記憶に無い人物
懐かしい景色に似た場所を見て涙を流したり【ムオー】駅で体調を崩したりと色々な出来事に見舞われた雄太の最初の業務はいよいよ終わりを迎えようとしていた。
急行列車は【ムオー】駅を出るといよいよ【トランビュート】駅へと向かう。
『次はトランビュート、トランビュートです!』
雄太は少し元気よくアナウンスをしたのであった。何故ならばトランビュートに着いたら休憩時間に少しだけ現地を下見できるからだ。
「(早く、早く下見したいぜ!)」
雄太は好奇心を抑えられない・・・はずだったが先程の体調不良があるからか下見しに行くかどうかは微妙なラインである。
「(体調が悪いからな・・・行きたいけど様子を見ないとなぁ~!)」
下見したいが体調についても深く考える雄太に対してヒートンが声を掛けてきたのである。
「ねえ、パリーヌ君。」
「はい?」
「【トランビュート】に着いたら僕と一緒に行きたいところがあるんだけど・・・」
「?」
突然一緒に行きたいところがあると言われて戸惑う雄太だったが断るのも失礼だし少しは下見出来るかもしれないと判断したのか同意することにしたのであった。
「あ、はい。」
「ありがとう!じゃあ【トランビュート】の『A出口』で待ってるね。」
「了解しました!」
そして急行列車は【トランビュート】駅の4番線ホームに到着すると雄太の最初の業務は完了した。【トランビュート】駅は6番線まである大きな駅でチャンス鉄道の駅の中でも乗客数1、2位を争っているというのだ。
『【トランビュート】~、トランビュート~、終点です。本日もチャンス鉄道をご利用いただきありがとうございました!』
「パリーヌ君、お疲れ様!」
「ヒートンさん、お疲れ様です!」
二人は駅に到着するとガッチリ握手を交わしたのであった。そして一度解散すると制服のまま『A出口』へと向かう。
「ここが『A出口』か。」
雄太は『A出口』で待っているとある男性がこっちにやって来たのである。男性は20代でヒートンと同じ七三分けの髪型をしており作業服のような服を着ているのだ。
「やあ。」
「(やあ・・・って突然何だこの人?)あ、こんにちは!」
「こんにちは、僕のこと覚えてますでしょうか?」
「・・・?どちら様でしたっけ?」
「ひどいなあ。数ヵ月前に会ったばかりじゃないですかあ!」
「(え、知らないんだけど!?)」
「僕は【白浜俊介】です。とある村で会いましたでしょう?」
「(白浜俊介・・・?誰か知らないぞおい!とある村ってどこなんだよ!しかもその名前・・・)」
雄太は【自分は知らないのに相手が知っている】【とある村で会った】【自分と同じ漢字の名前】の3つの謎を持つ白浜に対して違和感を覚えていたのだが白浜はなぜか親しく雄太に話し続けるのであった。すると雄太は何らかの手掛かりが掴めると判断したからか白浜の話に合わせるようにしたのであった。
「いや~、あの時は【白ちゃん】って呼んでくれたじゃないか。一緒に酒も飲んだしね!」
「え・・・そ、そうかな?ああ、そうだった!思い出した~!一緒に飲んだよね白ちゃん!皆酒をたくさん飲むから僕、ついていけなかったよ~、あはははは!」
「え?僕も弱いけど・・・」
「あ、ごめん。そうだったね!あはははは!」
「変な雄ちゃんだな~!」
「(・・・!?)」
記憶の食い違い(?)もあったが話を盛り上げていると白浜は雄太の本名から派生したらしき愛称を言ったのである。それを聞いた雄太は戦慄を覚えたのだ。
「(ま、間違いなくこの愛称は俺の本名からだ。この人は俺の何かを知っているようだ!?)」
すると白浜はニヤリと笑い、雄太の方を見る。
「(雄ちゃん、あれの効果が効いているみたいだね。この世界は少しでも油断しちゃダメだよ。)」
不気味な笑みを浮かべる白浜と緊迫した表情の雄太が顔を合わせていると制服姿のヒートンが慌ててやって来たのだ。
「あ、僕はどこかへ行くね!また会おうね!」
「白ちゃん!?」
「やあパリーヌ君!遅れてごめんね。ところで彼は一体誰なんだ?」
「それが・・・誰か知らないんです。ただ彼は僕のことを知っているのようです。」
「え・・・?」
一体白浜は何者だったのか。このあと彼の存在が雄太のこれまでの経緯に絡むとは一部を除いて誰も知る由はなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
一方の白浜は【トランビュート】駅の『B出口』を出て街中を歩いているとズボンのポケットから何らかの瓶を取り出してはそれを見ながらニヤニヤしていたのである。
「(これ、結構効果あるじゃん!)」
白浜が持っている瓶の中身の正体とは・・・?すると白浜は喫茶店へと入り、ベレー帽で背広姿のある男性の座る席へと向かう。
「すみません、相席してもよろしいでしょうか?」
「やあ、白浜君。どうぞどうぞ!」
「お久しぶりですね・・・【ホーカー市長】!」
なんと白浜と相席しているのは市長であった。
「白浜君。今日は面白い情報はあったかな?」
「ええ、1200万Cの首を持つ【市川雄太】氏とお会いしましたよ。完全に効いていましたね。」
「本当か。それは聞かせてもらおうか。」
やはり白浜は雄太の本名を知っていたようでそれどころか懸賞金が掛けられていることも知っていたようである。しかしなぜ捕らえなかったのか、また効いているとは何か謎が残る。
◆◆◆◆◆◆◆◆
一方の雄太はヒートンと『A出口』を出てからある場所へと向かう。
「ヒートンさん、どこへ向かうのでしょうか?」
「パリーヌ君、あそこだ。」
「?」
ヒートンはある場所に指を差すとその先は居酒屋のような店であった。
「この店は・・・?」
「本当の話を聞かせてもらおうかな。」
「!?」
ヒートンは突然険しい表情を雄太に見せたのだ。雄太の顔は焦りが出てきたのか強ばっていたのであった。
業務完了後の【トランビュート】駅の『A出口』で出会った雄太のことを知っている【白浜俊介】という謎の人物の正体とは?そして彼が接する市長や《効いている》の意味など謎が謎を呼ぶ。




