雄太とチャンス鉄道の旅①
シャッキーの計らいで【パリーヌ・トランビュート】の名でチャンス鉄道に勤務することになった雄太は初出勤を果たす。経験の長い面々に温かく出迎えられる一方で自身の本来の姿である【市川雄太】が凶悪犯罪者として世間の怒りを強く買っていることも知ってしまうが・・・
するとヒートンはまず雄太をカーブルにある『カーブル職業相談所』に連れてきたのである。
「ヒートンさん、ここは?」
「ああ!ここはカーブルの【職業相談所】で仕事探しの相談や仕事状況の報告などを行うところだよ。今日から働くパリーヌ君は初出勤だからその報告を。」
「(仕事のことを報告するんだ。)」
雄太は少し疑問に感じながら椅子に座ると奥から若い男性が現れたのである。
「はじめまして、僕は職業相談所の副所長の【ダイキチ・ペニー・ファストライナー】といいます。ヒートン君こんにちは。久しぶりだね。」
「こんにちは、ダイキチさん。パリーヌ君、彼はダイキチさんと言って職業相談所で所長の右腕を担う人物で次の所長候補の方。何かわからないことを聞いてもいいよ。」
「は、はい。はじめまして、僕は【パリーヌ・トランビュート】と申します。よ、よろしくお願いします!」
「こちらこそパリーヌ君!色々聞きたいことがあれば質問に答えるから聞いてね!」
ダイキチの言葉を聞いた雄太はすぐに右手を挙げて例の質問をしたのである。
「はい、パリーヌ君!」
「実は先程から気になっていたのですが職業に何期何年とかありますがあれは何でしょうか?」
「あ、君は職業のことについてまだ詳しくないんだね。教えるよ。就職をする手続きを行って欠員があればすぐにその職業の職業人名簿に名前が掲載されるんだ。そして掲載されればその日から一週間以内に初出勤をすることになる。そして初出勤の際にここに来て報告をしてから6年の任期がはじまる。」
「6年の任期?仕事に【参議院】みたいに6年も任期があるのでしょうか?」
「ん?サンギイン?まあよくわからないけどどの職業も6年の任期がある。その間は余程の事情とやらが無い限りは退職できないんだ。」
「(あ、しまった。俺の世界の固有名詞を出してしまった!)そ、そうだったのですか!?それは知らなかったなぁ~!」
「出勤経験が無い方で意外と知らない人は多いよ!それで6年が経過すると業務実績次第で更新試験を受けたり、そのまま更新される場合とあるんだ。」
「つまり6年の満期を終えたらどの仕事も一旦雇用契約は終わるのですね!?」
「そう!そこから【職業Gメン】なる方々・・・この方達も6年の任期があるけどその方達が一人一人の仕事ぶりを評価して採点してくれるんだ!」
「(え?privateも覗かれるの!?)」
雄太は自分の仕事どころかプライベートまで監視されるのかと思っていたがダイキチは詳しい説明を雄太にしたのであった。
「色々と覗かれるという不安があるかもしれないが大丈夫だよ。確かに時々なら様子を見に来るかもしれないけど全部は全部さすがに目に通さないしそもそも周りの評価が勤務姿勢を表すから周りからの印象が重要ということさ。」
「は・・・はい!」
「それで今日は《2017年10月17日》だから満期は《2023年10月16日》でこの6年間がパリーヌ君の第一期の任期だよ。」
「(え!?10月17日!?いや、ちょっと待て!俺がこの世界に来たのはたしか2月1日だ。もし俺の世界とこの世界の時間の流れが一緒ならおかしいぞ!こんな長いこと滞在した覚えはない!!)」
ダイキチから日付を教えてもらった雄太だがこの世界に来てすぐに警察に追われ、囚われた後に死刑台から脱出して無人島で生活したりもしているが半年以上も滞在した覚えがないようだ。たとえ気を失っていた時間が長かった(主に無人島漂流時やグリーンフィールド転落時等)としてもそれでも半年以上もの時間経過は不自然である。すると険しい表情をする雄太をヒートンが心配したのだ。
「パリーヌ君?どうしたの?大丈夫かい?」
「あ、すみません!大丈夫です。ダイキチさん、期間の方は分かりましたので頑張っていきます!」
新たな疑問を抱えてしまった雄太だがとにかく今は一応前よりは安心出来る環境で心機一転頑張る気持ちを見せた。ダイキチから就職したことを証明する【就職認定証】を受け取り認定証に自分の簡単なプロフィールや任期が書かれているのを確認すると鉄道員になった実感を噛みしめた。そしていつものカードを確認すると・・・
「(なになに?『トランビュート地方ニ秘密アリ』とは?あとこのカードのことはこれからは【レンジカード】と呼ぶことにしよう。)」
トランビュートにて何かあると書かれておりちょうどチャンス鉄道のエリア内のためか初出勤でもしかしたら何かが起きるかもしれないと雄太は感じたのである。
「(こりゃ楽しみだ!)」
「?」
「?」
「あ、いや何でもないです。すみません!」
ニヤニヤする雄太を見つめる二人の視線は変なものをみつめるかのようなものであり、それに気付いた雄太は好奇心を抑えたのであった。
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その頃、野球帽をかぶって防弾チョッキを装着したある男性がカーブルの町の中を大型の銃を持ちながらウロウロしていた。
「(ここに市川雄太とかいう大型賞金首がいると聞いた。どこだぁ!?1200Cがあれば生活は良くなるしそもそもやつには憎しみがある。だから必ず俺の手で・・・!!)」
やはりだが雄太を狙う輩は存在していたのであった。しかし賞金稼ぎは彼以外に見ないのは雄太の存在に関心がないのか他の高額賞金首達に目が行っているのか?
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一方、職業相談所を出た雄太とヒートンは駅の方へと向かう。その前に相談所の外に出て手を振るダイキチに二人は頭を下げた。
「ダイキチさん、ありがとうございました!」
「二人とも頑張って!」
「はい!頑張ります!さあ、パリーヌ君!いよいよ業務だよ。」
「はい!」
そして【チャンス鉄道・カーブル駅】に到着すると雄太はちょうどホームに停車していた電車を見つめ始めたのだ。電車はリニアモーターカー型の車両で赤色のラインがカッコよさを引き立てる。
「これが!僕の乗る電車っ!!」
「そうだ!今日からパリーヌ君と6年間を共にする電車だよ。今日はこれから君のルーツのある【トランビュート】へと行く急行列車の車掌を務めてもらうよ!」
「(本当のルーツは・・・)」
「どうしたのかな?」
「いや、何でもないです!トランビュートに着いたらどうしようかなと思って・・・(笑)。」
「そうだった。トランビュートに着いたら五時間の休憩時間を設けているから町を歩くなり周囲を見に行くとか自由だからね。」
「(わ、これは進展!!)ありがとうございます!」
「え!?」
短時間だけとはいえ旅に行けると聞いて雄太はヒートンになぜか感謝をしたのである。そして【トランビュート行き急行列車】の後ろの車両に乗って旅が始まるのだ。だが雄太は車掌席にある何か書かれた紙を見つめて呟く。
「(これを読まないといけないのか・・・)」
その時の雄太の表情は何かに抵抗するかのように渋っている表情であった。
「ん?体調悪いのか?」
「いえ、大丈夫です!」
「しんどかったらいつでも声をかけてくれ。停車駅は13駅あるから鉄道旅を楽しんでいこうな。」
「は、はい!」
いよいよ雄太の鉄道旅(と元の世界に帰るための旅)の幕が開いた。
いよいよチャンス鉄道に乗って【トランビュート】へと向かうことになった雄太。しかし何か不安を抱えているようであった。そしてヒートンと共に鉄道(と異世界から帰るための)旅に出発するのだ。




