53.0 ,54.0
†††53.0
「・・・・・・魔法陣に傷を付けたのはお前だね?」
魔女は呼ばれてドアの陰から部屋に入ってきたアリスにそう言いました。
「い、いえ、あの・・・・・・」
「どっちなんだい?」
魔女は言いよどむアリスにきつい口調で言いました。
「あ、あの、さっき掃除をしたときにつけてしまったのかも・・・・・・」
「そうかい、わかったよ」
魔女はアリスの告白に淡々とそう言うと右腕を振りました。
†††54.0
「・・・・・・全くしょうがない子だったよ」
魔女は腕を振り終えるともう薬品の片づけを始めてしまいました。
しかし、少女はその場に棒立ちになったまま動けません。
「あんたは部屋にお帰り。もう用はないよ」
魔女は突っ立ったままの少女に作業を続けながら冷たく言います。
「も、もどして・・・・・・」
本人もわからないうちに少女の口から言葉が漏れ出ていました。
「何?」
魔女は少女に向き直り、氷のような目で少女をにらみました。
「アリスを元に戻して・・・・・・」
少女は震えながらほんの少し前まではアリスだったそれを指さしました。
それはとても小さくて弱々しい一匹の青いカエルでした。
††††††
「・・・・・・それでそなたは北の海の魔女を捜しているとな?」
「はい、王様」
王様はあごに手をやり、豊かなひげをいじりながら何かを考えているようです。
「王様、どうでしょうか。この者を助けてやっては」
臣下の一人、少年に助けられた男が助け船を出します。
少年は王様の前で立て膝をついたまま頭を下げています。
「助けてやってもよい」
少年はぱあっと顔中を笑みでいっぱいにし、思わず頭を上げてしまいました。
これ、と脇に立つ臣下に注意されます。
よいよい、と王様がなだめます。
しかし、少年たちを取り巻く臣下達は渋い顔をしていました。
なにも少年に害意があったわけではありません。むしろ逆でした。
「だが条件がある」
この王様の一言を予期していたのです。
†††