【S5】指鳴らせ。指鳴らせ。
痛い。
「……軍!」
痛い。
「将軍!!」
私は、一体。
「ジェイメリ将軍、しっかり!」
「あぁ……あぁ、大丈夫だ」
私は……。
あぁなるほど。これは酷い。
「ジェイメリ将軍……!」
私の体は、ありていに言えば千切れていた。
巨大な鉄の槍の直撃を受けたのだろう……あぁかわいそうに、私の馬は私と違って即死してしまったらしい。
後で土の中に埋めてやろう、野ざらしではあんまりだ。
しかし困ったことに今の私は腕が千切れて、胴は体から分離しかけている。
あぁ血も随分と流れてしまったな、これでは立ち上がる事すらできないかもしれない。
そもそも下半身の感覚もないのだからこれでは。
仕方ない。
「将軍……後は私に……」
あぁ、君に頼みたい。
「すべゲっォッ……!!」
彼の顔面に張り付いた手からどくどくと熱い血脈が流れ込んでくるのが感じられる。
あぁ、失われた熱きたぎりが私の中にもどってくる。
「しょ、将軍!? やめ……」
彼の胸から噴き出た血流に私は浸され、失われた私の体は時計の針を回すように巻き戻っていく。
私の失われた血肉が彼の助力によって満たされていく、器に雪がれた葡萄酒が溢れんばかりに私を満たした。
あぁ……私だ。
何時までも腹に突き刺さっていい加減にうっとおしい鉄の塊を引き抜いて、私は一しきり腹にたまっていた血を喉から吐き出す。
まったくうんざりだ、腸が破れて内臓を血で満たすというのは気持ちのいいものではないのに。
筋繊維が徐々につながり始め、麻痺していた下半身も感覚を取り戻し始め、私はゆっくりと立ち上がる。
あぁまったくイラつく奴だ。見ろ、私の服が汚れて、大穴が開いてしまった。
ムカツク。
ムカツク。ムカツク。ムカツク。ムカツク。ムカツク。ムカツク。ムカツク。ムカツク。ムカツク。
だったらどうすればいい?
あいつらに私と同じ目に合わせればいい。
抜き放って足元に落ちていたその鉄塊を拾い上げる。
途中でかぶさっていた……誰だったか、もう忘れてしまった、その誰かの体が落ちて、私の腕の中には大きな槍が一本。
「どこからだ?」
遠くを眺めてみる、これを飛ばしてきた奴、その誰か。
きっとお前だろう、イヅ。
視界にとらえたその血の臭いに向けて、私は今一度大きく振りかぶる。
死ね。
もう終わりにしよう。




