表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Flagrant 高校生特殊部隊が異世界転生  作者: 十牟 七龍紙
The ShadowWarrior
18/366

【B1】聖女

☆初めてポイント入った記念


Bナンバーは前後のつながりを全く考慮しない、Bonus ストーリーです。

飛ばしても本編には影響ありません。

 

 教会の一日というのは、もっぱらこうして変わらないものだ。

 掃除をし、食事を作り、神に祈りを捧げ、街の子供たちや人々に教えを説く。


 だから、彼には少し退屈なのかもしれないと思った。


「あの、つまらない、ですか?」


 協会に並べられた椅子。その中央列の端に腰かける彼は、夢うつろ。

 どこを見ていたわけでもない瞳に正気が戻ったと思うと、夢から覚めたように彼は私の方へと視線を向けて……戸惑ったように口を開く。


「いや、そんなことない」


 嘘だ。明らかに心ここにあらずで、どこか遠くを見ていた。

 多分物思いに耽っていたんだと思うけれど、この人はそうして一人でいることが多い。

 だから悩み事でもあるのかと思ってここに誘ってみたのだけれど……。


「私では、お力になれませんか?」


 一向に心を開こうとはしてくれない、どこか隔たりのある彼の態度。

 別に粗雑にされたり横暴な態度を取られたわけではないし、むしろ彼は優しく私に接してくれる。この街の人々にも概ね評判のいい人物だ。


 だからこそ、こうして時折ひどく寂しい目をするのが、たまらなく居た堪れない。


「パラダ、心配かけたか?」

「そういうわけではないです、ただ」


 彼は一体心のうちに何を抱えているのだろうか。


「あなたが疲れてしまったら、私を頼ってほしいんです」


 それを知りたいと思う。


「あなたに助けられました。 だから、次は私があなたを助ける番です」


 それは無思慮な行いなのだろうか。神に仕えるものとして抱える悩みを聞くことは仕事だけれど、それを自ら尋ねることなどしない。

 けれど私は彼の心の内を聞いてみたいと思っている。彼の悩みを支えられるなら、そうしたいと思っている。


「……ダメですか?」


 けど彼はただ薄く笑うだけ。心の内を明かそうとはしてくれない。


「なら一つ頼みがある」

「はい」


 でもそれでいいのだと思う。


「少しだけ眠らせてくれ」

「はい」


 彼がいつかそのことを話す気になるまで待とう。

 それがいつになるかはわからないけれど、彼の中に私が入れたなら、その時。


「……」


 寝息も立たない、けれど静かに脈動する彼の体を感じる。

 余程疲れていたのだろう、すぐに眠りこんでしまった彼は腕を組んで首を垂れ、自分を抱えるようにして眠ってしまう。


「……」


 その肩を少し引っ張ると、彼の上体が崩れて、地面に引っ張られるように傾き始める。

 いつしか崩れ、もたれかかる彼の頭を肩に感じながら、私は午後を過ごした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ