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関所の前の平野で一晩を過ごしてもアヴィンの関になんらの変化は見られなかった。
「将軍、どういたしましょう?」
「うむ・・・・・・」
補佐の問いかけにヒゲはうなるばかり。
敵軍の影も形も見当たらないのが逆に不気味なのだ。そしてその判断はおそらく正しい。
とはいえ、このままじっと軍を動かさずにいるわけにもいかないのだ。
「ひ・・・・・・。将軍。もう一度偵察を送ってみては?」
「そうだな・・・・・・」
私の提案にヒゲは腑に落ちないと言いたげな声色で言った。
結局、山中に敵軍はいなかった。
「将軍、軍を進めるべきでは・・・・・・?このままでは兵糧を無駄にするだけです」
「・・・・・・いや、軍を三つに分割しよう。それで順に関所を通せばよい。罠であれば残りの二軍が駆けつければよい。前軍はキヤリー、中軍は私、後軍はグルップリーが指揮する」
ヒゲにしては良い案を思いつく。
ヒゲの評価を改めた方が良さそうだ。
ちなみに前軍の指揮を執るキャリーとは補佐官のことだ。
かくして我々は正午に前、中、後の三軍に分かれ、関所及びそれに連なる山間の細い道へと進軍することとなった。
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