ムオーを越えて
雄太はチャンス鉄道に乗って【トランビュート】を目指す一方で彼の知らないところで生死不明に関する怒りの声が殺到していたのであった。そして火山の中を通り抜けた先には懐かしい景色に似た光景が現れたのである。
懐かしい光景に似たその街並みは雄太の心を揺さぶる。涙が止まらない雄太だったが何とか気持ちを抑えて業務に取り組むのであった。
「ヒートンさん、すみません。」
「き、気にしちゃダメだよ。何か感じることがあったんだね!」
「は、はい・・・!」
ヒートンは雄太の気持ちをなぜか理解していたようで心配していたのであった。そして雄太は駅のホームをよく見るとやはり思い出の駅と構造が似ていたのである。相対式の2面2線ホームの駅だが全部の車両が停車するらしい。すると向かいの一番線ホームに381系の肌色の特急列車らしき車両が停車したのだ。
「あ、あれは!?」
「パリーヌ君、あれは特急『トライエルディスカバリー』号だよ。経験豊富な運転士が運転出来るチャンス鉄道の人気列車だよ。」
「かっこいい!いつか運転したいなあ!」
「そのためにも頑張らなくっちゃ!」
「はい!」
先程まで悲しそうな顔をしていたのが一転、特急列車に感動して涙も収まった雄太は気合いを入れてアナウンスする。
『扉が閉まります!ご注意ください!』
すると扉が閉まり、電車は走り出したのだが雄太はふと思ったことがある。
「(もしかしたらこのまま電車に乗っていたら俺が警察に追われた場所が分かるかもしれない!)」
そう直感した雄太は【エガノアンテニー】から出発すると気を付けて景色を確認したのであった。しかし・・・
「(ちがう・・・!)」
広々とした草原の景色が見えるが雄太の探している光景ではなかった。
「(これも違う!)」
草原の次は美しい緑の山々が雄太を出迎えるもこれも違うようだ。
「しかし綺麗な山々だなあ。」
「あれは【ムオー火山群】と言って太古の噴火活動を機に出来た山々が並ぶ山地だよ。」
「そうなんですか。しかしたくさん山がありますね!」
「もしよかったら春先に一緒に登山でもしないか?」
「お!もしよければよろしくお願いします!」
海水浴に続いて登山にも誘われた雄太はバレてはいけないという不安が残るも楽しみが増えたようである。すると次の駅が見えてきたのだが線路が複数化するほど大きな駅である。
「(ホームは1、2、3、4、5、6、7、8・・・8番線もある!)」
「あれは【ムオー】駅だよ。ムオー火山群のお膝元の駅だよ。」
「なるほど、ムオー火山群のお膝元・・・う・・・」
駅を見た瞬間、突然雄太は右手で頭を抑えてしゃがみこんでしまったのだ。
「パリーヌ君!?」
「すみません、ヒートンさん。なぜか急に頭が痛くなって・・・」
「体調を崩したのか?」
「いえ、体調は大丈夫なんですが・・・急に不快な気分になってそこから頭が痛くなってきたんです・・・」
「疲れているんじゃ・・・」
「大丈夫です。疲れてはいません。ただ緊張しすぎたのでしょう・・・ところで【ムオー】駅とはどんな駅でしょうか?」
雄太はフラッとしながらも立ち上がりヒートンに【ムオー】駅について質問したのである。
「大丈夫?」
「はい。」
「それなら良いけど・・・【ムオー】駅は今走行している【カーブル】線の他に【キーグルト】線の始発駅でもあるんだよ。」
「キーグルト?」
「ああ、【キーグルト】は【ムオー】から少し離れた集落でね、この電車がアクセス手段の一つなんだ。」
「(集落・・・)」
「しかしパリーヌ君はすごい地理に関して研究熱心だね!学者か何かになりたいの?」
「いえ、地理が詳しければある程度の知識になると思いますし。どこに何があるか分かれば旅にも出掛けやすくなりますしね。」
「おお、そこまで考えていたのか。勉強熱心だねえ!!」
「そうですね、あははは。(いやいや・・・情報集めをするから場所を覚えておかないといけないんだよね~!)」
表向きは勉強熱心で通すが本当は元の世界に帰って逃亡生活を早く終わらせたいために各地を巡って情報を集めるのが雄太の目的である。もちろん本当の目的をヒートンは知らない・・・はずである。しかしごまかす雄太の顔を見てヒートンの目が少し鋭くなっていたのを誰も気付くことはなかった。
「もう【ムオー】を越えたら【トランビュート】だよ。パリーヌ君の故郷だね。」
「はい!」
この日は【トランビュート】まで行き、そこで一旦休憩の段取りだがこの一旦が色々な波乱を呼ぶことを雄太はまだ知らない・・・
いよいよ終点を迎えたチャンス鉄道の旅。このあと雄太を待ち構えるものとは・・・!?




