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106

†††106

城門の前ではホルトゥンとグルップリーが馬に乗って待っていた。二人は門番の兵に気づかれないようにひそひそと相談を始めた。

「おい」

「なんだい?」

「返事が遅いぞ。バレたんじゃないのか?」

「そうだね・・・・・・。あの子もそろそろ気づくかもって言ってたからねぇ。僕が敵だっていうことに感づ いたのかもしれないね」

「バレていたらどうするんだ?」

「僕がいると知れば連中は決して門を開けないね。それから・・・・・・『盾』も使ってくるだろうね」

「『盾』?」

「『盾』っていうのは・・・・・・。そうだなあ。ヒマだから『盾』に関する昔話でもしようか?」

「そうだな・・・・・・。じゃあ頼む」

「・・・・・・昔すっごく才能のあった旅の魔法使いがいたんだよ。彼は通りがかりに東の国のある村に立ち寄ったんだ。でもどうにも村人は景気のいい顔じゃなかった」

「その理由は?」

「その村の近くに大きな山があるんだけど・・・・・・そこには昔から大きな竜が一匹棲んでいたんだ。まあ、村の守り神みたいな存在だった」

「竜?あの?」

「そう、竜。・・ ・・・・で、最近竜が暴れて村人は困り果てている、ということを知ったんだ」

「へー」

「それで旅の魔法使いは竜に会いに山へ向かうんだ」

「なぜ?村人に頼まれたのか?」

「確かに頼まれたけれど、多分ただの好奇心じゃないかな。そういう人なんだよ」

「ふーん」

「で、山頂で彼は竜に出くわした。侵入者を見た竜は今にも口から火を噴き出さんとしていた!」

「おお!」

「彼は持っていた杖を振りかざすと竜の炎を遮り、目くらましの光を放ち、問いかけた。『私はお前に会いに来ただけだ。お前はなぜ私を襲うのだ』」

「ふんふん」

「それに対して竜は何も答えなかった。ただ声のした方にまた炎を吐いただけだった」

「ひどいなぁ」

「村人から竜は 賢いと聞いていた魔法使いはこれはおかしい、と思った。賢いはずの竜が問いかけにも答えないはずがない。それで彼はピンときた」

「・・・・・・?」

「彼はもう一度杖を振りかざし、竜を縛り上げた。そして鞄の中から小瓶を取り出すと、その中身を縛った竜の口に流し込んだ」

「うわー」

「すると竜の口からねばついた黒い血の塊みたいなものが大量にあふれだした。竜はそのまましばらくの間、血を吐き出し続けた」

「えー・・・・・・」

「竜が血を吐き終えると、魔法使いは言った。『さあ、お前にかかっていた呪いは解いたぞ。これでもまだ私を襲うか?』」

「ふーん」

「竜は問いかけに答えた。『馬鹿なことを申されるな。貴殿のおかげで儂は己を取り戻す ことができた。誠に感謝している』」

「へー」

「竜は続けた。『呪いにかかっていたとはいえ、村の者には迷惑をかけた。儂はこの山を去る。ついては、儂の鱗を十二枚剥ぎ取ってくれんか。それを村の周囲に埋めてくれ。それで儂の加護を得られる』」

「鱗・・・・・・?」

「気づいたか?この竜の鱗が『盾』だ。この後、魔法使いは竜から鱗を剥ぎ取り、竜が飛び去っていくのを見届けた後、下山するんだ。それで、村人にことの次第を告げた」

「待ってくれ。鱗はどうなった?」

「山の上に置いてきた。とても十二枚は運べないからね。大きいし重いから」

「へー。で、それを聞いた村人の反応は?」

「芳しくなかった。全てを知った村人たちは竜が去ったこと を知って喜んだ」

「え?喜んだのか?」

「そう。彼らは竜を崇めてはいたがその有り難みをよく理解していなかった。むしろ、毎年の捧げものをする必要がなくなって喜んだ。そして、魔法使いが懇切丁寧に十二枚の鱗の使い方を教えたにも関わらず、彼が再び旅に出た後、鱗を全て売り払った。竜の鱗の珍しさに目がくらんだんだな。村は数年の後、戦でなくなった。魔法使いは旅先の露天で見かけた竜の鱗を見て事の顛末を知ったという・・・・・・」

「なるほどな。その竜の鱗が巡り巡って・・・・・・」

「ここにあるってワケだ」

グルップリーは目の前の城門を見て、はーっ、とため息をついた。



†††

次回更新は4月8日です!お楽しみに!

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