【27】追跡
光の向こうに広がる世界は、見知った通りの世界だ。
俺はいつもここにいて、俺はいつもここから去っていく。
「スッティ、フロント!」
「わかってます!」
俺に肩を叩かれたスッティが9mm弾をバラまきながら前進し始める。
俺は彼の背後につきながら、その周囲を警戒しつつ、大剣を大きくかざした男の肩を撃ち抜いた。
一息つく暇もない、こちらに向かってくる人影を一呼吸に四人打倒して、背中についたスッティの肩を叩く。
「リロード!」
スッティがそう言って止まる。振り返り前方にマズルを向けて、スッティがリロードしている間俺がその時間を稼いだ。
とはいっても俺の持っているライフルだって無限に弾が出るわけじゃない、そろそろ同じようにマガジン内部にある弾は尽きる。
「完了! 前進!」
スッティが立ち上がり進み始める、と同時にこちらの残弾が切れた。
イジェクトボタンを押しながら思い切り下に振り空のマガジンを捨て……一人俺に向かってくるその姿に向ける。
薬室の中にも何もない、今からマガジンを入れなおしてボルトを引くのも間に合わないだろう。
なら死を覚悟するか? 冗談じゃない。
俺はそっと指をレイルの下、アンダーバレルに這わせる。
そこにあるのはいかめしい面をした、猪を思わせる姿。
マズルのすぐ下、先端に取り付けられた引き金を引けば、シリンダーが一つ回り、二つ目の銃口からフラッシュが炊かれる。
その先に居た彼ら二人は、散弾をもろに食らって引き倒され、恐らく即死しただろう。
残り五発。アンダーバレルに取り付けられたそのリボルバー式散弾銃ははっきりと機能していた。
SIX12……まったくこの世界は俺の居た場所よりよっぽど火器がそろってるな?
「ボス、前方、敵一郡!」
「行け、援護する」
下手に迂回するより火力で前方に押した方がいい。いくらこちらが現代兵装で武装しているとはいえ、包囲されれば厄介だ。
なら機動力は常に維持し続け前方に抜けていく方がいい。敵の足が追いつかないように常に進み続ける。
「オラオラ退け退け! 死にたい奴は殺してやるぞ!!」
スッティが前面に弾幕を張り、俺はその取りこぼしを始末していく。
彼らもようやくこれが何なのか理解し始め、徐々に俺たち……いや、銃声から逃げようとし始める動きが出てきていた。
こうなってくればスッティの遮二無二なこのハッピートリガーの威力も増していくというもの。
彼が前進するだけでそこに新しい道が生まれ始める。
「けどボス。 ほんとにこっちで合ってるんですか!?」
「あぁ、間違いない」
リロードを終えた彼のUZIが再び火を噴き始める。俺も四つ目のマガジンを捨て、SIX12の射撃を挟みながら移動し続け、俺たちは奴の足跡を追った。
「奴はこの先に居る」
あとどれだけ距離があるかはわからないが、確かに俺たちは奴に近づいている。
「どうしてわかるんです!?」
わかるのさ。
「奴の体からは、血の匂いがする」




