【3】遊覧
俺は街の構造をよく把握している、それも仕事の一つみたいなものだから。
この街に存在する欠陥も利点もよく理解しなければ防衛計画というのは練れないのだから、この道だって何度も歩いて正確な距離や広さを求めた。
どちらも兵を動員するのにも補給を行うのにも必要な数字だ。こうした細々な数字がやがて俺たちを助けることになる。
だから。
「コニュー」
「なにさ」
俺の手を引く道先案内人に尋ねてみた。
「どこに行くつもりだ?」
コニューが足を止めて、俺もそれに呼応して立ち止まる。
ここは殺風景な小屋と道路ばかりが寄り集まってるような場所で、とてもではないが男と女が二人してやってきてお楽しむような場所じゃない。
どちらかと言うと夜にやってきて幽霊でも探すのにぴったりな場所。
「き、決まってるだろ。 で、デートなんだから」
「ほお。 じゃあ教えてくれ、さっきからこの辺りを何度もぐるぐる回ってる理由を。 ついでに言うとこの先にあるのは集団墓地で初デートにはぴったりだぞ」
そこまで言われてコニューがおし黙る。
まさかとは思ったが、やっぱりそうなのか。
「コニュー、今何歳だ?」
「……15」
「お前、この街から出たことは?」
「……ない」
ちなみに俺はここに来てから15週間だ。
もう目をつぶっても街の出口の方角を間違えることはない。
一方この先どれだけ行ったところで出口はなく、ひたすらに住宅と墓地が続くだけ。
街から出るにはぐるりと迂回して北か南に向かわなければならない。
「……」
「見るな! 僕をそんな哀れむような目で見るな!!」
まぁ今更な話だが。
「マジモンの引きこもりだったんだなお前…」
「……」
まさかこの街生まれこの街育ち、親は街一番の名士の娘が、街の中を歩くと迷子になる。
十五歳だ。十五年だ。
「わ、笑うなよ! 失礼だろぉ!」
「いや、これはさすがに笑う。 お前普段どんだけ外出してないんだ。 具体的に言うと俺との仕事以外で最後に外出したのはいつだ?」
コニューが顎に手を当てて考える。
いいか、そこで考えることが既におかしいんだぞ?
「……まぁいいじゃん」
「良くはないぞ。 これからどうするつもりなんだ」
「お、お墓デート……」
「絶対行かないからな」
まったく。溜息の一つも出るというものだが。
こうなった以上仕方ない。
「ちょ」
握った手を引いて今来た道を引き返していく。
「ちょっと、どこ、どこいくのさ!」
「決まってるだろ」
せっかくの休みに墓地巡りなんて、冗談じゃない。
「ここ以外のどこかさ」




