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第3話 精神科医の診察

 カッちゃんと会った二日後、私は精神科医の先生と話していた。

 この一年ほどで、急に物忘れがひどくなったような気がする。そこで物忘れ外来を訪れたところ、精神科を受診するように勧められたのだ。

 日当たりの良い診察室で、穏やかな微笑を絶やさない初老の先生と少し雑談をした後、カウンセリングを受けた。

「では、そのイヤリングについて質問させてください」

「はい」

「それは本当に、彼氏からプレゼントされたものですか?」

「?」

 何を言われているのか理解できなかった。

「どういう意味ですか?」

「そのイヤリングは、自分で買って、自分に贈ったもの、ということはありませんか?」

 私はムッとした。

「そんなことするわけないじゃないですか。ちゃんとプレゼント包装もされていました」

「そうですか。わかりました。では、もう一つ質問させてください。この一年間に、彼氏があなたのつくった料理を食べてくれたことは何回くらいありますか?」

 私はこの一年間を振り返ってみた。カッちゃんが私の料理を食べてくれたことは……思い出せない。

 いや、思い出せないのではない。

 一回もないのだ。

 でも、それはカッちゃんが何かに没頭し始めると、食事も忘れてしまう人だからで……。

「わかりました。けっこうです」

 私の困惑を察したのか、先生は穏やかな声で質問を打ち切った。

「最後に一つ、宿題です。おうちに帰ったら、もう一度、そのイヤリングを誰が買ったのか調べてみてください。できればでけっこうですから」


   ***


 私の習慣で、プレゼントをもらった箱も包装紙もすべて保管してある。

 外箱に貼られた送付状を見ると、送り主は、私がよく利用するショッピングサイトになっていた。

 そのサイトの購入履歴を確認してみて、私は、あれ? と思った。

 そのイヤリングを私が買ったことになっている。購入日時を見ると、紗英から千佳の誕生日会に誘われていた頃だ。

 どういうことだろう?

 カッちゃんは時々、私のパソコンを使う。私のログイン・パスワードを解読することくらい、カッちゃんならできるかも知れない。私のIDでログインして、私の検索履歴にあるものを買ってくれたのだろうか。

 でも、その代金は私の口座から引き落とされたはずで、それはもうプレゼントではない。

 私はまた少し、カッちゃんから愛されている自信がなくなった。

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