スタジウスポートの危機
鉄道員として身を伏せる雄太は色々な景色を眺めていた。その一方で自分のニュースを読まなければいけないというストレスや雄太自身の生死が不明とされたりと色々な出来事に見舞われるのであった。
電車が港町【スタジウスポート】駅に到着するとこの駅で5分停車だという。
「パリーヌ君、少し深呼吸しな。リラックスしないと疲れがたまるだけだぞ。」
「はい。」
ヒートンに深呼吸するように言われた雄太は軽く深呼吸をして窓から見える海を眺めた。
「(本当に、綺麗な海・・・俺の今まで訪れた場所の中で一番綺麗な海だなぁ。)」
エメラルド色に輝く海は雄太の目を奪っていた。そして海を眺めながら雄太の目からは少しばかりだが涙が溢れていたのだ。それに気付いたヒートンは雄太に声を掛けた。
「パリーヌ君、どうしたの?」
「ヒートンさん、綺麗な海だから感動してしまいました。」
「そうだったのか・・・(本当か?)。」
「こんな綺麗な海で一度泳いでみたいですね・・・!」
「じゃあ来年泳ぎに行く?僕も最近泳いでないからせっかくだしどう?」
「(大丈夫、かな?)はい是非とも御一緒させてもらいます!」
会話中に突然ヒートンから海水浴に誘われた雄太は自分の正体がバレないか心配はあったが何とかなると判断したのかヒートンと一緒に海に行くことを決意したのであった。すると懐のポケットに入れていた【レンジカード】が少し光ったので雄太はそれを取り出した。
「(このカード、光るんだ。)何々?『重要ナ出会イ近ヅク』と。」
レンジカードに書かれていたのは重要な出会いが近付くというお知らせだったのだ。
「(誰と会うんだろ?)」
「どうしたの?パリーヌ君。」
「あ、すみません。ヒートンさん、こっちの事情です。あはははは!」
カードの予告を読み上げた雄太だったがヒートンが質問をするとすぐさま誤魔化したのである。
◆◆◆◆◆◆◆◆
ちょうどその頃、【スタジウスポート】駅の駅舎で雄太が乗った電車が着いた直後に待合室の椅子に座っていた軍服を着て背中に身長より長い剣を背負っていた男性が立ち上がったのである。
「よし、時間通りだな。」
まるで雄太が乗った電車が来るのを予測しているかのような反応の男性はホームへと向かう。
◆◆◆◆◆◆◆◆
そして出発の時刻を迎えて雄太は一人で車掌席にてスタンバイをしているとその男性が険しい表情をして雄太の元にやって来たのである。
「おい?」
「はい?どうされましたでしょうか。」
「貴様、あの市川だな。」
「あーっ!?違います!人違いです!あと電車がそろそろ出発しますので・・・」
「電車は一旦足止めだ。」
「?」
男性は雄太にそう言うとさっきまで運転席へと行っていたヒートンが血相を変えて雄太の元にやって来てはある報告をする。
「大変だパリーヌ君、隣の駅で爆発騒ぎがあってちょっとここから動けないよ!!待機だよ。」
「へ?」
「探していたぞ、市川。」
「あ~、だから人違いですって!!」
「市川?パリーヌ君だろ?どういうことだ?あの指名手配犯が近くにいるなんてそんなバカな!」
なんと電車は止まり、さらにはヒートンが雄太の元にやって来るという絶体絶命の危機!!
「(やばい!バレる!!死刑台行きだぁ~!!)」
もはや雄太に逃げ場はない・・・と思いきや。
「あ、人違いか。すまんすまん!」
なんと男性は表情を緩めて突然謝ってきたのである。
「え?」
「そうか、市川によく似ていたからここにいたのかと思ってしまって。」
「(あ~、良かった!)」
なぜ急に謝罪したのか・・・相手が誤魔化してくれたのか間違いだと気付いたのか雄太には分からない。しかし、そのおかげでバレずに済んだ雄太だったが額から少しの汗が流れてきたのである。それにヒートンが気付いたようで・・・
「あれ?パリーヌ君、どうしたの?汗なんかかいて。」
「いや、もし僕が市川ってやつに疑われたら殺されるかと思ってびびってしまいまして・・・!」
「大丈夫だよ!そんなことないよ。」
ヒートンはびびる雄太をなだめてから少し表情を変えて鋭い目で男性の方に視線を向けたのである。
「ところであなたはどちら様で。」
「ええ、はじめまして。私はこの世界の一番の剣豪を目指す【キニー・タルボット】と申します。ときにそこの若い者よ・・・」
「ん?僕ですか?」
キニーを名乗る男性は雄太の方を向いた。そして・・・
「私は君と同じ類いの者だ。君が仕事中でなければゆっくり話をしたかったが色々と忙しそうだな。また後日ゆっくりと杯を交わそうじゃないか。」
「(急に口調が変わった?)あなたはパリーヌ君の何でしょうか?」
雄太と杯を交わしたいと熱望するキニーにヒートンは雄太との関係を聞いたのである。
「そうか、パリーヌと名乗っているのか。」
「?」
「(あ・・・やばい。)」
キニーの登場により雄太の立場はかなり悪くなりつつあるように見えるがヒートンはキニーの言葉に深く首を突っ込まなかったどころかむしろ雄太とキニーとの関係の質問を続けたである。
「ところでパリーヌ君との関係は?」
「いや、今は伏せる。」
「パリーヌ君は彼のことを?」
「いや、知らないです。初めて会いましたから。」
「市川・・・いや・・・パリーヌ君、いずれ分かるさ!その消えた記憶と共に!」
「え!?消えた記憶?」
「伏せないで話をしてほしい。」
「それは次回のお楽しみだ、さらば!」
どうやら正体に気づいているのかキニーは雄太に意味深な言葉を投げてヒートンの質問をはぐらかしてそのまま駅から去っていったのである。そして雄太はキニーの去る姿を見てぼんやりしていた。
「何だったんた・・・今の?」
「パリーヌ君!」
「どうされましたでしょうか?」
「後で話があるから仕事が終われば僕の宿泊部屋に来てほしい。」
雄太はヒートンのその言葉を聞いて汗をたらしたのである。もし正直に白状すれば自分は終わる・・・そう悟っていたからだ。
「(ああ。やばい。)」
「顔色が悪いけどどうしたんだ?」
「いや、何でもないです。」
「そうか。それなら良いんだけど。もし疲れているなら【トランビュート】でゆっくり仮眠するんだよ。」
「は、はい。」
すると【スタジウスポート】駅駅長の【ダンテ・ピストリニウス】がヒートンの元にやって来たのである。
「やあ、ヒートン君。隣の若い彼は新人かね?」
「こんにちはダンテさん!はい、彼は【パリーヌ・トランビュート】君という新人の鉄道員です。」
「そうか、パリーヌ君よ。これからもよろしく頼むよ。」
「こちらこそよろしくお願いします!」
「それとヒートン君、隣の駅の爆発騒ぎは解決したからもうすぐしたら出発できると連絡があった。犯人は逃走中で指名手配書が出来たらまた渡すとのことだ。」
「分かりました!ありがとうございます!」
ダンテの報告を受けてヒートンと雄太は頭を下げると電車が出発しようとしていたのだ。すぐさま雄太はマイクを持って乗客に案内の放送を流した。
『長らくお待たせしました!【トランビュート】行き急行まもなく出発です!ご迷惑をおかけしまして申し訳ございませんでした!扉が閉まります、ご注意ください!』
放送を流す雄太の声はこれまでのストレスを物語るのか少し元気の無いものであった。
間一髪で第一の危機を免れた雄太だったがキニーの正体とは?そしてヒートンがしたい『話』とは・・・?まだまだ波乱は続く・・・!




