【S6】私の応援団
なんだ。
なんだあれは。
私は!
「うひぃっ、ひぃひぃ!」
私はあんなもの、知らないぞ!!
再び頭上で空気が圧縮されたような音がする。
緩慢な竜が悠々と頭上を通り過ぎていくような、そんな錯覚を覚えるような雄大さをまとって、奴は過ぎ去っていく。
恐ろしい。
これは原初の恐怖だ。
強大なる力の前に屈する矮小なる人間の呪いだ。
なんとか力を振り絞り彼らを立たせて向かわせているが、私はもうずっと体を地面に這いつくばらせて震えている。
「ひぃっ、ひぃ!!」
あの竜が吠える度、私の背中は震えあがった。
恐ろしいほどの閃光、恐ろしいほどの咆哮、私の知っている"銃"ではない!
あれは"竜"だ!! 空を跨いで死を降らせる、太古の神々だ!
「っ!」
私の目の前に肉片が飛び出てくる、そうとしか形容できない。
"あれ"に当たった人間はみなこうなる。あの"膂力"に当てられた人間は、人間でいられなくなってしまう。
破片が残っていれば運がいい方だ、まともに触れれば血煙となって彼が存在していた証は空へ消えてしまい、近くを通り過ぎただけで千切れた腕は舞い踊る。
あれは神々の力だ!
あれは人知を超えた力なのだ!! 人間が軽々しく扱っていいものではない!
それをあいつは、どうして……!
「ひぃっ!!」
再び吹き荒れた咆哮。私の視界の中で誰かの上半身が飛んでいた。
それはしばらくぐるぐると回ると、天井にぶつかり奇妙なオブジェのように突き刺さる。
嫌だ。
あんな風にだけはなりたくない。
あんな風に死ぬのだけは、ごめんだ。
這いつくばって、もがいて、積み重なる死体を超えて、私は出口に向かって這っていく。
この大切な私の命を守るため。このかけがえのない私を救うために、全力で彼らを起こし、そして歩かせ、私は進む。
降りかかる臓物、血漿、彼らの残骸がぬかるんで、私の体を染めていく。
そうか、君たちも私を応援してくれるか!
ありがとう、ありがとう! 私は必ず生き残る! 私はここで死んではならない男だ!
頑張れジェイメリ! 頑張れジェイメリ! 決して諦めるな!!
頑張れ、頑張れ!頑張れ!!
私は、出来る男だ!!!




