見抜かれた正体とトランビュートのキンバス兄弟
ついに【トランビュート】に到着した雄太だが謎の人物である【白浜俊介】と出会う。その白浜には何か裏がありそうだ。そしてヒートンに問い詰められてしまい・・・
ヒートンは強張る雄太の手を引っ張り居酒屋らしき建物の中へと連れ込むとそこには日本酒らしき酒やワインのような酒など色々なお酒のある店であった。ヒートンは二人が相席できる席に座ると小声で雄太に質問をしたのである。
「パリーヌ君、小さな声で回答してほしい。ずっと前から君は何か隠しているな?」
「いや、隠していませんよ。ヒートンさん、僕を信じてくださいよ~!」
「い~や隠してる!」
「根拠は何でしょうか!?」
「君の表情さ!」
小声で喋るヒートンのその表情はこれまでの優しい表情とは違い何かに対する怒りを表すかのような顔つきだったために雄太はついに白状してしまったのである。
「すみません・・・僕、本当はあの市川なんです。」
「あの市川・・・本当にか!?」
「はい・・・(もう死刑台行きは覚悟しよう・・・)」
驚くヒートンに死刑台行きを覚悟していたのか目を閉じてうつむく雄太だったがヒートンは少し雄太の顔を見つめた後、笑顔になって雄太にとって予想外の発言をしたのである。
「そのこと誰にも言っちゃダメだよ。」
「え?」
「これ、バレたら他の連中なら間違いなく君を差し出すだろう。」
「!?」
「僕は君を売らないよ。大体既に君が市川だと知っていたよパリーヌ君。」
「知っていた・・・のですか!?」
「当たり前だろう、顔が何となく似ているなと思っていたよ。眼鏡を掛けて誤魔化せても僕を欺くことは出来ないさ。僕は元々見抜く力を必要とする仕事もしたことがあるからね。」
「そ・・・そうだったのですか。」
なんとヒートンは正体に気付いていたにも関わらず雄太を売ろうとしないばかりか気付いていても全く反応すらしないで雄太を護っていたのである!
「僕は君と同じ状況を知っているから絶対に君を護ってみせる。はじめて会ったときから君と不思議な縁を感じていたんだ。」
「え?(同じ状況?)」
「他の社員や鉄道員達にはバレないよう注意を払うようにね。僕もそうするし君との関与は伏せておくから。」
「あ、ありがとうございます!」
強い眼差しで雄太を護ると決意するヒートンであった。すると背が高く顔の整った店員らしき男性が二人の元にやって来たのである。
「いらっしゃい・・・あ、ヒートンさん!お久しぶりですね。」
「やあ、アルカディア君!久しぶり!元気にしていたかい?」
「ええ、お陰様で。父さんも元気にしていますよ!」
「ほお!そうかそうか!あ、パリーヌ君。彼は【アルカディア・キンバス】君と言って僕の古くからの知り合いの子だよ。」
「あ、はじめまして。僕は【パリーヌ・トランビュート】です!よろしくお願いします!」
「あ、こちらこそ!僕は【アルカディア・キンバス】と申します。こちらこそよろしくお願いします!」
二人は互いに頭を下げて挨拶をすると握手をしたのである。
「また来ますんでこれからもよろしくお願いします!」
「ええ、美味しい料理を作ってお待ちしていますよ!」
「けっ!何が『美味しい料理を作ってお待ちしていますよ』・・・か。うわべだけは一人前だなアル兄。知らないやつにコンタクトとる必要ねーだろ!」
突然アルカディアにいちゃもんをつけてきたのは雄太達の隣の机の席に座る少し更けた顔のような男性であった。
「シーガル!なんだその言い方は!」
「けっ!お前のカッコつけるその性格に吐き気がするぜ。」
「あの、アルカディアさん。彼はどちら様でしょうか?」
いちゃもんをつけてきた男性が誰か知らない雄太はアルカディアに質問をしたのであった。
「ああ、彼は【シーガル・キンバス】だよ。僕の弟さ。」
「弟・・・」
「よく言うぜ。俺がいつお前の弟になったよ!?」
「ではなぜシーガルさんはアルカディアさんのことを『アル兄』と呼ばれているのですか?」
なぜか【アル兄】と呼ぶのに弟でないと主張するシーガルに雄太は質問をすると彼は顔をしかめたのである。
「何だよお前。見ねえ顔だな。あのおっさんから兄として接しろと言われているから仕方なくだな・・・!」
「仕方なく?」
「ああ、パリーヌさん!シーガル!話はここまでで!」
シーガルが意味深なことを言おうとするとアルカディアは慌てた様子で会話の制止をしたのだ。
「アルカディアさん、どうしたんですか?」
「いや、このままいけば話がややこしくなるからここまで!」
「はあ・・・」
すると一瞬沈黙していたヒートンはアルカディアにある話をしたのである。
「ねえ、アルカディア君!【レンスビレッジ】の分かりやすい行き方を知っているかな?」
「レンスビレッジ・・・ああ、あそこですね。あそこでしたら僕ではなくて【トチノキ】が知っていますがあいにく事情で留守でして・・・」
「トチノキ?」
「ああ、パリーヌ君。彼とシーガル君の弟だよ。この店は彼らのお父さんが経営していてアルカディア君は店長でトチノキ君は副店長なんだ。そのトチノキ君が【レンスビレッジ】の行き方を知っているんだよ。また会えたときに話を聞くといいよ!」
「へえ、そうですか!(え・・・?何でヒートンさんが【レンスビレッジ】のことを?しかも分かりやすい行き方ってなんだ?)」
まさかのヒートンの口から出た【レンスビレッジ】についての話題に雄太は戸惑ったのである。一言もレンスビレッジについて話題を出していないのになぜそこに行きたいのを知っているのかすぐには理由は分からなかったのだ。だが気にしても仕方ないので気を取り直して話を続ける雄太であった。
「ところでシーガルさんはここで働かないのでしょうか?」
「見ず知らずのお前に口出される筋合いはねえよ。まあ俺は前に少しだけ働いていたけど面倒だからからやめたよ。」
「シーガル、お前なあ。それだからどこへ行っても仕事が長続きしねえんだよ。僕達がサポートするからここで働け。」
「け!お前にそんなこと言われたくねえよ!俺の勝手だろ。てめえらにサポートされる筋合いはねえよ!」
「あのなあ!一人前な発言のわりには仕事も何もしてないじゃないか!」
アルカディアとシーガルの口論が続くなか、雄太はヒートンに耳打ちをしたのであった。
「(この口論は僕が原因みたいですね・・・すみません。)」
「(気にするな。いつものことだよ。)」
ヒートンは口論の理由が自分と思い込んだ雄太を気遣ったのであった。するとある20代前半の男性が店に入ってきたのである。入店するや否や男性はアルカディアとシーガルに激怒したのである。
「こら!お客様の前で何を喧嘩しているんだ!」
「あ、【トチノキ】・・・すまん。おかえり。」
「け、てめえかよ。」
「てめえってなんだよシーガル。あ!お見苦しいものを見せてしまってすみません、ヒートンさん!お久しぶりです!それに隣のお方は・・・?」
「ああ、彼は僕の後輩になったパリーヌ君だよ。」
「はじめまして、【パリーヌ・トランビュート】と申します。ヒートンさんと一緒に働いています。これからもよろしくお願いします。」
「あ、こちらこそはじめまして!僕はこの【キンバスのみせ】の副店長の【トチノキ・キンバス】です。こちらこそよろしくお願いします!」
雄太はトチノキに頭を下げるとトチノキも雄太に頭を下げて笑顔を見せたのであった。
ヒートンに正体を明かしてしまった雄太だがヒートンは良き理解者であった。しかし雄太が【レンスビレッジ】に行きたいのをなぜヒートンは知っているのか?そして【キンバス兄弟】と出会い雄太の運命は再び揺れ動く!




