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ブラックバイトの楽しみ方  作者: ぎるばあと
3/15

3話

 つんつん

 つんつん


「ん・・・?」

 

 英志は体に痛みを感じて眠りから覚める。

 もう検査終了かな?そう思って目を開けると英志の目の前には白い馬がいた。

 

 ただの馬ではない。

 頭に人間を軽く串刺しにできそうな大きな一本の角が生えている。

 英志は凍り付いた。

 動いたら殺られる。

 ここはどこだ?この生物は?まだ夢を見ているのか?

 いくつかの疑問が生まれては消え、冷静に現状を把握することができない。

 目の前の白い馬もつつくのをやめ、つぶらな瞳でまっすぐに英志の目を見つめてくる。

 英志も目をそらしたらそこで試合終了……と、ひたすら相手の目を見つめ返している。

 どれくらいの時間がたっただろう。

 興味を失ったらしい馬?が翻り、その場から走り去っていった。


「勝った・・・」

 

 死地?を脱した英志は誰彼ともなくそうつぶやき、安堵の表情を浮かべるのであった。


 ただ現状は依然として厳しい。

 落ち着いて周囲を見渡すと一面木、木、木、といわゆる森の中である。

 先ほどまで英志が横たわっていた近代的な設備は欠片も見当たらない。

 とりあえず立ち上がり自分の体に異常がないか確かめる。

 服装は家を出た時と全く同じ。

 Tシャツにジーバン、スニーカー。

 その他に変わった点はない。

 しかし見知らぬ森に一人という不安は半端ない。

 とりあえず人がいる街を探そう。

 そう決断した英志は北とも南ともわからない方向へと歩き出した。


 しばらく歩くとログハウスを発見出来た。

 人の存在を確信した英志は叫ぶ。

 誰かいませんか、と。

 返事はない、ただのログハウスのようだ。


 いつまでたっても返事は返ってこない。

 自分を知る人のいない場所で人は大胆になれるもの。

 不法侵入という罪悪感もそれほどなく、

 英志は家の中へと踏み入ったのであった。


 そして絶望する。

 埃が占領し、生活感の失われた室内に。

 だがそこはポジティブな英志。

 ここは誰も使用していない、つまりしばらくはこっそり使用しても大丈夫なはず。

 どこかのガキ大将も真っ青な理論で、

 英志はここを生活の拠点とすることを決めた。


 部屋の掃除をしながら今後の生活のことを考える。

 あとは水と食料があれば当座はしのげるか。

 幸い清掃中に、樽に詰まった水、干し肉などの保存食らしきものを発見する。

 キッチンらしき場所にはかまどと鍋があった。

 水は沸騰させれば大丈夫だろう。

 肉は何の肉かわからないが、最悪熱を通せばなんとかなるだろう。


 見知らぬ土地での不安。

 一日中森の中をさまよった体力の消耗。

 なんとか生きていけそうな安堵感。

 これからの生活への希望。


 さまざまな感情に包まれながら、埃っぽいベッドに横たわった英志はすぐさま眠りへと落ちていくのだった。



 二日目

 

 とりあえず英志はのどを潤そうと水をわかす。

 と、火種がないことに気付いた。

 火をつける道具らしきものが見当たらない。

 水は生きる上での生命線。

 蓄えてある水がなくなれば死んでしまう。

 食料もあるとはいえ、得体が知れないし量も多くはない。

 そして英志は水と食料を求め、川を探す旅へと出ることを決意した。


 ログハウスにあった竹のような筒に水を入れ、藁のような植物に干し肉を包み、それらを腰につける袋へ入れ、防寒用に壁にかけてあったフードのついたマントを羽織る。

 そしてログハウス裏の地面が盛り上がったところに何かを封じ込めるように刺さっていた棒を抜き取り、それを護身用に手に持って英志はログハウスを後にした。


 慎重な英志はあてもなく歩くわけではない。

 部屋を清掃中に地図らしきものを見つけたのだ。

 字は読めなかった。

 ただ川っぽい絵が描かれていたので、英志はそれを頼りに森を進んでいく。

 そしてそこで、英志は運命の出会いを果たす。

 自分はこのために生まれてきたのだと、

 否が応でも思わざるを得ない出会いに。


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