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雄太への怒り

 銃弾に倒れた雄太は懐かしい高知県でティラミスと出会い、かすかな希望の言葉を聞いたのであった。そして奈良県内でカードを手にした時のことも思い出し、カードの意思で異世界に呼ばれたことも知り・・・!

 雄太はふと気になることがあったのかハッとした表情でティラミスに質問しようとしたが・・・


 「ティラミスさん?」


 するとティラミスは居なくなっており、場面は変わって自分の住んでいた地域から少し離れた丘の上の野球グラウンドにいた。


 「(・・・・・・)」


 雄太はグラウンドを見つめていると自分と年の近い男性達が楽しく野球をしている・・・自分も地元の草野球チームにいた時の思い出が甦ってきた。



 ――10年前(2007年)――


 当時草野球チームにいた雄太はまだチームのユニフォームを購入しておらず自前の練習用ユニフォームを着て公式試合では補欠兼スコアラーで非公式試合ではスタメン出場していたのであった。9月16日の試合中、投球練習の合間の捕手を務めていると少し離れた場所で原因は不明ながら審判団がトラブルを起こしているのを見たので雄太は止めにいこうとしていた。


 「お前たち、何やってるんや!!」


 「お前に何ができんねん!!」


 するとチームメイトの一人に注意されてしまい乱闘?への参加は出来なかったのであった。



 ――――


 その過去を思い出した雄太は再び涙を流してグラウンドを見つめていたのであった。


 「・・・いつか帰りたい。」


 元の世界に帰りたい気持ちを抱きながらもこれから先の事は神に任せるしかなかったのだ。




 《一方の現実世界―異界編―》


 ここ最近になって雄太への怒りは実は一部で沈静化しており、恐らくエンタイルの会議での発言で雄太が本当に事件を起こしたのか疑問に抱く人々が増えていることが背景にあるのだ。実際にヘリコプター墜落現場のブルーチを主にトライエル大陸全土で活動している『市川雄太を処刑に追い込む連合』のとある地域の活動に「やめろ!」と制止する人もいたという。


 しかし皆が気持ちを変えたわけではなく一部の地域や組織、そして個人の雄太への怒りは根強いのであった。実際にエンタイルに対しても賛否両論の声が上がっているという。



 《ブルーチ》


 特にブルーチではヘリコプター墜落の影響で【自然100選】に選ばれた草原が焼けてしまい、そのためにヘリコプターを操縦していた雄太への怒りが凄いようだ。


 「あれ(・・)は生かしちゃおけない!」


 ある男性は雄太が未だに生きている(と思っている)こと自体が許せず殺意をむき出しにするかのような表情であった。


 「ブルーチの草原には精霊達が住んでいるという言い伝えがある。それを滅茶苦茶にした市川雄太を許すことはできません!」


 悔しさと怒りを交じらせた表情の女性はそう語りながら今日も『市川雄太の早期死刑を望む!』と仲間達と共に声を上げている。尚、ヘリコプター墜落を雄太のせいではないと主張したブルーチ出身の国法長官のゼラに対する批判も多く辞任を求める声も強いという。


 「ゼラ国法長官は犯罪者を庇う発言をした!閣僚が犯罪者を庇うだなんてもっての他!辞めていただきたいです!」


 前述の女性はそう語るがゼラが雄太の死刑執行を推進しているという部分には触れていなかった。



 しかし一方である女性は疑問を抱いていた。


 「(エンタイルさんの言っていたことが本当なら雄太さんは事件を起こしたのかしら・・・)」


 しかし疑問を抱けど彼女は声を上げない。いや、上げられないのだ。ブルーチ発祥の動画サイト『ブルチューブ』では最近雄太に関する動画が山ほどアップされており大半はもちろん非難の内容である。さらに雄太を揶揄した替え歌・ネタコラ動画も増加する一方で雄太を殺害するネットゲームまで存在するのだ。そんな状況で雄太を庇えば『売郷者』と袋叩きに合うのは目に見えている。


 「(彼が本当に事件を起こしたのか真実を知りたい!)」


 声を上げられない状況に苛立ちを見せる彼女の目には涙が浮かんでいた。




 《トランビュート》


 雄太の異界での縁の地となるトランビュートでも実は雄太への怒りは大きい。実際に雄太拘束に燃えるライチが派遣されたりしているところからトランビュートの警察・公安関係による雄太への怒りが窺える。


 さらにはキンバス家も実は雄太捕獲に燃えており、ヒートンはそれを知っていたためにキンバス家には雄太の正体を明かしていないのだ。実際雄太とヒートンがいなくなった店内でのシーガルとトチノキのやり取りがこれだ。


 「しかし市川とかいうやつの手掛かりは掴めたのかな?」


 「さあな。早くああいう害獣は野放しにせずに捕らえて消さなくちゃな。」


 シーガルの口から出た『害獣は捕らえて消せ』発言はキンバス家の雄太への怒りを表すものであり、シーガル個人も相当な恨みを持っているように窺えるが個人的なものかどうかは不明だ。すると・・・


 「ガル兄さん!トッチー!」


 「どうしたんだソウリン?」


 「パリーヌさんが撃たれて死んだんだ!!」


 「な、何だと!?」


 雄太の正体を知らないシーガルとトチノキは【ソウリン・キンバス】から雄太が撃たれたと聞いて血相を変えて現場へと向かう。




 《カーブル》


 もちろん雄太が洗礼を浴びたカーブルでは雄太への怒りが強すぎる・・・というのもカーブル発展の歴史にブルーチが強く関わっており、ブルーチの歴史や文化を守る姿勢がカーブルに存在するのだ。そのためカーブルでは雄太に対する怒りは酷く、中には常に拳銃を持ち雄太を見つけ次第射殺する意気込みを見せた人物も少なくないのだ。ましてや悪いことをすれば相当の責任を負えという住民のモットーがあるカーブルであるから尚更である。


 「必ずカーブルに足を踏み入れた時点で撃つ!」


 既に足を踏み入れていることを当然知らないある中年の男性は常に拳銃を持ち歩き雄太の射殺を達成させようと計画しているのだ。彼は父方が代々カーブルで母方は代々ブルーチの【セレスト・クッチーナ】といい、『カーブル・ブルーチ交流会』の名誉会長でもある。


 「やつのせいでブルーチの一部が焼野原となった!古代より守られてきた自然を乱した市川を・・・私の手で殺す!!」


 ブルーチの自然を破壊した雄太に対する怒りは尋常ではなく第一級犯罪者の現場処刑が許されているトライエル大陸ならではの怒りの表現である・・・がブルーチとカーブルでは性格の違いもあってかブルーチでは射殺してまで恨みを見せようとする人物は少ない。




 《グリーンフィールド》


 一方でグリーンフィールドでは雄太に対する怒りが少ない。というのも穏やかな住民が多く、雄太に批判的な人は多いが強く怒りを出す人は少ないとされる。また事件研究をしている『時事調査会』という集まりもあり、そこでエンタイルの発言を聞いて雄太の犯行であることに疑惑の念を抱く人もいるからだ。


 「彼がやったにしてはあまりにも証拠が少ない。まだマクレーンが証拠を出していないが本当は証拠という証拠がないのでは?」


 時事調査会の会長である【ロンファ・グリーナー】はそう呟いていた。




 《スタジウスポート》


 雄太が訪れたスタジウスポートでも雄太に対する意見がやや分かれている。スタジウスポートの北側の町では雄太への怒りが大多数で南側の町では雄太への怒りは少ないようだ。【神秘の地】と評されるスタジウスポートでは北側は歴史深い地域で南側はやや近年発展が進む地域だがこれらと雄太の件との関連性は不明。




 当然死んだ雄太は(死んでいなくても)自分への怒りを全て聞いていない訳だが薄々と怒りの強さは理解しているようだ。その汚名を晴らしたいとした先に銃弾に倒れた。どうしても甦りたいと願う雄太は次はある木造校舎の前にいたのであった。そしてある人物が雄太の前に現れたのである。


 「雄太・・・!」


 「あ、あなたは!?」


 現れた男性はやや高齢で眼鏡をかけていたのであった。

 思い出を懐かしむ一方で世間への雄太に対する怒りは尋常ではなかった。甦った後の課題ともなる世間からの評価を覆すこと・・・これから雄太はどうするのか?そして新たなる思い出の地で出会った人物とは・・・?

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