表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Flagrant 高校生特殊部隊が異世界転生  作者: 十牟 七龍紙
Red Storm Rabbit
135/366

【7】夜襲

 今日は風が強い。


 いや、正しくは今日もだ。

 あの日からこの谷間には強い風が吹き荒れ、俺たちの体をかすめては過ぎ去っていく。


「いいか、コールサインは」


 防壁の外に並んだ騎馬四百。彼らは激しい風の中で俺の言葉を待っていた。


「"ラビット"だ」


 既に別動隊の奇襲が始まってる頃あいだ。俺たちも機会を逸せぬうちに仕事をしなければ。


「それが聞こえたら、手はず通りに?」

「あぁ」


 はっきり言ってしまえば、リレーアの持ちうる戦力でこの戦局を打開するのは難しい。

 依然として戦力差は圧倒的であり、このリレーア側の防備が固められたとはいえ、防備の修繕と消耗の籠城戦を続ける……というのは望み薄だ。


 敵が前のように消極的であればともかく、"積極的"に代わったから。

 言いたくはないが、奴は有能な男だ。


「防壁に取り付いた連中を全て引きはがす。 防衛隊にゆっくり休ませてやるぞ」

「了解!」


 奴らは決して深く攻撃することなく、部隊を分けて浅く低く寄せて、決戦ではなく持久戦に合わせて防衛側の体力を削る方針へと変えた。

 お陰で防御に詰めている部隊はここ三日間ろくに眠れていなく、このまま消耗させるといつどこで穴が開くかわかったものではない。

 だから俺たちは逆に奴らへと奇襲をかけて一旦奴らを退かせる必要がある。


「ついてこい!」


 馬の腹を蹴る、ほとんど崖のようなこの場所から逆さ落としのような形での奇襲。まさか俺が古典に習うことになるとは、人生わからないものだが、ここはどうやっても退いてもらう。


 敵の主力を防壁側の部隊が退きつけ、俺たち実働部隊が敵の中枢を叩く。

 その最短ルートがこの谷を越えての奇襲で、まるで出来の悪いジェットコースターだ、がたがたと揺れる馬の背に必死に捕まりながら、急速に落下していく感覚が覚える。


 無理やり体を起こして銃床を肩に付ければ、視界の中で光学サイトの赤が躍っていた。

 まるで狙いの定まらないレティクルを覗きながら、果てしなく続くように思えるこの衝撃の中で、ゆっくり、ゆっくり、その男の影を捉える。


「っ、なっ、あっ……!」


 敵陣の最外郭を警備していたのだろう、弓を持っていた男が物音に気付き、俺の方へと視界を向けたのがわかった。

 まだだ、もう少し、もう少し……。


 男が屈み、何かを取り出す。恐らく角笛だ、敵襲を知らせるその音色。

 角笛を取り出した男がそれを含め、吹こうと息を吸う。


 ダメだ、間に合わない。


 奴はその音色を掻き立てるために、体を膨張させ、一気にそのため込んだ気を吐こうと力を入れる。


「っ!!」


 俺もまだ捨てたもんじゃないな。

 足首から抜いた刃は正確に彼の首を貫き、その喉を潰しただろう。


「はぁっ!」


 目の前で倒れた彼の体を避けながら、俺は


「な、なんだ!?」


 俺たちは、大地に立った。


 もう一人の歩哨の額を撃ち抜き、駆け付けようとした男を地面に伏せ、外郭をなぞるように走る。

 敵陣の外郭は柵で阻まれ入り口以外は侵入者を拒むようになっているから。


 俺はスリングで下げた、ライフルとは別のそれ。

 ライフルと比べれば随分と異形で、いかめしい姿をした"5つ"のバレルを持つランチャー(発射装置)。


「っ!?」


 それは、照準器の中で小さな爆発を起こし

 柵の取り付けられた地面を根元から削り取っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ