カードの意思
道場での修行を終えて業務に戻ろうとした時、何者かの銃撃に倒れて命を落とした雄太。しかし持ち主の亡くなったカードは希望を見据える言葉を表示し、ヒートンはかすかな希望を抱いたのであった。
29年の人生に幕を閉じた雄太・・・ヒートンは希望を感じつつも目の前に横たわる雄太の姿を見て涙を流しながら雄太の身体を揺する。
「パリーヌ君!パリーヌ君!」
ヒートンの声に雄太は何ら反応を示すことはなかった。
――――
その時、雄太は暗闇の中に突っ立っていた。雄太の身体はほんのり薄く消えかかったような感じであった。
「(俺・・・死んだのかな?)」
雄太は自分の死を実感していたのかもしれないが一方で寂しそうな表情をしており死を受け入れていない状況であった。
「(シャッキーさん、ヒートンさん、アスラムさん・・・!まだ死にたくないよ・・・!)」
すると場面は変わり彼はとある漁港にいたのである。その漁港を見て雄太は目を輝かせていた。
「(・・・ここは、曾祖母の故郷!帰ってきたのかな?)」
実はこの場所は雄太の曾祖母の故郷である高知県の漁港であった。この漁港の近くの山の麓にある自然に囲まれた集落が存在し、そこに雄太の曾祖父母の家があるのだ。とはいっても家は雄太が中学時代にリフォームしていたのだが・・・
「(おばあちゃん!元気かな!?)」
――22年前――
家族と共に村へとやって来た雄太を曾祖母が出迎えた。
「雄太、よう来てくれたな!」
「おばあちゃん!」
当時7歳の雄太は笑顔で曾祖母の近くまで駆けたのであった。
――――
雄太は涙を流しながら集落を見つめているとある人物が雄太に近付いてきたのだ。男性はシルクハットを被ったダンディな感じの人物で雄太に語りかけたのである。
「君は市川雄太だな?」
「あ、はい。はじめまして!え~と、あなたはどちら様でしょうか?」
「ああ、すまないね。私は【カーデナ・ティラミス】という。雄太くん、君の人生は今は1度終わっている。」
「そんな・・・というより、なぜ僕の姿を?」
「フフフ、私は生と死の世界をまたぐ男・・・あなたの生死の判断を下す者だ。しかしあなたはまだ死なせるには惜しい存在だ・・・だからあなたにチャンスをあげる。」
「チャンス?」
「そう。あなたが今までいた世界での1秒はあなたが次に行く世界の一年分にあたる。」
「はい?」
「あなたにはまた別の世界に移動してもらう。そして眼鏡も外して髪型も戻して【市川雄太】を名乗っても大丈夫だ。あなたの本当の姿で通れる世界だからだ。」
ティラミスから話を聞いて気になることがある雄太は質問をしたのだ。
「僕はもう命を落として人生は終わったのでしょうか?」
「いいや、君の人生は終わらせていない。今は一旦命を落としているだけだ。君を迎えに行く本当の日は既に決まっている。それまでに君の人生が終わることはない。」
「え、その・・・本当の日とは・・・?」
「それは教えられない。あなたはそれを考えなくて良い。あなたはあなたの人生を精一杯過ごしなさい。それが新しい世界でのリベンジなのです。」
「リベンジ?」
「ええ、あなたはまだやり直せる。私が保証する。まだ気持ちだけでも死なないで頂きたい。」
「もしリベンジが終わったら元のこの場所に・・・?」
「それは出来ない。あなたの存在は亡くなった場所にある。その世界に属するあなたはもうこちらでの復活は出来ない。だけどいつか帰れる希望は出来る。」
「帰れる希望・・・」
「あなたにこれを渡す。」
話を聞く雄太にティラミスはとあるパスポートらしきものを渡したのだ。そこには【冥界外務長官/スニサ・マクラス】という人物の承認の証と雄太のデータが記載されていた。
「このスニサ・マクラスって誰ですか?」
「この世界には私のように生死の境を管理する者達がいる。我々に会うのはなかなか出来ないが我々は実は故人ではない。生者なのだ。スニサ・マクラスも存命の人物だ・・・いつか出会えるだろう。だがまずはそこからじゃないのだ。まずはリベンジを果たして生を取り戻さなくてはならない。」
「生・・・なんとかおばあちゃんが元気なうちに元の世界に戻って必ずおばあちゃんに会いに行くぞ!」
「ふふふ・・・楽しみな逸材だな。」
雄太のやる気を見てティラミスは希望を見つめる目をしていた。すると急に雄太のいる場所が変わり、次は奈良県内の駅になったのだ。
「ここは・・・?」
「ここはあなたがカードを手にした場所だ。」
「ここが・・・そうだ!思い出しました!」
――9ヶ月前――
1月5日の朝、雄太は駅内を移動中、空からあの【レンジカード】が頭の上に落ちてきたのである。
“ポトッ!”
「ん?何だこりゃ?」
レンジカードを雄太は手にするとテレホンカードのような定期券のような見た目でよく見るとサインペンのようなもので文字が書かれていた。
『現実カラノ離脱』
「は?『現実カラノ離脱』?アハハハハハハハ!!誰だよこんなイタズラみたいなことを書いたカードは!!」
この時雄太はさんざん爆笑してからレンジカードを切符販売機の横の使いきった定期券のカードを入れるところに置いたはずだが家に帰ると枕元に置かれていたのであった。
――――
雄太はカードのことを思い出してティラミスに別の質問をしたのであった。
「ティラミスさん、どうしてこのカードは僕の元についてきたのでしょうか?」
するとティラミスは真顔で答える。
「このカードはあなたを呼んでいた。今、乱れつつあるあなたの属する世界・・・その世界を建て直せるのがあなただったからです!」
「え!?運動もスポーツも出来ない僕がなんで!?」
「身体的なものは関係ない。あなたをカードは選んだ。あなたはカードの意思を受け取っているはずだ。」
「カードの意思・・・」
雄太はティラミスの話を聞いてなぜこの世界に来たのかはまだ理解できていなかったが意味があることは静かに感じ取って来ていたようだった。だがなぜ自分が選ばれたのか・・・その答えはすぐに分かるものではなかったがいつか雄太がそれを知る日が来る。しかしそれを彼はまだ知らない。
ティラミスのいうカードの意思とは?彼の言葉から窺える『希望』に雄太は少しずつ自分の状況を受け入れつつあるように見えてきたのである。しかしリベンジとはどのようなものか・・・そして雄太は甦ることが出来るのだろうか?




