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水軍の末裔

 子供達のために歌をつくって披露していた雄太の元に招かれざる客がいた。雄太をトランビュートと呼ぶその男は・・・

 子供達に歌を歌う雄太の元に現れた軍人・・・しかし彼は雄太を見つめるだけで何らリアクションを起こす気配はない。



 「(トランビュートがまさか、敵だったとは・・・しかしそれでもまだ表にそれを出しちゃいけねえ。)」



 軍人は険しい表情で雄太の家からすぐに去ろうとしたが楽器を鳴らす雄太の手は止まり、男性の方に視線を向けた。



 「俺の正体に気が付いたかい?」



 雄太はくちもとこそニコッとしていたのだが軍人男性と同じく目付きは険しく力強い表情で男性の顔を見つめていた。



 「・・・トランビュート、貴様。まさか敵の・・・!?」



 「ああ、そうだ。お前は自分達の軍の人数が増えたから怪しいと見て調査しに来たんじゃないのか?」



 「貴様、見抜いていたか。」



 二人の威圧感に子供達は少し怯え、それに気付いたニラーゴとハルコは子供達の元に寄り添っていた。



 「すみませんね二人とも、この男と少しばかり会話をしなければいけないので子供達を少し安全な場所へと連れていって下さい。」



 「了解しました。」



 実はニラーゴもハルコも二人の威圧感にびびってはいたが雄太に信頼を置いていた。二人は子供達を連れて外に出ると雄太は正座をして目の前の地べたを右手人差し指で差して座るように指示をする。



 「分かった。座ろうじゃないか。」



 雄太は黙って頷いた。そして男性は指を差した場所で正座をして話を始める。



 「確かお前は陸軍にいたよな・・・」



 「ああ・・・俺は陸軍戦闘員の【村上(むらかみ)虎太郎(こたろう)】だ。トランビュート、お前の能力は前から目につけていた。」



 「そうか、それは光栄だな。そういや俺も陸軍戦闘員の中にとてもずば抜けたやつがいると聞いていた。雰囲気から見てあんたがそうだと思うがいかがかな。」



 「さすが村長を務めるだけあるな。人を見る目がある。」



 「いやいや、こっち(・・・)に来る前は気も弱かったしたいした男じゃなかったさ。この世界での経験が俺を強くした。」



 「そうだったのか。ところであんた、本名は?」



 「?」



 突然雄太の本名を聞いてきたこの虎太郎という人物・・・名前からして雄太と同じ世界の人物なのだろうか。



 「トランビュートという名前を聞いたがどうしても不自然だった。雰囲気が俺と似ているし・・・本当のことを教えてほしい。」



 「・・・ああ、市川雄太だ。大阪から来た男だ。」



 「正確には連れてこられた(・・・・・・・)だろう?俺は愛媛県出身で村上水軍の末裔だ。」



 「水軍・・・おぉ!?村上水軍の末裔なのか!!俺も松浦水軍の末裔だ!!一緒じゃないか!!」



 水軍の末裔同士気が合ったのか握手をして笑みを浮かべる二人。しかし二人は虎太郎のある言葉を聞き逃していたのかうっかり流してしまったのか深く気に留めていなかったのだ。しかしすぐに二人は再び正座して静かに話を再開した。



 「まあ、喜びはこれまでだな虎太郎。」



 「そうだな雄太。」



 二人は険しい表情をしながらも決して互いに殺意を向けることもなく冷静に会話を続けるのであった。




 その様子を外から見ていたニラーゴとハルコは何か起きやしないかと緊張しながらも雄太を見守っていた。



 「あの子・・・大丈夫かな?」



 「大丈夫だと信じるしかないよ、ハルコ・・・!!」



 すると雄太は突然立ち上がったのである。顔が少し苦しそうであった。



 「どうした雄太!?」



 「足がしびれたぜ~(笑)!!」



 「ダーッ!!」



 足がしびれて苦笑いをする雄太を見て虎太郎は転んだのであった。



 「お前、いいキャラしているな。」



 「雄太こそ・・・!!」



 もはやニラーゴ達の不安をよそに二人の間に敵対関係を匂わす雰囲気はは感じられなかったのだ。その様子を見てハルコは呟いた。



 「(あの子・・・普通じゃない!相手を惹かせる(・・・・)何かを持っているわ!!)」



 雄太の何か(・・)を見抜いたハルコの横でニラーゴは手を組み、険しい顔をしながら雄太を見つめていた。

 敵同士にも関わらず雄太と虎太郎は打ち明けていく。しかしスパイの調査としている虎太郎が雄太の元に来た真の原因は今のところ分からない。

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