?」
「俺に押し付けんじゃねぇよ」
「タッツ」
「おう」
俺の前髪を引っ張るのに飽きたのか、今度は奴の方へ向かっていった魔女は
「ぶっ」
まぁそうか、確かにあいつは登りやすい頭してるもんな、短髪だし。
「ちょ、コラ! やめろ!」
「おいおいモテモテじゃねぇか、モテ男はつらいねぇ」
魔女はタッツの髪に捕まると、その手足を使って頭の上に登っていく。
一方俺の方はそれなりの長髪だ、肩に登ろうとしても足が滑るわな。
「おいスッツ! 笑ってねぇでなんとかしやがれ!」
「いいじゃん、念願の彼女ができたんだから」
「ふざけんな!」
タッツも子供相手に無理やり引きはがすようなみっともない真似もできないんだろう
固まったまま登られて、ついに頭頂部へ両手をかけられた。
「っしょ」
「クソぁ!」
肩に足をかけ、頭に両手を載せて、見事肩車の形になったその姿。
正直言って爆笑もんだが、どうにも笑う気分になれなかったのはやはりホフスの事を引きずっているからだろう。
ありえねぇよ……
なんであんな美人があいつに…?
ボスがモテるのはわかるよ、聖戦士なんてハク付けあったらどんな女だって落とせそうだし、ちょっと不思議な作りしてるけど顔も悪くない。
けどよぉ、ホフキンズだぜホフキンズ。あのクソむさくるしい野郎に……ありゃ絶世の美女だぜ!ふざけんなよ!
くそ……くそ! 真剣に悔しい! 悔しくて今日寝れねぇよ!!
はぁ……、少し落ち着こう。
世を怨んだところで何が変わるわけではない。
ごろんと背中を草のベッドにつけて、ゆっくり大きくため息を吐いてみる。
「……デ」
そんな俺の耳に届いたのは
「イデー、どこだー」
よく聞き知っているその声だった。




