35.0,36.0
†††35.0
「よし、逃げるぞ。支度しろお前ら!」
「ど、どうして逃げるんですかい、お頭」
部下の一人が質問する。
「考えて見ろ。こうやって金が手には入ったってことはさっきの男の言葉が本当だってこった。ということはじきに西の国とこの国の戦争が始まる。こんなおっかねえ国に長居するこたあねえ。わかったらさっさと準備しろ、お前たち!」
おー、と盗賊たちが一致団結の雄叫びを上げ、少年がどーしよっかなー、と心の中で頭をぽりぽりとかいていたそのとき、誰かが背後から少年の肩をちょんちょん、とつついた。
「助けに来たよ」
そう言ったのは『旦那様』を送った三人の盗賊の部下の一人だった。
†††36.0
訳がわからずに目を真ん丸くする少年にその男は笑いかける。
「僕は宮廷お抱えの魔法使いだよ。君を助けに来たんだ」
少年は頭の中が真っ白になってしまった。
思うことはただ一つ、『この男を信じてもいいのか?』、だった。
「一つ、いいかな?」
少年はようやく一言を絞り出した。
いいよ、と自称魔法使いが言う。
「証拠は、ある?」
自称魔法使いはきょとん、としてしばらく少年の真剣な目を見、いきなり笑いだした。
「あははは、・・・・・・ごめんごめん。子供が言うセリフとは思えなくてね。・・・・・・ちょっと待ってよ」
そう言って自称魔法使いは持っていた鞄の中に手を入れて中を探り始めた。
そのときである。
「お前!何をしている!」
お頭の声だった。
†††