見知らぬ世界の冒険
“ブォーーーーーン!!”
2017年2月1日昼、大阪のとある町。ミニバイクで走行している男性がいた。彼の名前は市川雄太といい、ごく普通の男性である。彼は何かがずば抜けているわけでもなく、これまでにすごい経験をしたこともなく普通の人生を送っていた。この日も何事もなく普通の生活を過ごしている彼であったがバイクで走行しながら何か考え事をしているような表情をしていたのである。
「(この前の“あれ”、何だったんだろ?)」
それは新年が明けたばかりの1月5日の朝に用事で出掛けていた奈良県内の駅での出来事のことであった。このとき雄太は電車内で居眠りしてしまい、降りる駅を乗り過ごしてしまったのだ。そのため目的の駅に戻るために乗り換えをしようと駅内を移動していた時である。
“ポトッ!”
「ん?何だこりゃ?」
雄太の頭の上に落ちてきたのはテレホンカードのようなものであった。そのカードを見るとサインペンのようなもので意味不明なことが書かれていたのである。
『現実カラノ離脱』
「は?『現実カラノ離脱』?アハハハハハハハ!!誰だよこんなイタズラみたいなことを書いたカードは!!」
雄太は笑いながらそのカードを切符販売機の横の使いきった定期券のカードを入れるところに置いて何事もなかったかのように帰ってきたのであった。そして家で軽く昼寝をして目を覚ますと枕の横に先程のカードがおかれていたのである。
「ふぉぉぉっ!!何でっ!?」
雄太は当然驚いた。奈良県の駅に置いてきたはずのカードが自分の横にあったからだ。夢なのかと思い、自身の右ほほを右手で強くつねると・・・
「痛っ!!?」
あまりにも強くつねったからか激痛が走る。どうなっているのか分からず苦笑いしつつも顔が青くなる雄太であった。
「こりゃ・・・夢だよな・・・でも痛かったからそうでもないよな・・・・・・」
雄太はこの異変にさすがに焦りはしたものの別の形で捉えていたようであった。
「(まあ、俺の人生はおかしなことだらけだからこういうことが起きてもあながちおかしくない・・・!!)」
雄太はこれまで暗い生い立ちと暗い人生を送っていた。それを考えれば不思議現象など大したことではないように考えていたようだ。だがこのカードの件を皮切りに不思議を越えた不気味な現象が起きていたのであった。
1月7日夜、自宅に帰ってきた雄太はポストを開けたのである。すると差出人の書かれていない封筒が届いていたのでそれを開けると・・・
『君の世界が変わる。さあ生まれ変わった君がいよいよ動き出すときが来た!!・・・レンジ』
「(“レンジ”って誰だ?)」
雄太はこの意味不明な手紙の入っていた封筒に自分の枕の横に置いてあったカードを入れてそれを別の部屋のタンスの上に置いたのであった。それからは何も雄太の身に異変は起きず、彼は普通の生活を送っていたが1月31日の夜に雄太が眠りにつくとその封筒と中のカードが光り出したのであった。
翌朝、バイクに乗って走行中に踏切を渡ろうとしていた雄太は変な声を聞いたのである。
『踏切を・・・渡りなさい・・・今日からそこがあなたの世界・・・』
意味が分からない内容のものだが雄太は気にせず踏切を渡ったのであった。しかし踏切を渡るといつもの景色のはずなのに何故か雄太は違和感を感じずには居られなかったのである。
「(ん?いつもの雰囲気じゃない・・・)」
そして後ろを振り向くと踏切はなくなっていたのである。それよりも景色も駅・踏切周辺のものではない。
「あれ、これは一体・・・どうなっているんだろ・・・線路も駅も踏切も無くなっている。これはとんでも事態だぜ!!」
少し顔が焦り始めていた雄太はバイクを再び動かそうとすると・・・なんと動かないのであった。
「やばい・・・!!動かない・・・!!!何でだよ!!動いてくれよっ!!!」
雄太は両手のてのひらでバイクを叩くも一向に動く気配はなかった。おそらくこの世界の環境では雄太の世界のバイクは走らせられないのだろう。つまりバイクが動けない今、この異変の中から逃げることが出来ないのだ。焦る雄太だったが背中から変な違和感を感じ取ったので振り返ると警察官の男性がいたのである。
「あ、お巡りさん!!聞いてください、僕は変な世界にやって来たんです!!そうしたらバイクが動かなくなりまして・・・助けてください!!」
事情を説明しようとしてテンパる雄太だが、男性は雄太に向けて銃を構えたのである。
「君・・・不審な人物だな。さあ、この場所で観念するんだな。」
「違いますよっ!!お巡りさん!!僕はいつの間にかここにいたんですよ!!」
「は?いつの間にか?あまり大人をなめないでいただきたいな。まあここで君を処分するからどうでもいいことだがな。」
「うわあ・・・助けてください・・・!!」
絶対絶命の危機にさらされた雄太・・・一体彼の運命はどうなるのか?
(続く)