プロローグ
春。冬が終わり暖かくなってきた。
服の調節に迷う季節。
終わりと始まりがずれてやってくる。
希望が終わり絶望がやってくる。
プロローグ
「拓人!早くしろよ、電車出るぞ!」
そんなのはわかってる。「待ってくれよ!」湯水の如く出てくる人たちにぶつかりながら半ば強引に間に合った。
「ふーっ。セーフ。」僕は息を切らしながら言う。
「お前寝坊とか、受験終わってから生活緩みすぎ。」
「はぁ?そうかー?こんなもんだろみんな」
「そうかもな」そう彼は呟いてながらかな沈黙が続いた。電車の中は人でいっぱいだ。持たずとも拓人の背中のスポーツタイプの小柄なリュックが浮いている。
黙ったのは人のせいじゃない。やっぱり1人で行くべきだった。そう少し、後悔しながらカバンからやっとの事でイヤホンを取り出す。聞くのはもちろん近藤晃央の曲。受験勉強の時は封印してたが終わってから禁断症状みたいなんで、ずっと聴いてる。
歌詞がいいんだよなぁ。
「音楽とかお前余裕だな。俺なんかどうなんのか冷や冷やどきどきで落ち着かないのに」苦笑いして彼が俺のイヤホンを取る。
「なんだよまたこれかよ!」とイヤホンを押し付けて返してくる。「ちょっとは趣味変わったと思ってたけど、まんまだな」
彼は僕の尊敬するうちの一人だ。何時だって周りを見て空気が読める。今だって気まずい感じが少し楽になった気がした。
「お前にはわかんねぇのかよ。近藤様よ良さが。この神々しい歌詞のフレーズが届かないなんて、残念だねぇー。人生損してるよ。」とても皮肉っぽく冗談ででも半分本気で返す。
「はいはい。合格確定組はいいですねぇー」彼も皮肉に返してきた。駅に着いた。
僕らは高校に向かって歩き出す。