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1.0~9.0

†††1.0

あるところに男の子とその妹が住んでいました


二人には両親がいませんでしたが二人で仲良くなんとか暮らしていました


食べ物の無い日には隣のおばさんに、


薪の無い日には、向かいのおじさんに頼みに行きました



ある寒い冬の日のことです


どんどん、どんどん


家の戸をたたく音がします


薪を燃やして暖炉の近くであたたまっていた兄妹は突然の来客に驚きました


男の子が戸をあけるとおばあさんが立っていました


なんとなく異様なかんじのするおばあさんです

黒くて汚いローブに黒いとんがり帽をかぶっています


「なにかごようですか?」

男の子がきくと、


「そのこをおくれ」

とおばあさんは暖炉のそばの妹を指さしていいました


男の子はびっくりしすぎて声が出ませんでした


「文句はないようだね、もらっていくよ!」

とおばあさんが叫ぶとものすごい風がふいて男の子を吹き飛ばしてしまいました


「おにいちゃん、おにいちゃん!」

妹が叫んでいます

男の子は風が強くて動けません


「あははははは!この子はこの『北の海の魔女』がもらっていくよ!」

魔女はそう叫ぶと出ていきました


ようやく男の子が動けるようになったときもう魔女の姿は影も形もありませんでした


†††2.0


「ほんとうにいくのかい?」

「よしなさい」

「魔女は大人でもどうにもならないんだよ。ましてや子供が・・・・・・」


「ううん。行く。もう決めたから」

村の人たちがみんなで止めても男の子は行くと言って聞きませんでした。


「わかった。ではこのナイフをもっていきなさい。役に立つ」

村長がナイフを一本もってきました


「ありがとう。必ず妹を連れて帰ってくるよ」


村人に見送られながらおとこのこは村をでました


†††3.0


「ねえ、きみは『北の海の魔女』ってしらない?」

「しらないよ」

おとこのこに質問された狐は首を振りました



「ねえ、きみは『北の海の魔女』ってしらない?」

「しらないよ」

おとこのこに質問された小鳥は首を振りました


おとこのこはあと何回かこの質問をつづけましたが誰も魔女のことを知りませんでした


「ねえ、きみは『北の海の魔女』ってしらない?」

道にひょっこり顔を出したもぐらに聞いたときのことです


「しらないけど、王様のいる町なら知っている人がいるかもしれないよ」

「そうなのかい?ありがとう!」


おとこのこは王様のいる町へむかいました


†††4.0


おとこのこが王様のいる町を目指して森の中を歩いていると、崖の下に一匹のオオカミがうずくまっていました


「どうしたんだい?」

おとこのこはオオカミに聞きました


「シカを追いかけていたら崖から落ちてしまったのさ。目をケガしてね。エサを食べてないからもう動けない。いまは死ぬのをまっているのだよ」

とオオカミは言いました


見ればその目には大きな傷があり、もうこのオオカミの目が回復することは無い、ということがすぐにわかりました


「どうにかならないのかい?」

「どうにもならないよ。目が見えないし、走れない。それとも君が私のエサになってくれるのかな?」

そうオオカミは言ってにやりと笑いました


「それはできないね。ぼくにはやることがあるから。これから王様のいる町に行くんだよ」

「王都へ?なら早く行きなさい。私にかまう必要はない」


オオカミはどこか満足したように寝そべりました


「ううん、エサをもってくるよ」


オオカミはおどろいてかおを上げました


「どうして私のためにそこまでするんだい?私を助けるということはほかのだれかをころすということだよ?」

「わかっているよ。ぼくはあなたを助けたくなった。それだけだよ」

そういうと男の子は再び森の中へ入っていきました


†††5.0


森の中をあるいてすぐに男の子はシカのむれを見つけました


「こんにちは」

男の子はむれに声をかけました


「おや、こんにちは。なにかごようかな?」

むれの長らしき一頭が男の子にたずねます


「じつは崖のところに動けなくなったオオカミがいるのです。彼のためにだれか食べられてはくれませんか?」


シカのむれはざわつきました。ただ長だけが男の子の目をじいっと見ていました


「なんだと!お前、わたしたちをばかにしているのか!そんなことするわけないだろ!」

「お前が食べられればいいだろう!」


むれの中の何匹かが声をあららげます


「わしが行こう」

そういったのは長でした


「そんな、長よ。やめてください」

「そうです。わざわざ食べられるひつようなどありません。オオカミなど死なせてやればよいのです」


「しずまりなさい。わしはこの子の目が気に入った。この子をこうさせる気にさせたオオカミにもあいたくなった。どうせもう永くないのだ、かまうまい」

そう長がいうとむれのあちこちからうめきごえが上がりました


長はかなしむ仲間にはかまわずにある一頭にはなしかけました

「今このときより長はお前だ。覚悟はできておるな?」

「はい」


新たな長となった一頭はなみだをながしながら、仲間たちにいいます

「みんな、長のわがままを聞いてやってほしい。みんなでおくりだそうじゃないか」


そういって新たな長はまえへ進み出て男の子にこうべをたれました

「たのみます」


6.0†††


男の子が老いた一頭のシカを連れてあらわれたのが足音でわかったオオカミはおどろきました


「本当に連れてきたのか」


シカはオオカミの前に座りました

「あなたが私を食べるオオカミですか?」

「そうですが・・・・・・本当にいいのですか?」

「かまいません」


オオカミは男の子の方へかおをむけて言います

「ありがとう。これで私は生きられる。お前のおかげだ」


そしてシカへ向きなおり言います

「本当にありがとう。あなたのことは生涯わすれません」


シカはほほえんで言います

「よいのですよ」







男の子はオオカミがシカを食べるのを目をそらさずに見ていました

シカを食べ終えたオオカミがたずねます

「どうしてずっと見ていたんだい?」


「わかったのかい?・・・・・・ぼくのせいで死ぬ者の最後から目をそらせちゃいけない、と思ったからだよ」

「そうか・・・・・・」



「王都へ行くんだったか?案内しようか?」

「町の場所をしってるのかい?ならお願いするよ」


オオカミと男の子は立ち上がり、シカの死骸を見ました

「・・・・・・行こうか」


†††7.0


おんなのこは目を覚ましました


自分の家でなかったのでさらわれたのは夢ではなかったようです


狭い部屋です。あまりきれいではなく、クモの巣もいくつかあります。

なんとなくさむざむしいその部屋におどかされているようでおんなのこは不安になりました


ちょうどその時部屋のドアが開きました

「あら、おきたのね」


そうおんなのこに声をかけたのは赤毛の少女でした。まるで人形のようにきれいな娘でした

「あたしはアリス。よろしくね。おきたのならおいで。あいさつにいきましょ」

まくしたてるようにアリスと名乗った少女はしゃべります

「だれに?」

勢いにすこしおどろいておんなのこたずねると

「きまってるでしょ。魔女よ」

そうアリスはこたえました


†††8.0


「おんなのこが起きたので連れてきました」

アリスはながいろうかにならぶドアの一つに話しかけました


「はいりなさい」

しゃがれた声がしました。あのときの魔女の声です。

アリスがドアをあけてはいります。おんなのこはすう、と、いきをすってからはいりました


魔女はだんろのそばでいすに座って本を読んでいました。丸いめがねをかけています

魔女はふりかえって無言でおんなのこをじいっとみつめます。おんなのこは心のなかを見すかされたような気分になりました


「仕事をやらせておやり」

魔女はそう言うとまたむこうをむいてしまいました


「はい」

アリスはへんじをして

(出るわよ)

とおんなのこに合図しました


二人は部屋を出ました


†††9.0


「ねえ、仕事って何をするの?」

おんなのこはへやを出るとアリスにききました


「そうじとか、おしょくじをつくったりするのよ」

アリスはろうかを歩きながらこたえます


「たいへんなの?」

「たいへんなんてもんじゃないわよ!」

アリスはふりかえっておんなのこにいいます

「おしょくじの用意だってすごくたいへんなんだけど、そうじのほうがもっとたいへんなのよ。このおやしきはひろいから毎日たくさんそうじしないとどんどんきたなくなるのよ。・・・・・・きょうはもうおそいからあなたにはあしたからはたらいてもらうわ」


「はたらかなかったらどうなるの?」

「それはあしたいってあげる」

そう言ってアリスはあくびをしました


「もうねましょう。あしたははやいわよ。なれてないでしょうからおきしにいってあげるわ」

「ありがとう」

「いいのよ。・・・・・・あしたからがんばりましょうね」

「うん」


†††


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