【B1】聖女
☆初めてポイント入った記念
Bナンバーは前後のつながりを全く考慮しない、Bonus ストーリーです。
飛ばしても本編には影響ありません。
教会の一日というのは、もっぱらこうして変わらないものだ。
掃除をし、食事を作り、神に祈りを捧げ、街の子供たちや人々に教えを説く。
だから、彼には少し退屈なのかもしれないと思った。
「あの、つまらない、ですか?」
協会に並べられた椅子。その中央列の端に腰かける彼は、夢うつろ。
どこを見ていたわけでもない瞳に正気が戻ったと思うと、夢から覚めたように彼は私の方へと視線を向けて……戸惑ったように口を開く。
「いや、そんなことない」
嘘だ。明らかに心ここにあらずで、どこか遠くを見ていた。
多分物思いに耽っていたんだと思うけれど、この人はそうして一人でいることが多い。
だから悩み事でもあるのかと思ってここに誘ってみたのだけれど……。
「私では、お力になれませんか?」
一向に心を開こうとはしてくれない、どこか隔たりのある彼の態度。
別に粗雑にされたり横暴な態度を取られたわけではないし、むしろ彼は優しく私に接してくれる。この街の人々にも概ね評判のいい人物だ。
だからこそ、こうして時折ひどく寂しい目をするのが、たまらなく居た堪れない。
「パラダ、心配かけたか?」
「そういうわけではないです、ただ」
彼は一体心のうちに何を抱えているのだろうか。
「あなたが疲れてしまったら、私を頼ってほしいんです」
それを知りたいと思う。
「あなたに助けられました。 だから、次は私があなたを助ける番です」
それは無思慮な行いなのだろうか。神に仕えるものとして抱える悩みを聞くことは仕事だけれど、それを自ら尋ねることなどしない。
けれど私は彼の心の内を聞いてみたいと思っている。彼の悩みを支えられるなら、そうしたいと思っている。
「……ダメですか?」
けど彼はただ薄く笑うだけ。心の内を明かそうとはしてくれない。
「なら一つ頼みがある」
「はい」
でもそれでいいのだと思う。
「少しだけ眠らせてくれ」
「はい」
彼がいつかそのことを話す気になるまで待とう。
それがいつになるかはわからないけれど、彼の中に私が入れたなら、その時。
「……」
寝息も立たない、けれど静かに脈動する彼の体を感じる。
余程疲れていたのだろう、すぐに眠りこんでしまった彼は腕を組んで首を垂れ、自分を抱えるようにして眠ってしまう。
「……」
その肩を少し引っ張ると、彼の上体が崩れて、地面に引っ張られるように傾き始める。
いつしか崩れ、もたれかかる彼の頭を肩に感じながら、私は午後を過ごした。




