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ブラックバイトの楽しみ方  作者: ぎるばあと
7/15

7話

「買い取り額は3000ゼニーです」

 

 昨日の塔で手に入れた魔石を売却する。

 1~10階はうりゅふがメインの魔物だった。

 色違いの「うりゅふん」やちょっとレアな「ゴールデンうりゅふ」等、危険がないよう集団相手は避けていたが、そこそこの魔物を倒していたので、それなりに魔石は手に入れていたのだった。

 それにしても1日で3000ゼニーか。

 日本円にして約30万円。

 塔ぼろ儲けじゃないか。

 そう考えるとついつい顔がほころび、自然とにやけてしまうエイジだった。

 とりあえず武器屋で装備を新調するか。


「一番いいのを頼む」

 

 3000ゼニーをカウンターに置き、エイジは武器屋のおやじにそう告げた。

 おやじが「掘り出しもんだ」そういってカウンターの奥から取り出したのは、

鞘におさまった武骨な刀だった。

 それを手に取ったエイジは、ためらわずそれを購入した。

 そして鞘から刀を抜こうとしたが、抜けなかった。

 おやじいわく返品不可らしい。

 まあいいか。

 鞘から抜けない武器。

 普通に考えれば粗大ゴミだ。

 

 しかしエイジはこの刀を手に取った瞬間、微量の魔力を感じ取った。

 マジックアイテムは稀有な存在である。

 そして魔力の感じられる物体は、それだけで価値がある可能性が高いことを、

エイジは知識としてもっていた。

 何らかの条件を満たしたら鞘から抜けるだろう。

 もしかしたら伝説の武器かもしれない。

 そんな淡い期待を持ち、エイジはその武骨な刀を購入したのだった。




 さてここで、英志の過去について少し触れておこう。


 二年前、ある少女によって絶望の森の谷へと突き落とされた英志。

 己の不幸を呪いながら死を覚悟した彼を救ったのは一人の老魔法使いだった。

 風の魔法を身にまとい、空中を自在に動き回る能力を使い、落下中の英志を救ったのである。

 助けられたことに加え、元いた世界ではありえない魔法という存在に魅せられた英志は、日本の伝統芸であるドゲザを駆使して、弟子をとることを渋る老魔法使いの弟子となる。


 純粋な英志は師の教えをスポンジのように吸収し、元々素養もあったのだろう、この世界でもありえないぐらいの速度で魔法を習得したのであった。

 その覚えの良さに最初は渋々教えていた老魔法使いの態度も豹変し、積極的に指導をするようになった。

 調子にのって小さな街を一人で滅ぼせるほど強力な「災害級」と呼ばれる魔法まで教えてしまうほどに。

 そして二年で免許皆伝、数々のマジックアイテムを師から譲り受け、学び舎である絶望の森を巣立ったのであった。

 ちなみに言語も習得し、武宮英志という表記がこの世界ではミスマッチであったため、通称はエイジということで日々を過ごしている。


 英志はけして元の世界が恋しくないわけではない。

 実家に残してきた妹を思い心が痛む日々もあったが、それよりは未知の魔法という存在への好奇心が強かった。

 そして魔法をある程度修めた今、元の世界へ帰る方法を探すための旅にでたのだった。

 今いる世界であるワンダーランドに存在する四つの塔。

 その各頂上に存在する四つの玉を集めるとどんな願いでも叶う、もしかしたらそれで戻れるかもしれない、という情報を師から得た英志は、塔の一つがあるドライ国へと赴き、冒険者となり現在に至るのであった。




「さて、どうするかな」

 

 ここはルイージの酒場。

 ドライ国にある公共の施設の一つで表向きは普通の酒場であるが、冒険者がパーティーのメンバーを求めて集まることでも知られている。

 エイジのように個人で相当な実力をもつものはそれほど多くない。

 大抵の冒険者はリスク軽減のため4~5人のパーティーを組んでいる。

 そして欠員や補充の際、このルイージの酒場の掲示板に貼り紙をしたり、直接交渉するなどして、挑戦する依頼に相応のパーティーを結成していくのである。


「塔への募集パーティーは厳しいか」

 

 そう、エイジがここを訪れた目的は塔攻略のパーティーメンバー探しをするためであった。

 先の攻略で10階程度はソロでも余裕で攻略ができることはわかった。

 ただエイジの目標は未踏の頂上制覇であり、不測の事態へのリスク軽減のためにもパーティーの重要性を感じ取ったのである。

 何よりいつまでも不法侵入はまずいしな。

 そう考えながらエイジは目の前の貼り紙を見返す。

 そこには


「塔攻略メンバー募集中。求む、Dランク以上の~」

 

 と書かれていた。

 他にも塔攻略メンバー募集は大量に貼ってある。

 だがFランク冒険者を入れてくれそうな募集は存在しなかった。

 仕方ない、しばらくソロで地道に攻略するか―――そう考えて立ち去ろうとした時


「塔に挑戦するのデスか?」


 そう背後から声をかけられた。

 振り向くとそこには―――誰もいなかった。


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