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ホルトゥンは『幻影』を使用していなかった。グルップリーは敵とは言っても、数日の間一緒に旅をした仲だということがあって、信頼していたからだ。


「こやつは東の国の宮廷魔法使いです」

「なにっ!?」

「・・・・・・」


グルップリーの言葉に大将は驚いたが、ホルトゥンはただ黙っているだけだった。

驚いて未だ声の出ない大将の前にグルップリーが進み出る。


「大将、奴の魔法は危険です。奴と戦うのではなく、説き伏せて王の臣下とするのがよいかと」

「む・・・・・・。なるほど、心得た」


大将はしばらく豊かな髭を撫でて考えていたが、すぐにグルップリーの進言を聞き入れ、ホルトゥンの正面に立った。


「そなた、名は何という?」

「ホルトゥンと言う」

「ホルトゥンよ、西の国の臣下となれ。待遇は保証しよう」

「あんたたちにくだるつもりはない」

「降るのではない。仕えるのだ、我らが王に」

「同じことだ。裏切ることに代わりはない」

「何が望みなのだ?言ってみるがよい?」

「あんたたちに叶えられる望みなど、無い」

「ふむ、そうか。では、具体的に挙げていくとしよう。気に入るものがあるかもしれないからな。有り余るほどの金はどうだ?生涯、衣食住に困らない生活も約束するぞ?」

「要らない」

「この国の官職をやろう。つまりは、権力だ。欲しかろう?」

「欲しくない」

「では・・・・・・、王に頼んでお前に城と領地を、」

「くどい。例えあんたが金銀財宝を約束しようが、権力を与えようが、領土を分け、国をよこそうが、私の心は揺るがない。私は決してあの子を裏切らない。私の望みは・・・・・・、」

「・・・・・・おい!だれか、」

「《幻影ファントム》」


ホルトゥンの決意を見た大将はホルトゥンの言を待つことなく、大声をあげて、衛兵を呼ぼうとした。

しかし、そんな大将、さらにグルップリーに対してホルトゥンは先手を打った。

グルップリーと大将に『幻影』で「海で溺れる幻覚」を見せたのだ。

実際に溺れることはないが、少なくとも数秒間は沈黙させられることをホルトゥンは知っていた。

ホルトゥンは懐から小さな布切れを取り出し、大将とグルップリーの口に無理矢理突っ込んだ。これでもう声を出すことはできない。

ついでにグルップリーを無力化するために三重の『幻影』で別々に視界を回転させた。

要はタ●ムショックのアレみたいな感じだ。アレの三倍だと思えばいい。

これでグルップリーは完全に「今どちらを向いているか」を見失った。つまりはグルップリーにホルトゥンを攻撃することはできなくなったのだ。


「・・・・・・」

「ふー、ふーっ・・・・・・!」

「・・・・・・」


ホルトゥンは黙ったまま無表情で目の前の二人を眺めた。二人とも大回転のせいで床に手をついて四つん這いになっていた。

大将はほとんど床に倒れ込みそうになりながらも怒気を含んだ荒い息を吐き、血走った目でホルトゥンを睨んでいた。

グルップリーはただ静かな目でホルトゥンを見ていた。

ホルトゥンは『幻影』で剣を大将の首に突きつけ、二三の言葉を囁いて縄で拘束することに成功した。

グルップリーはただ黙ってそれを見ていた。


大将の拘束が終わった頃にグルップリーは完全に回復し、猿ぐつわを自らの手で取った。


「・・・・・・やはりこうなったか」

「グルップリー、君も物好きな奴だ。こうなると知っててやるんだからな」

「私は西の臣下だ・・・・・・。このくらいはやっておかないと示しがつかない。それにこれは君のせいでもある」

「僕の?」

「ああ。常に私に『幻影』をかけておかないからこうなる」

「ったく・・・・・・。これからは素直に手伝ってくれよ?さもないと、『幻影』で君は裏切り者だ、ってここの連中に吹き込むからな」

「よく言うぜ。もうここは私の帰れる場所じゃない。私は現に裏切ったんだからな」

「そうかい。じゃあ、さっさと仕事を片づけますか」

「ああ」


†††

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