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おさらい
①盗賊に化けて洞窟に侵入。
②少年を認識させなくする。
③洞窟から出ていった盗賊たちを丘の上で柵と兵士を出現させて捕縛。
④そのまま連行。
というのがホルトゥンの一連の魔法でした。
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「僕の魔法は『幻影』。詳しくは言えないけど幻影を見せる魔法だよ」
少年の開いた口がふさがりません。
「じゃ、じゃあ、さっきまでいた兵士は?」
「幻影」
「丘の上に現れた柵、盗賊の腰から消えた武器、盗賊の手を縛っていた縄は?」
「それも全部幻影だよ」
盗賊たちはそれを聞いて呆然としていました。当然でしょう、自分たちは本当は何も拘束などされていなくて、その気になれば逃げられた、ということなのですから。
「・・・・・・まあ、僕の幻影を破れるのは凄腕の魔法使いくらいなもんだよ。君たちに破れたはずもない。落ち込むことはないさ」
魔法使いはそう言って監獄を後にしました。
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少年も監獄の外に出るとホルトゥンが待っていました。
「君はこれからどうするの?」
「あの男の人に会いたいんだけど・・・・・・」
「馬車ごと崖から落ちたって言うあの男かい?」
「そう」
少年はあの男に会って話をしたいと思っていました。
「わかった。君を彼のところまで案内して僕は帰るとしよう」
少年と魔法使いは城下町を通って男の所へ向かいました。少年にとっては初めての町だったので、どうしても目移りしてしまいます。
「気になる?」
ホルトゥンはそんな少年の様子に気づいて聞きました。
「うん。こんな町初めてだから」
「来て良かった?」
「・・・・・・どうかな」
少年は少し考え込みました。
「僕はさらわれた妹を捜して旅をしてるんだ。だからそんなことが無ければ旅に出ることもなかった。町に来ること自体はいいんだけど・・・・・・」
「妹がさらわれるのはごめん?」
「そう。当たり前だけど」
「そうか・・・・・・」
ホルトゥンは遠くを見やりました。
しばらく歩くと屋敷ばかり建ち並ぶ区域にやってきました。
「ほら、着いたよ。この家だ」
ホルトゥンは立ち並ぶ屋敷の一つの前で立ち止まりました。他の屋敷に比べても大きい屋敷でした。
「え、ここなの・・・・・・?」
「そうだよ。・・・・・・この子がさっき言った子供だ。客として丁重にもてなした方がいいぞ」
ホルトゥンはその屋敷の門番にそう言って少年の背を押しました。
「じゃあ、僕は仕事があるからこれで。また会おう」
ホルトゥンはくるりと少年に背を向けて立ち去りました。