【24】魔王
笑うかもしれない。
”世界最強のあんたらが、そんなこと信じてるのか?”。
かつてGoldPress作戦で一緒になったオランダ海兵隊員に言われた言葉だ、俺たちのチームがそんなことを信奉してるのが酷くおかしかったらしい。
「ボス!」
だけど戦場に長くいる人間というのは信心深くなるらしい。それは神で合ったり、軍で合ったり、銃で合ったり。
「あぁ」
ジンクスであったり。
"4"の箱が、俺の足元でぶち破られる。
前方には既に20mもないような距離。
間に合わない。
「っ!! また"それ"か!!」
土嚢の横に備え付けられたスイッチを三度叩けば、地面に括り付けられたクレイモアは余すところなくベアリング弾を吐き出す。
だがこれはただの時間稼ぎにしかならない、一度こっきりの使い切り。死体の足を吹き飛ばしたところで根本的な解決になんでなろう。
だがそれで十分だ。
その時間を稼いだお陰で、俺はこいつを準備することが出来たのだから。
「スッティ」
そいつは"長大な冗談"だった。
まさか、戦場で使うことなど最初から考えていない、そういう代物。
7.6kgという恐ろしいほどの金属の塊は、重々しげに首をもたげる。
リボルバー式、規格外カートリッジ運用システム。
一見西部劇の人々が扱うような拳銃によく似たそれは、銃床とライフル式の尻に改造され、そしてあまりに巨大な姿をしていた。
「耳を塞げ」
余りに長いバレルは象の鼻を思わせ、剛毅な金属で作り上げられた体は全ての光を吸い込むような漆黒に塗られている。
重厚に作られた機関部は中に毒ガスでも入っているかのようなシリンダー。
その中に入っているのは、たった三発の弾薬。
"そのあまりに巨大なことから、そいつはこう呼ばれる"
世界が光りに包まれた。
恐ろしいほどに詰め込まれた火薬が全て反応して、銃口から竜の息吹とも思える様な火が噴き出て、この通路を一瞬白に包んだ。
俺のヘッドセットですら貫通して轟くその響きに、骨に響いた衝撃は全身が砕ける様な想いすらあった。
「なっ」
恐怖の大魔王は照らされる世界の中その猛威をまとって、俺の目の前に存在する死にぞこないどもをまとめて消し去ってしまった。
「な、な……」
衝撃を支えた俺の手と肩も、その激しい威力を手の中に抑えて弱い痺れを覚える。
「なんだァ!? それはッ!!!!」
"象撃ち弾"
「.700Nitro Express」
再び世界は白に包まれていた。




